2010-08-26

『ルイーサ』クロスレビュー:凍った心を溶きほぐして このエントリーを含むはてなブックマーク 

いきなり後ろから頭を殴られるように、それまでの生活が突然一変するような悲劇に見舞われることがある。

ルイーサはある日夫と娘を亡くしてしまう。詳しいことは語られない。ただ、その日から彼女の心は凍ってしまう。友だちも作らず独りきりになり、話し相手は飼い猫のティノだけになった。そして自分を罰するかのように、二つの職場と自宅の3カ所だけを、ただ移動する毎日を繰り返す。

ところが、人生を一変させる悲劇がもう一度訪れる。猫のティノが死に、二つの職場も解雇されてしまうのだ。退職金は払われず貯金もなく、まさに人生待ったなし。一度目の悲劇では心が凍ったが、今度は凍ってるヒマすらない。まずはとにかくティノの葬儀代を稼がなければ!

と、ここから映画はギアが一段上がり、ルイーサの悲しくもおかしい悪戦苦闘が描かれていく。内容的にシリアスな作品かと思っていたが、上質なユーモアがほどよくブレンドされている。

特に地下鉄の物乞い達の見よう見まねで、「にわか物乞い」となるルイーサの姿には、真剣なだけに余計笑わされてしまう。自称HIVキャリアの物乞いのマネしたら、「7人の家族を養っている“IHV患者”にお恵みを」と病名を間違えたまま必死に訴える有り様だ(笑)

しかし、生きることに必死なルイーサの顔は、だんだん生き生きと輝いてくる。目の前の目標を追いかけているうち、片足の物乞いオラシオと心を通わせ、アパート管理人のホセとの距離も縮まっていた。誰とも会話をしない孤独な日々は、過去のものとなっていた。凍っていたルイーサの心は、いつしか溶け始めていたのだ。

人生には心を固く凍らせるような悲劇が、突然襲いかかってくる時がある。でも、同じように救いとか希望といったものも、何の前触れもなく、ある日突然訪れてきたりもするのだ。凍った心が溶けだして、やさしく、やわらかくほぐれていくような日が。

「やっぱり人生、そう捨てたもんじゃない」と、もう一度人生に踏みだす勇気を、ルイーサは私たちにコソッと分け与えてくれるのだ。

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