2011-03-19

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[TUP速報899号] 日本の原発奴隷――原子力発電所における秘密
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TUP速報 899号 日本の原発奴隷――原子力発電所における秘密
2011-3-17 6:25:56

原子力発電所は、命がけの清掃作業なしには稼働しない
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福島第一原発の事故現場でいま作業にあたる方々に対して、世界中の人々から
敬意や同情や感謝の言葉が寄せられています。しかし、原子力発電は、こうし
た大事故だけでなく、毎年の定期点検や頻発する小事故の際に、多量の放射能
を浴びて見えないところで作業する人々を常に必要としています。

「美浜の会」のホームページに掲載されているエル・ムンド紙(スペイン)掲
載の記事『日本の原発奴隷』を「美浜の会」の許可を得て配信します。これは
2003年の記事で、日本の原子炉数は52となっていますが、いま稼働してる原子
炉はこの時点から 2機増えて54あります(福島第一を含む)。また、失業者や
ホームレス(原発で働くことを余儀なくされる人々)の数も当時よりずっと多
いでしょう。

自分が明るい夜を送るために、自分が暖かい夜を過ごすために、寿命を縮める
人がいるのは耐えられないと思ったら、どうかぜひ原子力発電の在り方を考え
てください。

わたしたちはいつも必要に応じて新しい技術を作り出してきました。わたした
ちのエネルギー需要を満たすために、原子力発電以外のエネルギー供給を真剣
に考えるときです。水力、風力、日光、太陽熱、メタン、地熱などなど、もっ
とクリーンで、だれも死なないエネルギー産業をきっと新しく興すことができ
ます。

日本の原子力発電産業大手三社と呼ばれる、東芝、日立製作所、三菱重工業の
技術者のみなさん、働くみなさん、原発に代わる技術の開発をぜひ会社に提案
してください。新しいエネルギー産業を興しましょう。

(前書き:藤澤みどり 本文翻訳:美浜の会)
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[調査報告] 日本の原発奴隷
――原子力発電所における秘密――

ダビッド・ヒメネス東京特派員

2003.6.8 エル・ムンド[EL MUNDO]
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日本の企業は、原子力発電所の清掃のために生活困窮者を募っている。多くが
癌で亡くなっている。クロニカ〔本紙〕は、このとんでもないスキャンダルの
主人公達から話を聞いた。

福島第一原発には、常に、もう失うものを何も持たない者達のための仕事が
ある。松下さんが、東京公園で、住居としていた4つのダンボールの間で眠っ
ていた時、二人の男が彼に近づき、その仕事の話を持ちかけた。特別な能力は
何も必要なく、前回の工場労働者の仕事の倍額が支払われ、48時間で戻って来
られる。2日後、この破産した元重役と、他10名のホームレスは、首都から北
へ200kmに位置する発電所に運ばれ、清掃人として登録された。

「何の清掃人だ?」誰かが尋ねた。監督が、特別な服を配り、円筒状の巨大な
鉄の部屋に彼らを連れて行った。30度から50度の間で変化する内部の温度と、
湿気のせいで、労働者達は、3分ごとに外へ息をしに出なければならなかった。
放射線測定器は最大値をはるかに超えていたため、故障しているに違いないと
彼らは考えた。一人、また一人と、男達は顔を覆っていたマスクを外した。
「めがねのガラスが曇って、視界が悪かったんだ。時間内に仕事を終えないと、
支払いはされないことになっていた」。53歳の松下さんは回想する。「仲間の
一人が近づいてきて言ったんだ。俺達は原子炉の中にいるって」。

この福島原発訪問の3年後、東京の新宿公園のホームレスたちに対して、黄
ばんだ張り紙が、原子力発電所に行かないようにと警告を発している。“仕事
を受けるな。殺されるぞ”。彼らの多くにとっては、この警告は遅すぎる。日
本の原子力発電所における最も危険な仕事のために、下請け労働者、ホームレ
ス、非行少年、放浪者や貧困者を募ることは、30年以上もの間、習慣的に行わ
れてきた。そして、今日も続いている。慶応大学の物理学教授、藤田祐幸氏の
調査によると、この間、700人から1000人の下請け労働者が亡くなり、さらに
何千人もが癌にかかっている。

