2009-10-04

高杉恵 つくらない、でつくる美術 このエントリーを含むはてなブックマーク 

高杉恵(1976年宮崎市生まれ)
幼少時を大分、熊本で過ごし、宮崎大学教育学部に入学した高杉恵は、在学中に日展に入選し、卒業と同時に第3回宮崎県美術海外留学賞を受賞し、パリに1年間学びます。その後複数の地方工芸ディプロム、国家ディプロムを取得しながら、北フランスのリール市美術館の選抜展に選出されるなど、発表の場を広げていきました。7年半にわたる滞在留学から2007年に帰国した彼女は、現在東京で生活、制作しています。
制作の過程において高杉恵は、「表現しない」ことに重点を置きます。「手を加えない」「つくらない」「語り過ぎない」という、ともすると消え入りそうな思想をもって、作家は力強い作品を生みだしているのです。学生時代に制作した作品はオーソドックスなブロンズの裸婦全身像でしたが、フランスで研鑽を重ねるにつれ、表現は素材との対話と、社会における人物の姿へと深く思考していきます。人物が作家の関心の中心であることに変わりありませんが、作品は人間と人間との関係性をあわらす群像へと変貌していきました。そして、顔の表情だけでも人物のすべてを代弁できると気付いた作家は、全身像から半身像、胸像から頭像へと削ぎ落としていったのです。
今回発表した作品「2009年 夏 東京」は、粘土を自然乾燥させた13体の頭像による群像です。作家が日々の生活の中ですれ違った人々からインスピレーションを受けた顔立ちは静止画のように切り取られ、抽出されます。都市の雑踏の中の「静けさ」と、「物音」が同時に聴こえてくるかのような表情は、「沈黙してものを語る」彫刻という古典的な形態があらわした、現代のわれわれのすがたとなって響きます。

明月記Ever Bright Moonlight アレックス・ボール、高杉恵、日高進太郎
2009年9月26日(土)~10月31日(土) 12:00~19:00 月曜、火曜休廊

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キーワード:

現代 / アート / 東京 / 神楽坂 / 美術


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