2021-09-08

トマス・ヴィンターベア監督「アナザーラウンド」(新宿武蔵野館)を観て。 このエントリーを含むはてなブックマーク 

 立原正秋が毎朝ビールの小瓶を1本呑むと氏のエッセイで読み、池波正太郎が散歩の合間に神田の蕎麦屋でビール(大瓶)を呑んでからカレー南蛮蕎麦を食すると聴き、山口瞳が書いた「酒呑みの自己弁護」が如く俺も時々朝酒昼酒でキメてしまうのだが、何も諸氏の素晴らしい作風の恩恵も授からず仕舞いで、これこそ自己弁護、いや自己逃避だ。
 そんな俺の尻を押して手足を天国にまで引っ張っていってくれた今年イチバンの洋画。
小ぶりだけど佳作だ。そもそもデンマークの映画って観たことあったか。「ダンサー・イン・ザ・ダーク」…あれはアメリカが主な舞台だし。主演のマッツ・ミケルセン。こんな良い俳優がいたんだ。デンマークには。いやいやまだまだ井の中の蛙だ、こっぱずかしい。こんな雑文を世間に晒しているのに、知らなかった。
 元ダンサーだったという彼、見事なアテガキの脚本。
『ああ、ここなのか。いやもうそろそろ。おっ、ここで来ましたか』という冒頭の伏線から来るカタルシスは痛快。しかもちょうど良い按配の踊りっぷり。犬とボートのシーンも、センスが良い。見せないとこが素晴らしい。そして、メガネ坊主よ。ああ、お前抱きしめてやるぞ。チクショウ。最高だぞ(もいちど)メガネ坊主よ!
外で呑めずにウップンが堪っている昨今と最も相性が合う映画じゃないか。
 今日は昼からワインを呑むぞ。やっぱダメじゃないか、俺。

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大倉順憲

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