2010-12-29

アニメ映画としては魅せられるのだが——映画『借りぐらしのアリエッティ』—— このエントリーを含むはてなブックマーク 

 週末から本当に冬らしい、痛いような寒さが続きますね。明日は東京でも久しぶりに雨が降るみたいです。

 今日の午後から夕方にかけて、先月末の国際有機農業映画祭(翌日から超多忙で、それについての映画観賞記は、結局書けませんでした)以来、ほぼ一ヶ月ぶりに映画を観て来ました。

 会場は行きつけの二番館・下高井戸シネマ、観たのはジプリのアニメ映画『借りぐらしのアリエッティ』(監督:米林宏昌、脚本:宮崎駿・丹羽圭子、原作:メアリー・ノートン『床下の小人たち』、声の出演:志田未来、神木隆之介、大竹しのぶ、三浦友和、樹木希林、竹下景子他、2010年)。

 映画館までは、いつも通り行きも帰りも競歩ペースでウォーキング。最初は痛寒いものの、明大前に近づくあたりから、身体の中からポカポカ暖まってきて、映画館に着く頃には汗ばむほど。

 館内は予想外にスカスカで、二割入ってなかったんじゃないでしょうか。
 
 ストーリーや設定は、下記の公式ホームページ等を参照して下さい。

 http://www.karigurashi.jp/index.html

 で、いつも通り、観ながら、そして観賞後余韻醒めやらぬうちに思ったことを少しだけ。

 まずはアリエッティ一達、小人が感じる、我々人間や、人工自然問わずその周囲の世界の巨大さと恐ろしさは、とてもリアルに表現されていました。暖かみがありながらも丁寧な作画も、さすがジプリという感じ。アリエッティは実に魅力的な少女だし、ガッシリとした体格でありながらも知的で落ち着いた物腰の、彼女の父もカッコいいです。物語も1時間半の上映時間の枠内でコンパクトによくまとまっています。声の担当もベテラン俳優で固められていて、『ポニョ』での所ジョージや長嶋@息子のような素人芝居で、途中に冷や水を差されることもありません。つまりアニメ映画としてはとてもよく出来ているということです。

 難点は設定にあります。すなわち、原作では1950年代のイギリスだった舞台を、本作では2010年の武蔵小金井に移し替えたということですが、それが徹底していないのです。

 まずアリエッティ一家は、日本語を話し解するものの、お父さんの眼が蒼いことからも分かるように、明らかに北ヨーロッパ系です。家具調度も服装も何もかも全て、年季の入ったヨーロッパの田舎風。一家が「借りぐらし」をしている翔の大叔母の家が、戦前に建てられた立派な洋館だということを差し引いても、かなり奇異な感じがします。

 偶然怪我をしたアリエッティの父を助けたスピラーが、『未来少年コナン』のジムシィの肌の色を黒くした、インディアン(ネイティヴ・アメリカン)風なのも、ちょっと…。

 それに翔の服装もどう見ても現代日本の中学生に見えません。1970〜80年代風?

 何よりも高温多湿の日本の夏は収拾がつかない程生命に溢れているはずなのに、洋館を囲む庭は、荒れ果てているという設定であるにも拘らず、妙に飼い慣らされ、おとなし過ぎる感じがしました。

 舞台設定をうまく移し替えられないのであれば、『魔女の宅急便』のように、1950年代の欧米のどこかにしておけばよいのに…。

 アニメ映画としては最初から最後まで魅せられるだけに、残念でした。

 それと、話の都合上、やむを得なかったのかもしれませんが、アリエッティ一家を追い詰め、引っ越させることになる、年取ったお手伝いさんが、あまりに愚劣に描かれていたのも、ちょっといたたまれない感じがしましたね。

 少し経ったらDVDも出るでしょう。3000円弱なら買っても損は無いと思いますよ。上述のように設定に難点があり、『風の谷のナウシカ』のように考えさせられるような要素はないものの、観ていて気持ちよいし楽しいですから。

 原作は全五冊で『小人の冒険シリーズ』として、全て岩波から邦訳が出ているよう。今なら文庫版もハードカバー版も新刊で購入可能とのこと。『ゲド戦記』のような「奥行き」は期待出来ないかもしれませんが、気分転換に地域の図書館で借りて読んでみようかなと思っています。

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知世(Chise)

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