2008-07-17

コッポラのバベルの塔 このエントリーを含むはてなブックマーク 

人間は死ねば灰になるだけ。何も残らない。
しかし、この映画『コッポラ胡蝶の夢』は、人間はいつか死に、その存在も思い出も何もなくなるが、死ぬ間際、 “人生は果てしなく、戦いと苦痛と喜びの連続だ”という現実を突きつける。“人生は素晴らしい”というのでもなく“。

70歳にして、人生への悔いと孤独を抱え、自ら命を絶とうとする老学者ドミニク・マティは、超自然現象的に、雷に打たれその後、若返りと特別な才能を授かる。
言語学者として、人類の言語の探求に渇望していたドミニクは自分の人生最大の目的が若返りと特別な才能のおかげで満たされると思い、1930年代以降の破壊と発明の時代に、研究活動に没頭していく。ただ一つ、昔の恋人ラウラとの成就を除いて。

ドミニクの若返りの人生は、夢の中の出来事のようだが、確かに現実世界に生きていた。さらに恋人ラウラの生き写しに出会えたドミニクは、さらなる自分自身の人生を邁進していく。

しかし、言語の起源を突き詰め、ドミニクの脳に人類の言語の英知を習得しようとも
それが幸せの訪れだとは限らない。人類史上最大の塔の為、人々は協力して建設に取り掛かったバベルの塔は、言葉の問題で、はかない夢で終わった。

人生をやり直したら、遣り残した事が思う存分できる。かもしれない。ただ、永遠の命などはないのだ。たとえ、人類の言語の全てを悟ったとしても、残るのは、ルーマニアの街角に佇む、恋人と行きなれたカフェ(名前を忘れてしまいました)の思い出と、死ぬ寸前に、苦楽を共にした仲間たちと屯していたカフェで乾杯をあげようとする、ささやかな楽しみ。そんなものだけなのかもしれない。

コメント(0)


ラスガナルカナル

編集部スタッフ

ラスガナルカナル

“松嶋っす。”


関連骰子の眼

関連日記