2010-11-17

大阪と東京:スプリング・フィーバー上映中止で考える。 このエントリーを含むはてなブックマーク 

大阪に住んでいることをこれほど悔しいと思ったことは初めてかもしれない。

楽しみにしていた映画「スプリング・フィーバー」の上映が、
心斎橋シネマートでは1日1回18:30からの上映というのを、昨日、シネマートのウェブサイトで知った。

1日にたった1回で、しかもその時間なら仕事終わりにも行けなさそうだから、
休みの日曜にしか行けないかなーと思っていた。

今日、UPLINK代表の浅井さんのツイートで知るところによると、
これは、シネマートが配給会社であるUPLINKに相談せずの独断である、と。

続いて、神戸元町映画館での上映も、1日1回16時台からの上映だ、と。
同じく、独断による。
(のちに、神戸元町映画館は、1日3回上映を約束されたとのこと。)

詳しくは浅井さんのツイートで。
http://twitter.com/asaitakashi

昨日は、UPLINKとシネマートが相談のうえ決めた上映時間だと思っていたのだが、
そうではないと知った今日、怒りと悲しさがこみあげてきた。

東京では1日4回上映されている映画が、大阪・神戸では1日たった1回の上映だ。
しかも、会社員なら普通は仕事帰りに見に行けない時間に、だ。

つまりは東京での客足が良くないので大阪・神戸の「地方」では1日1回で充分だ、ということなのだろうが、
そんなことを言い始めれば、普段から映画館にどれだけのお客さんが来ているのか。
シネコン以外の映画館で、ある上映回に10人以上入っていれば、良いほうじゃないだろうか。

映画の集客の話に関しては、私は専門外なのでとやかく言わないとして、
この「スプリング・フィーバー」におけるキーワードは今はずせないキーワードであることは明らかだ。

同性愛、中国、愛、結婚、自由。

特に、この映画が、ロウ・イエ監督が5年間の映画製作禁止を中国政府から言い渡されても作った映画だということ。
表現の自由を与えてくれない中国にケンカを売った映画なのだ。

それが、この国際社会でどれだけ重要な創作活動か、普通はわかるだろう。

そんな映画を、多くの人が見逃すであろう時間帯に1回だけ上映するということは、
関西人は国際時事にうといので見たい人は少ない、という判断だろうか。

もちろん、東京と大阪・神戸の人の絶対数の違いもあるのはわかるし、
私の温度も少し高いが、ここは大阪に住む身として怒るべきだと思ったので、ここに書いておく。

今回のこの事象、私は、大阪の今後のカルチャーに影響していく問題だと思ったのだ。
シネマートの独断は、大阪に漂っている雰囲気も後押ししている気がするし、経営面という一言で片付けてはいけないと思う。
今後の大阪のために。

関西に住みながらも東京の情報をチェックしたり、半年に1度ほどは東京に訪れる。
そのたびに、大阪の衰退を感じてしまう。東京と大阪の差が大きくなっていく気がする。
何が?と言われても、漠然としたイメージしかないので、うまく言葉にできない。
情報量が違うのはもちろん仕方ないのだが、最近の大阪にはカルチャー自体の衰えを感じるのだ。

今回のこの「スプリング・フィーバー」大阪・神戸事件で少し具体化したのは、
最近の大阪のカルチャーは発信力が弱いということ。
内輪ノリの雰囲気でアットホームだが、そこから日本全国や海外に発信できるかといえばそうでもない、というのが私の感じる大阪だ。

好んで内輪ノリを楽しんでいるのかどうか、各々の事例で変わってくるとは思うが、
では、その内輪ノリをどう改善していくべきなのか。
具体的に言うと、速さと、ほんの少しのスマートさが足りない気がする。
例えば、支配人のプライベートなブログより、その上映回でお客さんから聞こえてきた感想をツイートするほうが集客も上がるだろう。
ホームページ1つにとっても、もう少し見やすくするだけでアクセス数が増えるだろう。

東京より人口が少ない大阪で、いかに濃く文化を育てて発信していくのか、
予算が限られていても出来ることはもっとあるような気がする。
東京から流れてくるものを、そのままプロモーションも規模も縮小してTVのように垂れ流すだけでは、大阪には何も期待されない。

と、私自身もここで書いたことを頭に叩き込んで、精進しないといけない。

大阪と東京の距離がどんどん離れていく。
大阪はもう日本の大きな都市として見られなくなっていってるのかもしれない。
求めるのであれば、東京へ移るほうが手っ取り早く、賢いだろう。

もし今回、シネマートで2回限りの上映となってしまうと、大阪は本当にもう終わりかもしれない、と、私は恐れている。
観客である私たちに映画を見るという権利と自由を与えてくれる映画館が、その権利と自由を奪おうとしている。
いや、大阪の私たちは自由を主張しない、と、あきらめられているのかもしれない。

コメント(0)


山本 佳奈子

ゲストブロガー

山本 佳奈子

“Offshoreというサイトでアジアのインディペンデントなアート・カルチャーを紹介しています。webDICEコントリビューターとして、「キューバ紀行」「アジアン・カルチャー探索ぶらり旅」書いてました。”


関連骰子の眼

関連日記