2011-01-12

『カシム・ザ・ドリーム』20万人の子供兵士が紛争最前線に送られている現実を語る、下村靖樹氏トークイベント【リアル!未公開映画祭:イベントレポ】 このエントリーを含むはてなブックマーク 

渋谷アップリンクにて開催中の『リアル!未公開映画祭』。その中の一本、『カシム・ザ・ドリーム~チャンピオンになった少年兵~』は、「やりすぎコージー」で水道橋博士が大絶賛した秀作!内戦の続くウガンダで、6歳の時に誘拐され、大量虐殺訓練を受けた少年カシムが、アメリカでボクシングの世界チャンピオンになるという数奇な人生を追ったドキュメンタリーです。

好評につき、『リアル!未公開映画祭』の会期が、1月20日(木)まで延長されました!『カシム・ザ・ドリーム~チャンピオンになった少年兵~』も、下記の日時で追加上映されますので、是非この機会にご覧ください。

1月15日(土)13:00~
1月19日(水)13:00~
会場はアップリンク・ファクトリー。
他の作品も追加上映されています。詳細は公式ウェブサイトで!
http://www.webdice.jp/realmikoukai/

1月8日の上映では、アフリカ大湖地域を20年近く取材し続けているフリー・ジャーナリストの下村靖樹さんをゲストに迎え、トークイベントが開催されました。

下村さんは、『カシム・ザ・ドリーム』について、「カシムさんは、過去に背負っている傷は非常に大きなものだと思うのですが、今は幸せになれている人であり、最高に成功した人です。カシムさんは、子供たちをとても大切にしていました。ジャーナリストとして、アフリカを取材していると『人の命の重さは皆同じ』だとか、『人間の命はお金で買えない』という言葉は嘘っぽく思えてしまうのですが、『子供は未来の宝だ』という言葉だけは、取材現場に行けば行く程、すごく実感するようになりました。子供たちがいてこそ、人類や地球の未来がどんどん繋がっていくし、子供たちの未来を踏みにじる子供兵士という存在を、映画を通して多くの人々に知ってもらい、世界から無くなればいいと思います。素晴らしいドキュメンタリー映画です。」と述べました。

また、「今、世界で約20万人の子供兵士がいます。世界的に子供兵士が注目され、どの正規軍でも子供兵士はいないことになっていますが、実際は、メディアの目の届かない、本当に危険な最前線に子供たちが送られています。以前より、さらに深くその存在が隠されています。」と、日本のメディアではなかなか報道されない現状を説明。カシムのいたウガンダ北部のグル地域の画像をスクリーンに映しながら、来場者から次々に出る質問に丁寧に答えていました。

さらに、「ウガンダの紛争はやや小康状態になってきているのに対し、今、子供たちにとって世界で最悪な国は、ソマリアです。」と、先々月に取材をしてきたソマリアの最新の映像と、画像も紹介。平和であれば、観光事業で経済が潤うのに十分な程の美しい風土の国でありながら、20年以上もの長い間続く内戦で破壊され尽くした街中の様子が伝わってくる映像を交え、銃弾が飛び交う中で身を晒しながら生きていかなければならない子供兵士たちの精神的ストレスを案じながらも、戦闘の中心地から2kmしか離れていない銃声が聞こえる中でサッカーをしている子供たちの映像になると、「ウガンダの人たちは、日本人にはない心の強さを持っていると感じる」と、子供たちとの交流の中で感じたことを語っていました。

「最近のアフリカにおける紛争の理由は、政治や、資源、民族間対立、そして経済など、以前のようなイデオロギーの問題でなく、今は、経済戦争であることが多くなっていて、大変複雑になっています。その分、紛争が終結し、平和な社会に戻るのにも、以前と違って、より複雑な過程が必要になってきています。」と、その困難さも訴えました。今、アフリカの問題で新たに注目されているのは、「ビジネス」。中国がアフリカ進出を強めていて、インフラ整備や、留学生の受け入れ、軍事面などでも、大きな影響力を持つようになってきています。それに対して、欧米各国は警戒を強くしていますが、莫大な利権が転がっているビジネスチャンスを巡る各国の複雑な動きに懸念を示していました。

「真実は、殺す側にも、殺される側にもそれぞれ存在するものなので、ひとりの人間が理解できるものではありません。今ここで話していることは、あくまで自分の考え方です。自分が伝える考え方を踏まえた上で、他の記事や映像、ニュースなどを見て、新しい考え方やアクションを起こしてくれる人がいたら、今までやって来てよかったと思えます。」と、今までの活動を振り返りながら、「ソマリアでは、避難民キャンプの中で、子供兵士になるようリクルートしているという話があります。今年はリクルートを受けた子供たちの取材をしようと考えています。」と、今後の取材テーマでトークイベントを締めくくりました。

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◆作品情報◆
『カシム・ザ・ドリーム~チャンピオンになった少年兵~』 (2009年 / アメリカ / 87分)
ウガンダでは79年に独裁者アミン大統領が失脚してからずっと内戦が続いていた。カシムが6歳のときに反政府ゲリラのNRA(国民抵抗軍)に誘拐され、少年兵として強制的に大量虐殺の訓練を受けることになる。86年にNRAが首都を制圧し、政権を奪取すると、今度は反政府組織LRA(神の抵抗軍)との内戦が始まることに。カシムは、戦場に背を向け、ボクサーになる道を選ぶ。アメリカに遠征した時、彼は亡命。リングネーム「ザ・ドリーム」として、アメリカのリングに立ち、世界チャンピオンへの道を歩むことになる。

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◆ゲストプロフィール◆
下村靖樹(フリージャーナリスト)
1971年 兵庫県姫路市生まれ。東京都在住。東京写真専門学校卒業後、フリーランスとして活動を始める。主にアフリカ大湖地域を中心に取材を行っている。著書に「ソマリア~ブラックホークと消えた国」(インターメディア出版)、「マウンテンベイブ」(長崎出版)がある。

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◆『リアル!未公開映画祭』とは?◆
ビッグマックを食べ続けて話題を呼んだ「スーパーサイズ・ミー」の監督モーガン・スパーロックが、「オサマ・ビン・ラディンはどこにいるんだろう?」と質問しながらイスラム諸国を駆け回る『ビン・ラディンを探せ!』、地球上で最も隔絶された国である北朝鮮の秘密のベールを取り払う『金正日花/キムジョンギリア』、強制的に少年兵にさせられた経験を持つボクサーを追った感動のドキュメンタリー『カシム・ザ・ドリーム~チャンピオンになった少年兵~』、謎に包まれたアシッド・フォーク・シンガー、ジャンデックの正体を追う『ジャンデック』、金儲けのための出産ビジネスに迫る『ビーイング・ボーン』などなど、衝撃の事実を扱った9作品を渋谷アップリンク・ファクトリーにて12/25~1/20まで公開、他全国順次公開!(※好評につき、会期が1/20まで延長されました!)
詳細は『リアル!未公開映画祭』のホームページから
URL: http://www.webdice.jp/realmikoukai/

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