2009-02-13

これがミン・ギュドン流アンティークの世界 このエントリーを含むはてなブックマーク 

おお~こうなったんだ~!!
モノクロで繊細な感情がちりばめられたよしながふみの世界は、レトロでポップな色彩と音楽が零れ落ちる世界へと生まれ変わっていた。
確かに、イケメン達と見ても食べても甘くて楽しいケーキの世界はファンタジー。魔性のゲイなんて滅多とお目にかかれない。
なるほど、それをヨーロッパの童話みたいな世界になぞらえたわけだ。残酷な現実がそっと裏に秘められているのも童話そっくり。

とにかく、まずはびっくりした。
でも、少しもよしながふみの世界が壊された気がしない。
それは、きっとよしながふみと、ミン・ギュドン監督の伝えたいことのベクトルが同じ方向をむいていたからだと思う。

ストーリーが非常に早いテンポで流れていく。原作にあったたくさんのエピソードもぎゅっと凝縮されて詰め込まれていく。
うーーーん、そこはもうちょっと丁寧に描いて。。と言いたくなる部分はあったけれど、見終わって、流されただけといった気持ちにならないのは、一番、核になる部分をしっかり描いてくれていたからだと思う。

正直、最初のうちは世界に入り込めなかった。日本語より抑揚のある韓国語をしゃべり、コミックとはいえちょっとオーバーな感情表現は、よしながふみの世界の住人と少し違和感があったからだ。
けれど、ジニョクが苦悩を秘めた憂い顔を見せた瞬間、私の頭の中の橘とシンクロして、それからは一気に映画の世界にのめりこんでしまった。
私は、主演のチュ・ジフンのファンで、彼の役者としての成長振りを見てやろうという魂胆もあったが、橘=ジニョクのイメージがぴったり重なったときから、そんなことはどうでもよくなった。ジニョクが見せてくれる物語にひたすら没頭した。

ラストシーン。
私がこの映画で一番見たかったシーン。違う色で描かれた世界だったけど、その瞬間に感じた感動はよしながふみの漫画を読んだときの感動と同じだった。
生きていくのが辛くなるぐらいの心の痛み。たとえそれを癒すことができなくても日常は流れていく。
その日常へと歩みだす橘=ジニョクの一歩をしっかりと見せてくれた。
言葉も文化も感性も違う。なのに同じメッセージを届けてくれた。そのことに何より感動した。

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zazzie

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“美味しいものを食べること、ワイン、映画、本が大好きです。”


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