2009-07-23

「普通の犬に戻りたい!」との健気なペットの願いは飼い主への愛、なのです このエントリーを含むはてなブックマーク 

自分は悪者を倒す飼い主を強力に補佐する、超能力をもつスーパー犬、ところがそれはテレビ番組の中でのこと、ということをまったく気づいていない、という主人公の犬ボルトのシチュエーションが、すべてがテレビの中の人生という男を主人公にしたジム・キャリー主演の個人的に大好きな映画「トゥルーマン・ショー」とほとんど同じというところから、子ども向けの内容ながらもけっこう気分ものって、面白く見ることができた作品だ。

この作品の見どころは、自分が超能力犬と錯覚しながらハリウッドを飛び出したボルトが、ニューヨークまで行ってしまってから、生意気なメス猫とテレビ好きのメタボなハムスターと出会い、その二匹との再び自分の飼い主がいるハリウッドまで帰るまでの道行きだ。ボルトは、その思わぬ道連れの相手から、投げられた棒を拾いにいくことや人間への甘え方など、本来のペット犬のあり方を学ぶ。動物を主した映画ならなんでもないシーンの連続が見どころなのが、この作品の面白い点だ。

 なぜそこが面白いシーンなのか、その理由は、この作品が動物を主人公にしながら、飼う側の人間の感覚から動物たちをとらえているからだ。ペットたちは飼い主たちに頼って生きている。しかし、飼う側はときに気まぐれにペットを扱い、あげく捨てることだってある。そんな気まぐれな人間である私たちから見る、この作品の中の動物たちは、人間に好かれようと実に健気だ。そして、その健気さが意外にきめ細かく、しっかりと描かれているところが、この作品の命なのだ。それは、その健気さから、ペットを飼う側が飼われる動物たち以上にペットを愛するべき、と教えてくれているからである。

 ボルトたちは、ニューヨークからハリウッドまで長い旅をするが、それはアニメの中の架空の話などではない。私が幼かった頃、団地で住んでいたときに小さな柴犬を飼っていた。しかし団地で犬を飼うことが許されない、と周囲から言われて、やむなく50キロ以上も離れた山の中へ柴犬を捨てに行ったのだが、一週間くらい経ったある日、捨てた柴犬が玄関の前に戻ってきたことがある。それを見たときには、幼心に自分たちのしたことを大いに反省したものだ。
 一度飼ったペットには、正直に付き合い、心から愛することを、子どもたちにこの作品から学んでほしいと切に願うばかりだ。

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山中英寛

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山中英寛

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