2016-11-18

空白を小脇に このエントリーを含むはてなブックマーク 

vol.13になる朗読者 in KAWAGUCHI公演の作品は、
吉田篤弘さんの「針がとぶ」(中公文庫『針がとぶ』所収)です。

吉田篤弘「針がとぶ」新潮社刊の単行本
“ものすごく有名”ではないかもしれませんが、ファンの多い作家さんであると思います。
かく言う私もその一人。基本的に大好きな作家の作品しかやってきていない「朗読者」ですが、今回はその思いも一入。上演許可をいただけたことに、こっそり薄暗がりで小躍りしたくらいです。
              
私が吉田篤弘さんという作家と出会ったのは、まだ彼が「吉田篤弘」の名前で著書を出していない頃のことです。クラフト・エヴィング商會という不思議な名称を新聞で見かけ、そのまま糸でツイツイっと引っ張られるようにして1997年6月、紀伊国屋画廊で開催された展覧会「もうひとつの・どこかにいってしまった・ものたち」へ足を運びました。
現実と非現実の隙間に平然と立っているような作品は、なんともいえない心地よさでした。
その場で、クラフト・エヴィング商會名義の書籍3冊を迷うことなく購入し(全部で1万円くらいだったかな。美大を目指す18歳の予備校生だった私にはものすごい大金でした)、後ろ髪を引かれつつも足早に自分の部屋の電灯を求めて帰ったのを覚えています。

それから20年、やっと私も、彼や彼らのいる現実と非現実の隙間に立てたような気持ちです。
「朗読者」選本にしては本当に珍しい、毒がなくほろりとする作品。
それぞれの空白を小脇に抱えて観に来てください。
              
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【グッドバイ――それは始まりの合図】
朗読者 in KAWAGUCHI vol.13
吉田篤弘「針がとぶ」(中公文庫『針がとぶ』所収)
                      
※旧田中家住宅「国登録有形文化財」登録一〇 周年記念事業
 
ジョサイア・コンドルゆかりの館“旧田中家住宅”の一室に、クラフト・エヴィング商會の物語作家が紡ぐ喪失と追懐の一篇を『朗読者』が灯します。
                   
▼公演詳細はこちら▼
https://roudokusha.blogspot.jp/2016/11/in-kawaguchi-vol13.html

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ロウドクシャ

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“文学の四次元化を目指しています。”


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