皆さん、お知らせがあります。
ウィレムのリサイタルのプログラムが、一部変更となりました。
カウエル『バンシー』とクラム『真夜中のセレナーデ』がなくなり、シュトックハウゼン『ピアノ曲 第7番』、A・ブークーレシュリエフ 『群島 第4番』、ジョドロウスキ 『セリ・ブランシュ』が追加となりました。
これはこれで、カウエル=アメリカ、シュトックハウゼン=ドイツ、ブークーレシュリエフ=フランス(ブルガリア出身)、ジョドロウスキ=フランスと、バランスのとれたプログムになっております。しかも、《日記02》でも紹介した通り、ジョドロウスキの『セリ・ノワール』はオルレアンの課題曲で、追加になった『セリ・ブランシュ』は、その後ジョドロウスキがウィレムのために書いた、ノワール/ブランシュとペアになっている作品なので、それを併せて聴けるのもまたよし。
ではあるのですが、この変更の理由は、実は。
ソウルの最初の夜にウィレムに会った時、彼は「15日は、日本でもやるカウエルの『バンシー』だよん」とニコヤカに語っておりました。しかし、15日のプログラムの『バンシー』の横には、<ストリング・ピアノ>の文字。トイピアノに続く『バンシー』は、おねーさんが一人出てきて椅子に座ってペダルを踏み(弦を開放するために)、ウィレムはピアノの箱に頭をつっこみピアノの弦を手で奏でる、内部奏法の曲でありました。いやー、いい演奏だったなあ、うん…。しかし一抹の不安は的中してしまった。
そんなことは実はとっくの昔に知っていたのだった。《日記01》で書いた、カウエルのCDにも『バンシー』は収録されていて、幽霊みたいなそのギャーン・ズザザーンという曲を、確かにワタシは聴いていたし、そのCDジャケは内部奏法の写真、でもなぜかウィレムのリサイタルと結びついていなかったのです、しょぼん。
《日記03》のグリゼーの一件のあと、ホール側からも「内部奏法とかもないよね?」と念押しもされて、こちらも神経質になってリヨンに確認をした時の、マネージメント・サイドの「特殊調律も内部奏法もナイ、全部ノーマルだ」の言葉を鵜呑みにして、調べなかったコチラが迂闊でございました。もちろん、作曲家や作品についてリサーチしながら、プログラムを決めていったんですけど、うー…。ソウルでは全然オッケーだったのでしょうか。ソウル・フィルの人に聴いてみよう…。
15日のコンサート後、晴れやかな笑顔のウィレムに、その話を切り出す心苦しさといったら、なかったね。「実は一つ問題が…」といった途端、眉根をひそめて考え込みはじめたウィレムくん、マジでゴメン!!許してください。
ソウルのプログラムには、『バンシー』はアジア初演とも記載されていた。ワタシタチは、初演に意味があるとすればワールドプレミアと考えているので、気にしていたわけではないけれど、ソウルでアジア初演のあとの、日本初演の『バンシー』は、幽霊のように、まぼろしと消えたのでした(バンシーbansheeとは、ケルトに伝わる女の妖精、その泣き声が人の死を予兆する、らしい)。
そして『バンシー』を聴きたかった皆さんにも、ゴメンナサイ。
でも、最初に書いた通り、良いプログラムです。ウィレムも一所懸命考えてくれたプログラムです。怒らないで聴きにきてくださいませ。
…いやーしかし、ソウルで『バンシー』聴けたオイラは果報者だぜー!
(ウソです、反省してます)。
だけど。ペダルを踏む役、すっっっごくやりたかったなあ。
一生の不覚。
永遠の後悔。