完全な秘密

原発奴隷は、日本で最もよく守られている秘密の一つである。いくつかの国
内最大企業と、おそるべきマフィア、やくざが拘わる慣行について知る人はほ
とんどいない。やくざは、電力会社のために労働者を探し、選抜し、契約する
ことを請負っている。「やくざが原発親方となるケースが相当数あります。日
当は約3万円が相場なのに、彼等がそのうちの2万円をピンハネしている。労
働者は危険作業とピンハネの二重の差別に泣いている」と写真家樋口健二氏は
説明する。彼は、30年間、日本の下請け労働者を調査し、写真で記録している。

樋口氏と藤田教授は、下請け労働者が常に出入りする場所を何度も訪れて回
り、彼らに危険を警告し、彼らの問題を裁判所に持ち込むよう促している。樋
口氏はカメラによって――彼は当レポートの写真の撮影者である――、藤田氏
は、彼の放射能研究によって、日本政府、エネルギーの多国籍企業、そして、
人材募集網に挑んでいる。彼らの意図は、70年代に静かに始まり、原発が、そ
の操業のために、生活困窮者との契約に完全に依存するに至るまで拡大した悪
習にブレーキをかけることである。「日本は近代化の進んだ、日の昇る場所で
す。しかし、この人々にとっては地獄であるということも、世界は知るべきな
のです」と樋口氏は語る。

日本は、第二次世界大戦後の廃墟の中から、世界で最も発達した先進技術社
会へと移るにあたって、20世紀で最も目覚しい変革をとげた。その変化は、か
なりの電力需要をもたらし、日本の国を、世界有数の原子力エネルギー依存国
に変えた。

常に7万人以上が、全国9電力の発電所と52の原子炉で働いている。発電
所は、技術職には自社の従業員を雇用しているが、従業員の90%以上が、社会
で最も恵まれない層に属する、一時雇用の、知識を持たない労働者である。下
請け労働者は、最も危険な仕事のために別に分けられる。原子炉の清掃から、
漏出が起きた時の汚染の除去、つまり、技術者が決して近づかない、そこでの
修理の仕事まで。

嶋橋伸之さんは、1994年に亡くなるまでの8年近くの間、そのような仕事に
使われていた。その若者は横須賀の生まれで、高校を卒業して静岡浜岡原発で
の仕事をもちかけられた。「何年もの間、私には何も見えておらず、自分の息
子がどこで働いているのか知りませんでした。今、あの子の死は殺人であると
分かっています」。彼の母、美智子さんはそう嘆く。

嶋橋夫妻は、伸之さんを消耗させ、2年の間病床で衰弱させ、耐え難い痛み
の中で命を終えさせた、その血液と骨の癌の責任を、発電所に負わせるための
労災認定の闘いに勝った、最初の家族である。彼は29歳で亡くなった。

原子力産業における初期の悪習の発覚後も、貧困者の募集が止むことはなかっ
た。誰の代行か分からない男達が、頻繁に、東京、横浜などの都市を巡って、
働き口を提供して回る。そこに潜む危険を隠し、ホームレスたちを騙している。
発電所は、少なくとも、毎年5000人の一時雇用労働者を必要としており、藤田
教授は、少なくともその半分は下請け労働者であると考える。

最近まで、日本の街では生活困窮者は珍しかった。今日、彼らを見かけない
ことはほとんどない。原発は余剰労働力を当てにしている。日本は、12年間経
済不況の中にあり、何千人もの給与所得者を路上に送り出し、一人あたり所得
において、世界3大富裕国の一つに位置付けたその経済的奇跡のモデルを疑わ
しいものにしている。多くの失業者が、家族を養えない屈辱に耐え兼ねて、毎
年自ら命を絶つ3万人の一員となる。そうでない者はホームレスとなり、公園
をさまよい、自分を捨てた社会の輪との接触を失う。

“原発ジプシー”

原発で働くことを受け入れた労働者たちは、原発ジプシーとして知られるよ
うになる。その名は、原発から原発へと、病気になるまで、さらにひどい場合、
見捨てられて死ぬまで、仕事を求めて回る放浪生活を指している。「貧困者の
契約は、政府の黙認があるからこそ可能になります」。人権に関する海外の賞
の受賞者である樋口健二氏は嘆く。

日本の当局は、一人の人間が一年に受けることが可能である放射線の量を
50mSvと定めている。大部分の国が定めている、5年間で100 mSvの値を大きく
超えている。理論上、原子力発電所を運営する会社は、最大値の放射線を浴び
るまでホームレスを雇用し、その後、「彼らの健康のために」解雇し、ふたた
び彼らを路上へ送り出す。現実は、その同じ労働者が、数日後、もしくは数ヵ
月後、偽名でふたたび契約されている。そういうわけで、約10年間、雇用者の
多くが、許容値の何百倍もの放射線にさらされている説明がつくのである。

