2009-11-01

視ること:『アンヴィル!~夢を諦めきれない男たち~』 このエントリーを含むはてなブックマーク 

10月20日、Zepp Tokyoでの試写会で観ました。
キアヌ・リーヴス、マイケル・ムーアら映画界の有名人が熱烈に応援しているとのことで、日本でも公開前から音楽ドキュメンタリーとしては異例の盛り上がりを見せている作品。
この試写会も襟川クロが仕切り、長瀬智也が映像で応援(長い)、とかなり華やかに盛り上げながら行われました。ライヴハウスなので爆音で体感できるし、この映画が大事にされてることがここからも伝わってきた。

映画はこの日本で84年に開催された「スーパーロック'84イン・ジャパン」というフェスから幕を開けます。ホワイトスネイクやマイケル・シェンカー・グループなんかの大物に交じり、アンヴィルはまだ新進バンドといったポジションだったけど、ハジけまくりの演奏は堂々としたもの。ヴォーカル/ギターのリップスはボンデージな衣装に身を包んで挑発的な笑顔を振り撒きながら、バイブで狂ったようにギターを鳴らす。客もノリノリだし、メタリカのラーズとかスラッシュとか、そうそうたるミュージシャンたちが、いかにアンヴィルの登場が衝撃的であったかを語るコメントも差し挟まれて、彼らには輝かしい前途が開けているべきだったのに……。
次のシーンは現在のカナダ。肌のハリもすっかりなくなったリップスが車を走らせるその先にあるのはケータリング会社だ。デビュー以来、どこをどう間違ったか資質はありつつ鳴かず飛ばずだった彼らは、地道に働きながらそれでもバンド活動は続けている。
小さいクラブでギグをすれば、昔からのファンがそれは夢中でこぶしをかざす。売れて鼻高々になったりして、彼らから遠い存在にならなかったのはすごい財産だと思うのだけど……、しかし30年っていう歳月が実を結んでこなかったっていうのは不幸だよなあ。普通の人の人生にはいくらでも転がっていることだろうけど、こうして見せられると本当に悲壮で残酷。
ヨーロッパツアーが決まったと言って嬉々として旅立っても、最悪なマネージャーのせいで電車に乗れなかったり、告知がされず客がいなかったり。ギャラもきちんと払われず、疲弊して、それでも活動せず忘れられていくよりはいい、とそんな現状にしがみ付く彼ら。本当にバンドが好きなんだよね。そしてそんな彼らを支えてくれる家族の愛情にも泣かされる。もう終わってる、と思いはしても、もしかしたらの希望を一緒に抱いて歩んでくれる、掛け値なしの信頼と愛情って、本当に素晴らしい。
ツアーは最悪だったけれど、彼らはやっと一念奮起。出会った弁護士にマネージャーがダメだ、と言われたことも効いたようだし、あとはもちろんこの映画の監督のサーシャ(16歳のときに彼らのローディをやってた)と再会し、撮影がスタートしたってことがもちろん大きいんだろう。彼らが動きさえすれば支えてくれる人たちはいるのだ。自信を持ち始めた彼らは、金をかき集めて腕のいいプロデューサーと組みCDを作り、プロモーションも積極的に行うようになる。レコード会社に「今どきこの音は……」と厳しいことを言われても、真摯に耳を傾け、その中から自分たちの売りはずっと続けてきたことだ!とアドバイスを掬い取る。ドラムのロブの冷静さが頼もしい。永遠のロック小僧って感じのリップスのいい女房役だ。
すごくハラハラしたシーンがあった。レコーディングの途中、高揚するリップスは落ち着き払ったロブがどうにも我慢ならなくなったらしく、八つ当たりを始めるのだ。ロブも彼の元を去ろうとして、どうなるの?と心配になるけれど……、こんなのもう彼らにとっては30年もやり続けている日常茶飯事なんだよね。悪かったと抱き合う姿に絆の強さを見せ付けられて胸が熱くなる。こうやってたくさんの苦労を乗り越えてやってきたんだね。

最高なCDはできたものの、それをレコード会社に聴いてもらうっていうのも本当に大変なことで、音楽業界で生きていくには、運や巡り合わせによるところも本当に大きいんだということを思い知らされる。
50過ぎたバンドが今から芽を出すなんて……、とこちらまで悲観的になってきたところで、日本から夢のようなオファーが舞い込む。ラウドパーク'06への出演依頼だ!
……でも喜び勇んで来たものの、84年のイベントと同じく1番手で登場だということを知って不安になる彼ら。この広い会場が埋まるのか……、ああ、サスペンス。
でもステージに上った彼らが見たのは、それまで体験したこともない大観衆だった! きゃあ~、この長い道のりを見てきたら、これが彼らにとってどれほど感動的なものであるかがまるで自分のことのように感じられて、鳥肌立てて喜びました。日本人ファンの笑顔もなんてあったかなんだろう!誇らしいよ!
彼らが30年を経てこんな脚光を浴びたのも、巡り合わせのたまものではあると思うけど、とにかく続けてこなけりゃ起こらないこと。
そして、ミッキー・ロークの『レスラー』もあったけれど、不遇な時期があったからこその奇跡みたいな逆転ってのもある。ボロボロになっても、生き恥と思っても(そこまでは彼らに失礼か)、生きていかなけりゃあな~! 観る人もリアルに自分を重ねて励まされるのだ。

作品に大感動したあと、この日の試写会では素晴らしいサプライズが。
エンドロールが終わろうか、ってときにスクリーンが上がり、本物のアンヴィルの演奏が!!!
出るとは噂で知っていたけど、この映画を観た後で、お客を盛り上げ嬉々として演奏する彼らを見るのは、映画の中に入り込んだみたいで夢みたいな体験でした。“Metal On Metal”を演奏。Keep On Rockin'!!!
日本で始まり日本で終わる、日本人冥利に尽きるような映画だったわけだけど、リップスはこのときも「日本人はヒーローだ」と言ってくれました。あながちリップサービスでもないんだろうな。この前日、なんとリップスがひとりでセンター街に呆然とたたずんでたのを目撃したっていう知人がいて、何してたんでしょうねえ、と思っていたけど、日本を自分の原点のように思ってくれていて、戻ってこれたことの感慨に耽っていたのかもしれないな、と映画を観たら思いました。
ホント日本のファンの熱気はすごかった。で、熱いコールに応えて予定にないアンコールまでしてくれたよ! 最高に楽しい試写会だった。

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深谷直子

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深谷直子

“ナオです~。”