2016-11-10

柏原寛司監督 「キリマンジャロは遠く」(新宿K‘sシネマ)を観て。 このエントリーを含むはてなブックマーク 

片桐竜次俳優生活45周年記念初主演。初主演かあ。そうかあ。「仁義なき戦い」シリーズにはまった頃、片桐さんがどこに出てくるかワクワクしながら観てたっけ。「狂った野獣」のラストシーン。ヘリコプターの足に捕まって逃走する強盗バスジャック犯。片桐さんノースタントでやってたもんなあ。まあ、主役の渡瀬恒彦さんが、走るバイクからバスに飛び乗るのを、これもノースタンとでやってたからなあ。あの川谷拓三さんが銃撃されて死ぬシーンは、まるで「灰とダイヤモンド」のように切なく愛おしかった…で、初主演。映るだけで良い俳優、片桐竜次。数多の現場という年輪を刻んだ顔。鍛えられ酷使され枯れてきた肉体。ストーリーはオーソドックスな展開だが、厳選された台詞がいい。BGMで流れる歌詞から、チャンドラーの「ロンググッドバイ」を想い出させる。じゃあフィリップ・マーロウなのか。あれは確かメキシコに行く話だ。キリマンジャロねえ。長谷直美さんだけが「キリマンジェロ」と発音するのが良い。行ったことあるだけに。ショートホープを吸う。吸う。吸う。1本取り出して、開けたまま箱をカウンターに投げるのが良い。哀愁を背負った背中。撃たれ刺されて、のたうちまわるキレの良さ。「相棒」や「おみやさん」では出せない役者の真骨頂。エンディング。後輩刑事に撃たれ、死に際にポケットから煙草を取り出してくわえるシーンは、同郷の盟友松田優作が演じた「太陽にほえろ」殉職シーンへのオマージュだろうか。優作は、くわえた煙草をポロリと落として死んだけど、片桐さんはくわえたまま死んだ。これは次回作への意志表示と観たぞ。ハッスル!柏原監督!
帰りにキリマンジャロを飲みたくなったけど、寒空の中、新宿ションベン横丁で熱いコップ酒をすする。この夜はショートピースの本数が増えた。男は黙って片桐竜次。

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大倉順憲

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