長尾光明さんは、雇用先での仕事の際に撮られた写真をまだ持っている。写
真では、彼は、常に着用するわけではなかった防護服を着ている。病気になる
前、5年間働いた東電・福島第一原発で、汚染除去の作業を始める数分前にとっ
た写真である。78歳、原発ジプシーの間で最も多い病気である骨の癌の克服に
励んで5年を経た今、長尾さんは、原発を運営する会社と日本政府を訴えるこ
とに決めた。興味深いことに、彼は、契約されたホームレスの一人ではなく、
監督として彼らを指揮する立場にあった。「大企業が拘わる仕事では、何も悪
い事態が起こるはずはないと考えられてきました。しかし、これらの企業が、
その威信を利用し、人々を騙し、人が毒される危険な仕事に人々を募っている
のです」と長尾さんは痛烈に批判する。彼は、許容値を超える大量の放射線に
さらされてきたため、歩行が困難となっている。

30年以上の間、樋口健二氏は、何十人もの原発の犠牲者の話を聞き、彼らの
病を記録してきた。彼らの多くが瀕死の状態で、死ぬ前に病床で衰弱していく
様子を見てきた。おそらくそれ故、不幸な人々の苦しみを間近で見てきたが故
に、調査員となった写真家は、間接的にホームレスと契約している多国籍企業
の名を挙げることに労を感じないのだ。東京の自宅の事務所に座り、紙を取り
出し、書き始める。「パナソニック、日立、東芝…」。

広島と長崎

企業は、他の業者を通してホームレスと下請け契約をする。労働者の生まれ
や健康状態などを追跡する義務を企業が負わずにすむシステムの中で、それは
行われている。日本で起こっている事態の最大の矛盾は、原子力を誤って用い
た結果について世界中で最も良く知っている社会の中で、ほとんど何の抗議も
受けずに、この悪習が生じているということである。1945年8月6日、アメリ
カ合衆国は、その時まで無名であった広島市に原子爆弾を投下し、一瞬にして
5万人の命が失なわれた。さらに15万人が、翌5年間に、放射線が原因で亡く
なった。数日後、長崎への第二の爆弾投下により、ヒロシマが繰り返された。

あの原子爆弾の影響と、原発の下請け労働者が浴びた放射線に基づいて、あ
る研究が明らかにしたところによると、日本の原発に雇用された路上の労働者
1万人につき17人は、“100%”癌で亡くなる可能性がある。さらに多くが、
同じ運命をたどる“可能性が大いにあり”、さらに数百人が、癌にかかる可能
性がある。70年代以来、30万人以上の一時雇用労働者が日本の原発に募られて
きたことを考えると、藤田教授と樋口氏は同じ質問をせざるをえない。「何人
の犠牲者がこの間亡くなっただろうか。どれだけの人が、抗議もできずに死に
瀕しているだろうか。裕福な日本社会が消費するエネルギーが、貧困者の犠牲
に依存しているということが、いつまで許されるのだろうか」。

政府と企業は、誰も原発で働くことを義務付けてはおらず、また、どの雇用
者も好きな時に立ち去ることができる、と確認することで、自己弁護をする。
日本の労働省の広報官は、ついに次のように言った。「人々を放射線にさらす
仕事があるが、電力供給を維持するには必要な仕事である」。

ホームレスは、間違いなく、そのような仕事に就く覚悟ができている。原子
炉の掃除や、放射能漏れが起こった地域の汚染除去の仕事をすれば、一日で、
建築作業の日当の倍が支払われる。いずれにせよ、建築作業には、彼らの働き
口はめったにない。大部分が、新しい職のおかげで、社会に復帰し、さらには
家族のもとに帰ることを夢見る。一旦原発に入るとすぐ、数日後には使い捨て
られる運命にあることに気づくのである。

多くの犠牲者の証言によると、通常、危険地帯には放射線測定器を持って近
づくが、測定器は常に監督によって操作されている。時には、大量の放射線を
浴びたことを知られ、他の労働者に替えられることを怖れて、ホームレス自身
がその状況を隠すことがあっても不思議ではない。「放射線量が高くても、働
けなくなることを怖れて、誰も口を開かないよ」。斉藤さんはそう話す。彼は、
「原発でいろんな仕事」をしたことを認める、東京、上野公園のホームレスの
一人である。

