2009-10-02

心の旅 このエントリーを含むはてなブックマーク 

この映画は見る人を選びそうだ。男性よりは女性むけ。
女性の中でも、10代後半から20代前半の若者およびそのくらいの年頃の娘を持つ母親へのアピールが強いだろう。
世間では女性限定試写会なるものが頻繁に行われているが、漫然と女性を対象にしてもうまくヒットしないのではないだろうか?
ターゲットが限定される上に、もうひとつ難しい要因がある。
それは宗教観の違いである。
ドゥーニャは、あまり敬虔とは言えぬまでもイスラム教の信者。
デイジーはたぶんキリスト教徒だろうが、イスラムの戒律とは無縁な生活を送っている。
日本人はデイジーに近い感覚でこの映画を観ることになる。
画面に現れる多くのイスラムの人々のデイジーへの顰蹙目線は理解できないし、むしろ反感を覚えることだろう。
その日暮らしで男にだらしなく一見自堕落な生き方のデイジー。
イスラムの戒律に縛られてもっとしがらみを捨て自由に生きたいドゥーニャ。
デイジーは遊び相手との子供を孕み、ドゥーニャは従兄との結婚を押しつけられる。
きっかけは違うが、親友二人は相次いでモロッコへ旅立つことになる。
デイジーの実の父親がモロッコに居るのは僥倖だが、ふたりの珍道中が始まる。
デイジーは自分と母親を捨てた父親を探す自分探しの旅。
自分のしがらみを捨てたいドゥーニャはそんなデイジーにつきあって旅をする。
列車に怪しげなホテルにヒッチハイクと、治安が悪い中平気で旅するのは流石に肉食女子である。
カサブランカからマラケシュと、街中も田舎も日本とは風景がかけ離れている。
そんな広大で荒涼としていると言えなくもない景色を見ているのも実に楽しい。
人生の厳しさやさびしさを象徴しているような旅路であった。
旅路の果てに二人があらためて気が付いたことは予定調和の世界である。
そんなふうに感じること自体が、この映画の視聴対象者でないことを如実にあらわしている。(笑)
やはり、若くて色々なことに悩み多き年頃の人およびそういう人を見守っている親、とくに母親にぜひ見て欲しい映画であった。
ドゥーニャの母親も、デイジーの母親も娘を大切に思っていることは同じ。
暖かい気持ちになれる映画なので、娘を持つ父親にもおすすめである。

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