2010-12-22

モノでなくカルチャーを扱う中小企業の倒産を防ぐために このエントリーを含むはてなブックマーク 

ワールドミュージックからダンスやスペクタル馬劇団ジンガロまで世界中の面白いアーティストを日本によんで興行をやっていたカンバセーションが12月20日、倒産した。事業停止をして社長は自己破産手続きを。いわゆる計画倒産である。
負債は速報で3.5億円。

以下は、カンバセーションの事ではなく、明日は我が身かと脳内シミレーションをした事である事をお断りしておきます。

多分、今は、僕の廻りの中小企業は手形で決済するのではなく、現金を銀行振込で支払っているので、銀行で手形が落ちなかったので倒産というような事は少ないだろう。ということは、社長は、ああ、今月ついに振り込みするお金もない。その時点では、すでに印刷会社やスタジオ代やデザイン料やなんやかんやの月々の支払が遅れていて、そろそろ催促の電話もかかって来て、新しい発注が出来なくなったり、業者を始めとした人間関係が崩れ始めていく。月末には家賃を払わなければならないし、20日には銀行口座からは自動で借金の返済やリース代やなんやかんやが引き落とされるし、その額は今口座にはない。これはもう覚悟を決めるしかない。今、ある現金を集めて、給料日は25日だが、とりあえず苦楽を共にして働いてくれた社員には少しでも給料を払い、20日に業務停止しかない。それで、すべての借金やリースの連帯保証をしている社長は個人で返済できる額ではないので自己破産の手続きをし、債権者の督促から逃れる手続きをする。

それまでにも社長は会社からの給料はもらうはもらうけど、会社の資金繰りがショートしているので、自分が生活できる額だけが確保し、残りのお金は会社に貸し付けるという形で自己資金を会社の運転資金に廻していた。社員より実質給料は低いがそれも好きで初めて自分の責任で運営している会社なのでしょうがない。

一気にこうなった訳でなく、銀行からの借金が長年の経営が苦しいおかげで何度もお金を借りたり、借り換えたりで億単位になっていく。そうすると月々の返済額が数百万円になり、毎月の収入だけでは廻せなくなる。政府はそういう企業のために、返済を繰り延べの申込があったら速やかにするようにという指導を金融機関にして、つい先週も、その指導を1年間延ばす事を発表していたが、その手続き(いわゆるリスケ=リ・スケジュール)をしても本業の資金繰りがショートし、先の商売の予定もギャンブル度が高いし、興行が始まる迄は持ち出しばかりでその資金もつきた。

というようなことを一気に想像してしまうので、「長い間ありがとう」「残念」「R.I.P.」とかは社長である僕は簡単には言えない。3.5億円という額を誰かが負債を抱える事になるし、社長はその責任を負わなければならない。

中小企業が融資を銀行から受ける場合は、大半は保証協会という組織が公的資金で銀行の債務を保証しているので、民間の金融機関が困る事はないので銀行など金融機関の負債なら、まあしょうがないと思う。問題は、印刷会社や、デザイナーやアーティストのギャランティ、スタジオ代とか、飲食をしていれば言えば、肉や野菜のやドリンクの仕入れ業者とか、中小企業が倒産すればいろんな個人や小さな企業に迷惑をかける事になる。

と、脳内シュミレーションをしてネガティブな事ばかり考えていてもしょうがないのでちょっとはポジティブな事を考えてみよう。

そのまえに現状を認識してみよう。

アーティストや業者はこういうことが起こるとやっぱり大手とつきあおうという事になる。業者はそれで成り立つなら大手とだけ商売やればいいかもしれないが、現実は取引先は個人レベルから中小企業ばかりで、クライアントを大手だけなんて線引きをしたらその業者も商売はなりたたないだろう。
で、アーティストはどうかというと大手が扱わない事を中小企業がやっていたので、そことつきあわなければそれ以外の選択肢はないだろう。
最近の問題は、大手も儲からないので、例えば映画で言えば、大手老舗資本のDVDメーカーは、インディーズに手を出し始めて、中小企業がやっていた事を奪っているという現状もある。
広告で言えば、大手広告代理店が今迄自ら営業をかけない小さなところの十万円単位の仕事を受注している。テレビ局が製作プロダクションに落とさないで自社で社員を使い製作をするというようなことがおきている。大手も生き残るために必死なので熾烈な生存競争が起きている。