原発で働く訓練と知識が欠如しているため、頻繁に事故が起きる。そのような
事故は、従業員が適切な指導をうけていれば防げたであろう。「誰も気にして
いないようです。彼らが選ばれたのは、もしある日仕事から戻らなくても、彼
らのことを尋ねる人など誰もいないからなのです」と樋口氏は言う。一時雇用
者が、原発の医療施設や近くの病院に病気を相談すれば、医者は組織的に、患
者が浴びた放射線量を隠し、“適性”の保証つきで患者を再び仕事に送り出す。
絶望したホームレスたちは、昼はある原発で、夜は別の原発で働くようになる。

この2年間、ほとんど常に藤田、樋口両氏のおかげで、病人の中には説明を
求め始めた者達もいる。それは抗議ではないが、多くの者にとっての選択肢で
ある。村居国雄さんと梅田隆介さん、何度も契約した末重病にかかった二人の
原発奴隷は、雇用補助の会社を経営するヤクザのグループから、おそらく、殺
すと脅されたために、それぞれの訴訟を取り下げざるをえなかった。

毎日の輸血

大内久さんは、1999年、日本に警告を放った放射線漏れが起きた時、東海村
原発の燃料処理施設にいた3人の労働者の一人である。その従業員は、許容値
の1万7000倍の放射線を浴びた。毎日輸血をし、皮膚移植を行ったが、83日後
に病院で亡くなった。

労働省は、国内すべての施設について大規模な調査を行ったが、原発の責任
者はその24時間前に警告を受けており、多くの施設は不正を隠すことが可能で
あった。そうであっても、国内17の原発のうち、検査を通ったのはたったの2
つであった。残りについては、最大25の違反が検出された。その中には、労働
者の知識不足、従業員を放射線にさらすことについての管理体制の欠如、法定
最低限の医師による検査の不履行なども含まれた。その時からも、ホームレス
の募集は続いている。

松下さんと他10名のホームレスが連れて行かれた福島原発は、路上の労働者
と契約する組織的方法について、何度も告発されている。慶応大学の藤田祐幸
教授は、1999年、原発の責任者が、原子炉の一つを覆っていたシュラウドを交
換するために、1000人を募集したことを確認している。福島原発での経験から
3年後、松下さんは、「さらに2、3の仕事」を受けたことを認めている。そ
の代わり、彼に残っていた唯一のものを失った。健康である。2、3ヶ月前か
ら髪が抜け始めた。それから吐き気、それから、退廃的な病気の兆候が現れ始
めた。「ゆっくりした死が待っているそうだ。」と彼は言う。

―――*―――*―――*―――
この新聞は、インタビューを受けられた樋口健二氏より提供された。記事の訳
内容の一部は、樋口氏によって訂正されている。なお、原文では、写真は全て
カラーで掲載。(訳責:美浜の会)

―――*―――*―――*―――
「美浜の会」のホームページには証言者の写真も掲載されています。
http://www.jca.apc.org/mihama/rosai/elmundo030608.htm

「美浜の会」のHPには日本の原発に関する情報が多数の掲載されています。
あわせてご覧ください。
http://www.jca.apc.org/mihama/index.html

原文:
INVESTIGACION / EL SECRETO EN LAS PLANTAS ATOMICAS
Mendigos, esclavos nucleares en Japon
http://www.elmundo.es/cronica/2003/399/1055060977.html
(スペイン語スピーカーにはこちらのリンクをどうぞ)

本速報は、TUPウェブサイトに掲載されています。
http://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=931

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TUP速報 http://www.tup-bulletin.org/
配信責任者:坂野正明

TUPへの問い合わせ:
http://www.tup-bulletin.org/modules/main/index.php?content_id=8
過去の TUP速報:
http://www.tup-bulletin.org/modules/contents/

■『冬の兵士──イラク・アフガン帰還米兵が語る戦場の真実』
(TUP翻訳、岩波書店、2009年8月発売)
http://www.tup-bulletin.org/modules/main/index.php?content_id=32
■『ガザ通信』
(岡 真理、TUP翻訳、青土社、2009年3月発売)
http://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?tag=%E7%A9%BA%E8%A5%B2%E4%B8%8B%E3%82%AC%E3%82%B6%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E5%A0%B1%E5%91%8A
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キーワード:

原発 / 被曝 / 原発ジプシー


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