今回のミャンマーの旅は、「ワクチンの保管庫」から始まります。
まずは、この旅のきっかけとなった「募金がワクチンに変わるまで」という資料を見ていただきたい。(図参照)
資料によると・・・・、
チャリティイベント(ボクの場合はH.U.G.「カワイイ」)などで、募金されたお金は、一度ユニセフの本部に集められ、そこで一括してワクチンを購入する。
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購入したワクチンは、デンマーク・コペンハーゲンの物資調達センターに集められ、ラオス、ミャンマー、アフガニスタン、カンボジア・・・と、支援国各地に輸送される。
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届いたワクチンは、現地で実際に子供たちに予防接種されるまでの間、一旦現地の保管庫(センター)にて冷凍貯蔵される・・・・。
前回、予防接種までのあいだ一旦現地にて冷凍貯蔵されているという保管庫までは、なんとかたどり着くことができた。(カンボジア編参照)
しかしながら、ここから先の予防接種会場まではというと、さすがにいきあたりばったりでは難しく、今回のNPOの視察旅行に同行することとあいなったワケだ。
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ということで、今回はあっけなく保管庫まで来てしまった。
なんだよ。ちゃんと後ろ盾があるなら、あっさり見せてくれるじゃーん!なんて思いつつ、再びこのワクチン貯蔵庫の現場に立っているのは、とても感慨深いものがあった。
ミャンマーでもカンボジアと同じく冷凍された状態でキチンと保管されていた。
ここで、さっきからワクチンワクチンと騒いでいるけど、ナゼここまで“ワクチン”を丁重に扱わなければならないかということを簡単に説明しよう。(ユニセフのレクチャーを元に解説)
途上国では、当然、国にお金がないので、十分な設備を備えた医療施設を作ることができない。
ということは、病気になっても治療できない。加えて医者も不足している。
じゃ、どうすればいいかというと、一つには、医者にかかるような病気にならないように“予防”する、ということが大事なのである。
そこで、予防手段である“ワクチン”が登場するのだ。
(余談だが、医学知識なんて全くないボクが聞いて驚いたのが、この“ワクチン”って、病原菌、すなわち、ポリオ(小児マヒ)ならポリオの菌がそのまんまワクチンに入っているということだ。
その菌をあえて接種することによって、病気に対して耐性を作るということなのであろう・・・。
しかし、予防のために接種したはずなのに病気にかかってしまうパターンもわずかながらにあるという・・。さらに面白いのが、予防接種した人が出した便の中にも菌が含まれていて、その周りの(接種していない)家族や近隣の人たちにも微量ながら効果があるのだという・・・。
なるほど。ワクチンって薬じゃなくって「菌=生物」なんだとリアルに思った。)
“ワクチン”といのは、「菌=生物」なのだから、菌が生きている状態に新鮮に保つということが重要になってくる。
すなわちワクチンも魚なんかと一緒で熱に弱い。
ミャンマーのような暑い国では、あっという間にワクチンが死滅してしまうのだ。
せっかく集めた募金で買ったワクチンも、子供たちに届くまでにダメになってしまっては元も子もない。
その新鮮な状態にワクチンを維持することというのが、途上国では一番やっかいな問題なのである。
日本みたいにクール宅急便とか冷凍車があるわけでもなく、ましてや、田舎に行くと冷蔵庫すらない。おっと、その前に肝心の電気すら来てないのが現状なのだ。
じゃ、どうやって運ぶかというと、クーラーボックスに“氷”をつめて、ぬるくならないように細心の注意を払いながら、車なりバイクなり船で、接種会場まで運んでいく・・・。
そんな極めて原始的な方法を取るしかない。*1
そのため、この出発点となるワクチン保管庫というのはとても重要な拠点となるのだ。
カンボジアでもミャンマーでも、ワクチン保管庫は、最貧国(失礼!)にも関わらず、立派な自家発電機を備えた重厚な作りの冷凍庫であった。
そして、どこの保管庫でも、所長さんがまず話すことと言えば、いかに災害や停電の時に電気を絶やさずにこのワクチンを守ったかの自慢話からはじまる(笑。
そのくらい、ワクチンの新鮮な状態を保つということは最重要課題なのである。
さて、いよいよ明日はこのワクチンを実際に接種する会場の村まで、はるばる出かけていくことになる。
しかも、まず観光では行くことのできないヤンゴン管区の外へ出かけていくのだ。
ボクたちがイベントで購入した(一部であろう)ワクチンのアンプルを見せてもらいながら、なんだか少しワクワクしてくる自分がいた。
このワクチンは一体どんな姿で子供達の元まで届くのだろう?
そんなこと考えながら、ずっとワクチンを見つめていた・・・。
(続く)
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*1
この一定の温度で運ぶためのシステムを「コールドチェーン」と呼ぶ。
先進国ではあたりまえに導入されているシステムだ。
そのあたりまえが難しい現状が、その国の抱えている現状でもある。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%89%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%B3
PHOTO : (c) Takashi Morioka, (c) Hiroshi Ito