2009-09-29

寝袋担いで、スペクタクルな体験in那須! このエントリーを含むはてなブックマーク 

【9月26日(土)担当:宴会劇場】

 スペクタクル・イン・ザ・ファームにおいて、唯一時間帯のかぶる公演があった。グランドホテル愛寿のレトロな宴会場で行なうオオルタイチ+康本雅子の初共演パフォーマンス&やくしまるえつこ(『宴会劇場・第二部』)と、老舗旅館・山水閣のラウンジで夜な夜な語る、山崎ナオコーラ+岡田利槻(チェルフィッシュ)の朗読会(『くらやみ朗読会@酩酊バー』)だ。両者ともにこの場所ならではの演目なので、どちらのチケットを購入するか迷った人も多いだろう。私は、久しく康本雅子を見ていなかったこと初体験のオオルタイチに惹かれ、第一部で鉄割アルバトロスらが暴れた(?)『宴会劇場』に残ることにした。

 第二部ということもあり、浴衣姿もちらほら。お酒も入り、ほろよい気分で顔を赤らめている人も居る。用意していた座布団が足りないのか、子供用?の小さなサイズも配られるほど『宴会劇場』は満員御礼。夜はもう22時近い。

●やくしまるえつこ
 第一部では “TUTU HELVETICA”として登場し、お馴染みの白い衣装を着ていたが、“やくしまるえつこ”では一転して、黒い服装。2人の男性(相対性理論メンバー?)をしたがえての「男の子と女の子の雪の日の話」の朗読会だ。砂利を踏む足音に、時折まぎれる鈴の音。低音でどっしりとした重みのギター音は、徐々に音量を上げ、会場全体を侵食していく。やくしまるはその音色に寄り添うように、ぽつり・ぽつり、と、声を発する。言葉は宙に浮いているかのように軽やかで淡白だが、どうしてかはっきりとした輪郭を持っている。「雪が砂糖に変わる。」「ひとりにだけ、塩が降る。目に入り、痛くてたまらない・・・。」と、御伽噺なのか作り話なのかよくわからないファンタスティックな物語が続いていく。正直なところ内容はどうでもいい。ただ、かわいさと残酷さの共存を可能にするやくしまるの語り口で、頭がぶわんと揺れ動く。ここにきて、軋む砂音がどんどんと身体に馴染んでゆく――。演奏が終わると、最後はお約束の「おしまい。」「ばいばい。」で締めくくられた。感情があるのかないのか、ぽやんとした物言いで、放るように言葉を残し、やくしまるは会場を後にする。その姿を、わたしはぼんやり目で追っていた。
 拍手に混じり、「やっぱり不思議すぎる、、、」という女性の声を聞いた。初見であれば、このとりとめのなさが理解しがたいかもしれない。しかしどうしてか、クセになるのがやくしまるえつこの中毒性。コチラ、徐々に、確実に好きの方向へ向かっていると思う。

●オオルタイチ+康本雅子
 幕が上がり、太陽とも星ともとれる、なぞのネクタイ(もしくは前掛け?)にアロハなズボンのオオルタイチが現れると、会場のテンションは急上昇。ピコピコ機械音のポップなメロディーが流れ出し、オオルタイチ語(!?)が飛び出すと、一気に異国ムードで覆われ、妙にHAPPYな気分で身体がうずく。すると、遠くから暴走族よろしくバイク音がブオンブオンと鳴り響いた。観客の関心はいっせいに奪われ、音の鳴る後方へ振り向く。そこには、パンチパーマで白い着物を纏う、仁王立ちの康本雅子。たっぷりとライトアップに照らされると、客の視線を一気に浴びながら、全速力で舞台前方まで駆け上がり、オオルタイチの前で、ばたり、と、倒れた。男と女の宴の始まりだ。白いうちかけに包まる身体を外へ外へと開放する康本。うちかけを巧みに操り、ゆらり・ゆらりと身体をたゆたわせ、男を挑発する。一方、着物を脱ぎ捨てれば、つんつるてんの衣装でやんちゃな女の子へと変貌。康本の肢体は、時には色めき、時には元気溢れる若々しさをふりまく。これは、戦(いくさ)か恋のかけ引きか――。圧巻だったのは、白い布を使った2人の人間影絵。くっきりと映し出される姿は、切り絵のようだ。布越しにするりと服を脱ぎ捨て、絡み合う男女は、一晩の目合いか。康本のしなやかなラインとほんのり膨らむ胸が、妙に色気を掻き立て悩ましい。最後は、スカジャンでレディース姿へ変身した康本が、観客の間を、花ひらを撒き散らしながら飛び跳ね踊る。白いジャケットを羽織り、金色のもじゃもじゃを首に巻いたオオルタイチは、天井を見上げ、唇をかみしめている。
 幕が下がった後も、大歓声は止まらない。アンコールの嵐を受け、再び登場したオオルタイチ(上半身裸)はひと言、「またどこかで、康本雅子と一緒に作品を披露する日が来ることを、楽しみにしていてください。」と言った。
 ぐっと気温が下がり冷え込む那須の夜をよそに、この『宴会劇場』は演者と観客の熱気で蒸していた。つーっと流れ落ちる汗を感じる。ダンスを観て汗をかくなんて、初めての体験だった。初日の夜が終わった。宴会場には、康本が振りまいた花吹雪が残されていた。