◎自分に影響を与える事を提供してくれた会社をこれ以上潰さないために応援する方法

1) 潰れてからでは遅い、かつてテレビドラマ『家なき子』で安達祐実の名台詞「同情するなら金をくれ」というのがあったが。全くそう思う。「残念がる前に映画館で映画を観ろ」。最近、ライブにいってないな、映画館で映画観ないな、演劇やダンスなんか全然観てないな、しょうがない自分も歳をとって忙しくなったから。そんな、あなたも久しぶりに街に出てダンスの公演や映画を観たりすれば、新しいエネルギーを得て今の仕事にもいい影響を与えるのでは。

2) アマゾンで安いからとCDやDVDを買うのもいいが、小さなお店やメーカーを応援する意味で、ちょっと定価でお店で買ってみよう。あるいはメーカや、アーティストがライブで売っている時に直で買ってみよう。アマゾンだとマーケットプレイスで買うのはやめてみよう。ブックオフで買うのもやめよう。ちょっとした贅沢と言うか、安く買った時との差額は自分の好きな物をリリースしてくれている会社への寄付だと思うようにしょう。数百円寄付した事で、気持ちを豊かにしよう。

3) あなたがアーティストやクリエイターや映画監督、あるいは小さな会社の社長なら、同じ条件ならあなたが昔から好きだった小さな会社から自分の作品をリリースしよう。もし、名のある大きい、老舗の会社の方が最初に前払いで数十万円払ってくれて、小さな会社はいわゆNO MG(最低保証金無し)だった場合、自分はどちらの会社が好きなのかもう一度よく考えてみよう。小さなところでも大きなところでも、その作品を一生懸命扱ってくれるところがいいに決まっていますが、大手はタイトル数が多いのでどうしても埋もれがちです。(なんだかえらく具体的なはなしですが)同じ枚数売れれば、1年後にはどちらも同じ収入になる事もある。

4) あなたが小さな会社の社長だったら。大手とつきあう方が何となく箔がついていいような気がするが、大手の下請けになっていないか、よく考えてみよう。小さな会社どおしでネットワークを作る事を考えよう。ネットワークとは助け合う事。お金をできるだけ上場企業に廻さないようにしよう。自分たちのネットワークだけで廻していこう。でも、社長なら全ての大手企業、上場企業を否定するのではなく、志を共に出来る人のいる企業とはいい仕事をしましょう。

5) 最後は、あなたがこれまでのアップリンクの作品にかつて/今も影響を与えられたと感じるなら、少し応援してほしい。

・今は学校の先生になっているなら図書館にアップリンクのDVDを入れてほしい。

・地方に住んでいるのならアップリンクのパルコシティの通販でDVDを買ってほしい。アマゾンで買ってもらうより、アップリンクの利益率はいいので。

・渋谷に時々来るなら待ち合わせは「タベラ」はいかがですか、最近前の通りは代々木八幡迄面白くなっているので来てみてください。

・会社の新年会とか映画製作の打ち上げとかを「タベラ」でというのはどうですか、サービスします。

・アップリンク配給作品を今なら『スプリング・フィーバー』とかを地元の映画館で観てほしい。これから全国で公開する『リアル!未公開映画祭』を観てほしい。

・例えばアーティストならアップリンク・ファクトリーでイベントを一緒に企画するのはどうですか。あるいは、DVDやCDのリリースを一緒に考えるのはどうですか。あるいは、ライブを収録してDVDを出してみませんか、DVD+ライブCDを既に2作品リリース(鈴木祥子、小島麻由美)している実績があります。

・アップリンクのギャラリーでは物販も出来ます。展示会も出来ます。中野ゼロホールよりは少しは高いけどアップリンクで試写をしてみてはどうですか、渋谷です。

・『さしさわりのある映画祭』のような企画上映をアップリンクと一緒にやってみませんか。

・webDICEに記事連動型の広告を出してみませんか、チラシを印刷して配布する費用対効果を考えれば悪くないと思います。

あとなんだろう、気持ちとしては世の中みんな商売優先でカルチャー状況は厳しいので、なんか面白い事やりませんか!面白い事やるので観に来て下さい、買って下さい、食べて飲んで下さい!ということです。よろしくお願いします。

ふうーー、とりあえずポジティブな気持ちに自分を持ち上げてこの日記を書き終える。
25日土曜日から『リアル!未公開映画祭』
ロウ・イエ監督の『スプリング・フィーバー』『ふたりの人魚』の上映がアップリンクで始まりますのでぜひどうぞ。

『リアル!未公開映画祭』公式サイト
http://www.webdice.jp/realmikoukai/

『スプリング・フィーバー』公式サイト
http://www.uplink.co.jp/springfever/

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浅井 隆

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