2009-02-15

確かで、曖昧なメイプルソープとワグスタッフ このエントリーを含むはてなブックマーク 

 ファインアートとして写真を切り拓いたロバート・メイプルソープとサム・ワグスタッフ。パティ・スミスをはじめ、二人をよく知る関係者たちの語りと在りし日の映像、写真で展開していくドキュメンタリー作品。それぞれの生い立ちからメイプルソープの無名時代と同性愛への目覚め、キュレイター/コレクターとしてのワグスタッフの執着と才能、親子ほど歳の離れた二人の出会い、ニューヨークのアートシーン。1970年代のゲイカルチャー、死んでいく仲間たち、メイプルソープ自身のHIV感染。
 
 現代写真に大きな功績を残し影響を与えた二人の関係を「パートナー」と呼ぶには明らかに綺麗すぎて、「パトロン」と言い切るのもなんともしっくりこない。彼の作品は生花やポートレイト、ヌード、そして、わいせつかアートかの論議が常につきまとうSMプレイやセックス。見ようによってはエグいまでの性を被写体としている。それだけに多くの批判と同時に高い評価も受け、当時の二人について話す関係者の感じ方も作品評論のように実にそれぞれだ。邦題を「メイプルソープとコレクター」としたのは頷ける。ある意味、生き証人の彼らの語りによってモノクロのメイプルソープとワグスタッフが色付き、リアリティが増してくる。

 メイプルソープが生きていれば60代半ば。人生の後半戦に突入した彼はどんな作品を残しただろかと思う反面、スキャンダラスに駆け抜けたからこそのメイプルソープだったのかもしれないと思えてならない。写真に限らずとも、創作活動をこころざしているならば見ておきたい一本だ。

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