2010-06-22

『ストーンズ・イン・エグザイル』クロスレビュー:名曲を作る、ならず者たちを楽しむドキュメンタリー このエントリーを含むはてなブックマーク 

 ミュージシャンをとらえたドキュメンタリーは、ときに宣伝臭さが鼻について、つまらないものもあるが、ローリング・ストーンズを主にしたドキュメンタリーは大概面白い。それは、おそらくだが、自分たちがマスコミに表面的ばかりとらえられるだけで真実を見てくれない、だから、ドキュメンタリーのときは何もかもブッチャけるように真実を語ろうとしているのではないかと思う。今回も、ストーンズの名盤の裏側をしっかりととらえていて、ストーンズ好きだけてなく音楽ファンを満足させるものだと感じた。

 「ダイスをころがせ」など名曲が収録された「メインストリートのならず者」は、入っている曲の多くは、アメリカでもイギリスでもない、南フランスのとある別荘で生まれたものだったことを、この作品から初めて知ることができた。そして、国を捨てる危機感を持ちながらこそ生まれた名曲があったことを知ることができたことだけでも、この作品は価値あるものではないかと思う。

 特に感心したのは、「メインストリートのならず者」の曲をつくっていく過程だ。特にスタジオの設備もない、南仏の別荘の地下での曲つくりは、ジャズのセッションのようにも思えるほどだ。ミックやキース、ワッツにスタッフたちの息のあった曲作りの様子は、新しいものが出来上がる、歴史が作られていくように感じられてドキドキさせられた。これこそが、ストーンズのドキュメンタリーフイルムの真骨頂と思わせるものだ。

 そして後半は、ヤクが持ち込まれたことで、曲つくりよりもヤクへと溺れていく様子も見えてくる。ただ、この部分はそれほど細かくは描かれていない点は、若干の不満は感じた。このことが、日本での公演が大幅に遅れた要因だけに、もう少し突っ込んでみてほしかったのだが、それは仕方ないことかもしれない。この作品は、後に苦労話しになることより、曲を作っていくストーンズたちの心意気を見ていくものなのだから。現役ミュージシャンも共感するものが多いかもしれない、この作品からストーンズらしい魅力をいっぱい感じて欲しいと思う。

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山中英寛

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