2008-03-08

mixi 利用規約問題について このエントリーを含むはてなブックマーク 

3月3日に発表された、SNS最大手「mixi」の新利用規約をめぐって、ネット上が揺れた。
問題となったのは、新利用規約の18条。

@@@@@
第18条 日記等の情報の使用許諾等
1 本サービスを利用してユーザーが日記等の情報を投稿する場合には、ユーザーは弊社に対して、当該日記等の情報を日本の国内外において無償かつ非独占的に使用する権利(複製、上映、公衆送信、展示、頒布、翻訳、改変等を行うこと)を許諾するものとします。
2 ユーザーは、弊社に対して著作者人格権を行使しないものとします。
@@@@@

ユーザーがmixiに投稿したコンテンツ(日記、画像、動画など)の全ての無償かつ非独占的なライセンスをmixiが取得するとともに、ユーザーには、著作者人格権(著作権法18条~。公表権、氏名表示権、同一性保持権、名誉声望保持権)を一切行使させない、という一方的な内容に、ユーザーが猛反発した。

この問題が、今月に入ってから取り沙汰されているのを、私は「なぜ、ふたたび?」という思いで見ていた。

同様の「利用規約をめぐるネット上の騒動」は、過去に何度も起きている。ライブドアブログや、その他、CGM型モデルのサイトで数年前に同様の騒動が起き、話題になったことは、決して古い話ではない。
そのときと全く同じ騒動が、今頃になって、mixiというSNS最大手で起きた、という事実そのものが、どうしても不思議に思えてならない。

以下、mixiの弁明。
@@@@@
・・・当社の以下対応について同意いただくもので、当社が無断で使用することではありません。
1 投稿された日記等の情報が、当社のサーバーに格納する際、データ形式や容量が改変されること。
2 アクセス数が多い日記等の情報については、データを複製して複数のサーバーに格納すること。
3 日記等の情報が他のユーザーによって閲覧される場合、当社のサーバーから国内外に存在するmixiユーザー(閲覧者)に向けて送信されること。
@@@@@

上記弁明について雑感。

<弁明1について。>
コンテンツの著作者が、著作者人格権を行使できる場合は、同一性保持権(同意なく著作物を改変されない権利)については、「(ユーザーの)意に反し」(著作権法20条1項)た改変があった場合に限られる。そして、サーバーに格納する際に、技術的にコンテンツを一部「改変」をする必要があったとしても、それは、「ユーザーの意に反した改変」にはあたらない、と解される場合が大半であるから、あえて、「著作者人格権を行使しない」という特約を設ける必要はない。

<弁明2について。>
複数のサーバーに格納する必要がある、というのは、mixiぐらいの大手SNSであれば、大半のユーザーには想像できるのであって、ユーザーが、「別々のサーバーに保存するなら、その都度、許諾をとれ」とクレームをしてくる可能性はかなり低いと思われる。

<弁明3について。>
これは、「いまさら言わなくても、分かっているよ」という話では・・・

以上、mixiの弁明を見る限り、上記3点が理由で、今回の利用規約改定に踏み切ったとは到底思えないし、少なくとも、弁護士に相談した際に、上記の点だけを理由に、利用規約を改定すべき、というアドバイスをしないはずだ。
もし、そういうアドバイスが弁護士から出たとしたら、「著作権」にも、「ITビジネス」にも、相当詳しくない弁護士がアドバイスした、としか思えない。

あくまでも推測だが、おそらく、mixiにおいて、新しいビジネスモデル(おそらく、いわゆるCGM型モデルの、ユーザーのコンテンツを自動的に加工することで成立させるモデルと思われる。)の実施を企図しているのではないだろうか。
その「新規ビジネスの実施」にともなって、リーガルリスクを弁護士に相談したところ、「著作権法には、著作者人格権というものがあって・・・」という説明をされ、リスクを最小化するべく利用規約の改定に踏み切った、という経緯があるのではないかと推測する。

しかし、それにしても、今回の新利用規約は、あまりにもお粗末だ。

まず、利用規約をめぐって、過去に何度も全く同じ問題(主には、著作者人格権にまつわる問題)で騒動が起きていることを知らなかったのでは?と思われる点、

さらに、今回の18条2項に規定されているような、いわゆる包括的かつ一方的な「著作者人格権不行使特約」の法的拘束力の有無については諸説あり、そもそも、いまだに「有効とはいえない」という説が有力であることを知らなかったと思われる点、

もっと言えば、ネット上の「利用規約」のように、運営者がユーザーに一方的につきつける「規約」や「約款」の有効性についても有効説、無効説の双方ある中で、ユーザーの反発を受けるような内容を、あえて記載することは、運営者側にとってメリットよりもデメリットの方が大きい、ということを「知らなかった」又は「あえて無視した」と思われる点、

である。

私がたびたび相談を受けるような、コンテンツの利用許諾をめぐる契約書においても、「著作者人格権の扱いをどう規定するか」という問題が必ず発生するが、私は、「著作者人格権を行使しない」という包括的かつ一方的な特約が無効とみなされるリスクがある以上(実際、そのように受け取られる裁判例も存在する。)、「著作者人格権は行使しない」とだけ規定するのではなく、著作者人格権に含まれる各権利(公表権、氏名表示権、同一性保持権、名誉声望保持権)をケアする内容の条項を入れるべき、というアドバイスをしている。

今回の騒動でも、もし、本当に利用規約を改定した理由が、上記3点にあるのであれば、そのまま、それを規約に記載すればよかっただけの話だろう。

しかし、あえて、そうしなかったのは、やはり、どう考えても、上記3点が本当の理由ではなかっとしか思えない。

そして、本当の理由が他にあるのであれば、その機能をユーザーに説明すべきだし、その説明を行ったうえで、ユーザーがコンテンツを投稿する場合には、それはユーザーの自己責任の範疇に入る、といって良いだろう。

何はともあれ、mixiが何を意図して今回の新利用規約を出してきたのかは、今後のmixiの新しい展開を見ていくうちに読み解けてくるのではないか、と思うので、mixiが発表する新利用規約の「修正案」も含め、今後の動向にも注目したいところである。

※ちなみに、「著作者人格権」は、たびたび"Moral Rights"と英訳されるが、正確ではない。米国著作権法の"Moral Rights"は譲渡可能な権利だが、日本の著作権法における著作者人格権は「譲渡不能な人格的な権利」と解されている。
しかも、著作者が亡くなった後も、遺族が死者に代わって著作者人格権と同様の効果を生む主張ができる(著作権法116条)との定めもあり、著作物を利用する側にとっては、かなり「厄介な権利」ではあることは間違いない。
しかし、語弊があるかもしれないが、「きちんとした著作者のケア」を行っていれば、実際上、「著作者人格権」のみで大きな問題が生じることは少ない。今回のような「炎上」が起きたのは、その「ユーザー(著作者)を丁寧にケアする姿勢」が全く見られなかった、という点が大きな理由の一つだろう。

@弁護士、税理士など「士(さむらい)業」がエンタテインメントビジネスを斬る!
業界専門誌"Samurai Biz"好評発行中!
http://www.hartzlink.com/bizrnet/samurai.html

キーワード:


コメント(0)


四宮隆史(弁護士)

ゲストブロガー

四宮隆史(弁護士)

“2500ユーザー突破、おめでとうございます!”