※キャンプサイトに戻り、寝袋で就寝。
9月末でも意外といけたが、このイベントおいて、テント利用者は私たちだけでした・・・。
(他は全キャンセルだったらしい、、、あははは。)

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【9月27日(日)担当:スペクタクル・イン・ザ・ファーム】

 2日目の朝。前日の晴天とはうって変わって、あいにくの曇り空。風も冷たく、時おり霧雨が降る。この日のトップバッターは、シアタープロダクツ×KATHY×girraffe。会場は、雄大な自然に囲まれた『那須どうぶつ王国』。演目は、モデルと覆面パフォーマンスユニットに加えて、鷹、羊、トナカイ、アルパカなどのかわいい動物たちが出演する“スペクタクル”な新作ファッションショー(シアタープロダクツpresents・AUTUMN/WINTERコレクション2009)だ。
 『那須どうぶつ王国』は、入場するとまず、栃木県きってのゆるキャラ「おいでナスくん」(全国8位!)が出迎えてくれた。ナスくんを軽く挨拶を交わし?、広い園内を走る名物「わんにゃんバス」のバス停へ。猫verに乗り込み、“にゃんにゃん”と鳴くほのぼのバスに揺られながら、これから行なわれる斬新かつユニークなエンターテインメントショーに想いを馳せた。

●シアタープロダクツ×KATHY×girraffe。
 会場は、屋外のイベント会場。次々と人で埋まっていく。さすがに今回のイベントの目玉演目だけあって、注目度は抜群、NHKの取材も来ていたようだった。すこし肌寒く、しかしギリギリ雨の止んだ朝10:00。くるくるパーマに素敵ハットをかぶったお洒落なオジサマが、遠くの小屋から本を片手に歩いてくるのが見えてきた。ショーのスタートだ。「みなさん。ステキなお茶会へようこそ! 乗馬の好きな気まぐれ娘たちによる楽しいお茶会が、今日も始まります・・・」。まずやってきたのは、馬車に乗った金髪の女性たち。黒いタイツで顔面を覆い、私たちに手を振るようなしぐさで優雅に登場する(KATHY)。馬車を降り踊りだすと、カラフルな蝶ネクタイでめかしこんだアヒルが現れ、ダンスの道しるべに導かれるがごとく、列をなして彼女たちの後をついて行く――。「わー!」「かわいい!」という声援があがるも、これはただのご挨拶! ここからがいよいよ本番だ。モコモコと暖かそうなシアタープロダクツの新作で身をつつむモデル(=娘)たちが、アルパカやトナカイたちと共にやってくる。“キャット・ウォーク”ならぬ“ファーム・ウォーク”か? 動物たちも、お行儀よく会場内を闊歩する。お茶会が始まると、娘たちを歓迎するかのごとく美しい青い鳥が空を駆け巡る。覆面の金髪美女が乱入し破天荒に踊り狂ったかと思えば、王国の王子(?)が馬に乗って颯爽と登場し、眩しすぎる笑顔をふりまきながら犬と戯れている(そして、その姿を娘たちは見とれている)。もちろん、くるくるパーマのガイジンによる、girraffe製ネクタイのお披露目も忘れない。羊やアルパカたちにアヒル同様お洒落な蝶ネクタイを与えてご満悦な様子。ファッションショーなのか動物ショーなのか、ダンスパーティなのかお茶会なのか、既にわけはわからないが、とにかく楽しくてハッピーなパーティー!! 最後の大仕掛けの「羊の大群」には驚かされた。遠くの柵から解き放たれた10数匹の羊は、一同に観客めがけてやってくる。オジサンも娘たちも羊に追われて逃げまとい、走り回る。いや、戯れているようにも見えるし、一緒に踊っているのかもしれない。このドタバタ劇にはいつの間にかこれまでに登場した全動物も紛れている。砂ぼこりが舞い、転んで汚れ、なお追い掛け追い回される人間と動物の逆転の連続が笑いを誘い、大歓声のうちに幕は閉じた。
 ファッションショーというよりも、ひとつのエンターテインメントショーとして楽しむことができた。洋服の印象はまったく残らなかったが、ファッション×ダンス×動物のハチャメチャな融合は見事だったと思う。終焉後に見せたモデルたちの晴れやかな表情も、非常に印象的だった。

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