2017-10-19

イラク北部クルド自治区で開催されたスレイマニヤ国際映画祭にドキュメンタリー部門の審査員として参加して来ました。その4 このエントリーを含むはてなブックマーク 

写真は、10月3日(火)にシンポジウムに登壇した時の様子。綿井健陽さん撮影。

現地に到着してからスレイマニヤ大学の映画学科長のDilshad Mustafaさんに10月3日(火)にナショナル・シネマについてのシンポジウムを開催するので、それに登壇してほしいと急遽頼まれました。おそらく登壇する予定だったゲストが空路封鎖で来れなくなり、その代役を探していたのだと思います。私はナショナル・シネマや日本映画の専門家ではないので、どうしようかと迷ったのですが、何を話しても良いということと、断りきれなかったこともあり、急遽登壇することになりました。

シンポジウムでは、恥ずかしながら、クルドでも知られている黒澤明と小津安二郎の差異、3.11震災後の日本映画、その国の政治的背景を描く作家と描かない作家の例として、フィリピンのラヴ・ディアスとアルゼンチンのマティアス・ピニェイロの差異などについて話し、そしてなぜ小津安二郎が日本の国民的映画監督なのか、などについて自分の考えを簡潔に話しました。シンポジウムの様子は地元のテレビで生中継もされました。

シンポジウムには、イランの女優Fatemeh Motamed Arya(ファテメ・モタメダリア)さんも登壇されました。顔はこちらを向いていませんが、写真の右から二人目の方です。ファテメ・モタメダリアさんは、今年の8月に広島と東京で開催された「広島イラン 愛と平和の映画祭」に参加するために来日されたとのことです。
http://www.a-sia.com/hilpff/movie.html

このシンポジウムは、メイン会場のシネコン「CITY CINEMA」ではなく、いわゆるアート系の映画を上映するスレイマニヤで唯一のアートハウス映画館「CINEMA SALIM」で行われました。また、映画祭のゲストはほとんど全員マイクロバスに乗ってこのシンポジウムに動員?されていましたので聴衆は100人以上いたと思います。

シンポジウムが開催された10月3日(火)の17時頃に、クルド民族の政治指導者で前イラク大統領のジャラル・タラバニ氏の訃報が入り、その日の映画祭の上映は全て中止となり、喪に服すことになりました。とりわけスレイマニヤはタラバニ氏の政治的地盤であったため、地元では日本で言えば天皇陛下崩御くらいの出来事のようでした。
http://www.sankei.com/world/news/171004/wor1710040003-n1.html
http://www.newsweekjapan.jp/sakai/2017/10/post-9.php

10月3日(火)の夜は私が宿泊していたホテルで当初から予定されていた着席式のパーティも自粛気味に慎ましく行われました。

クルドの大手メディア「ルダウ」で紹介されました。
http://www.rudaw.net/english/culture/03102017

【吉田孝行プロフィール】
1972年北海道生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。映画美学校で映画制作を学ぶ。東京フィルメックス2014でアジアの映画人材育成事業「タレンツ・トーキョー」のコーディネーターを務める。ドキュメンタリー専門誌「neoneo」の編集に携わる。共著に『クリス・マルケル―遊動と闘争のシネアスト』『アメリカン・アヴァンガルド・ムーヴィ』など。近作『ぽんぽこマウンテン』(2016)が、デトモルト国際短編映画祭、ジョグジャ・ネットパック・アジア映画祭、サラミンダナオ・アジア映画祭など、18か国の映画祭や展覧会に選出されている。新作『タッチストーン』(2017)が2017年12月に海外の映画祭でワールドプレミアを予定。

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【関連記事1】http://www.cinematoday.jp/page/A0005386
【関連記事2】https://jp.sputniknews.com/opinion/201611042976112/

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吉田孝行

ゲストブロガー

吉田孝行

“映像作家。これまで世界30か国以上の映画祭や展覧会で作品を発表している。近作に『タッチストーン』『エイジ・オブ・ブライト』『ある日のアルテ』『ある日のモエレ』など。共著に『アメリカン・アヴァンガルド・ムーヴィ』など。”


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