2011-06-29

『ミラル』クロスレビュー:愛と教育が築く平和 このエントリーを含むはてなブックマーク 

 映画の冒頭にアラブ、ユダヤ、イギリスと国籍・宗教の異なる人々が一緒になってホテルでクリスマスを祝うシーンがあります。イスラエルの建国が宣言され、現在まで続くパレスチナ問題が起こる以前のこのシーンはとても印象的でした。

 主人公はミラルというアラブの女性ですが、もう一人、ヒンドゥ・ホセイニという女性が登場します。彼女はイスラエル軍の侵攻によって、孤児となった子供達を引き取り、私財をつぎこんで学校を作ります。平和を、そして未来を築いていくのは子供達であり、それは武器や暴力ではない、彼らに必要なのは教育と愛であるという信念の基に学校を運営していきます。

 ミラルはこの学校の生徒ですが、武器と暴力が支配する現実を目の当たりにして政治活動にのめりこんでいきます。その結果、友人を失い、自らも危険な目にあうことになります。そんな彼女を救ったのは彼女の父親の愛でありヒンドゥの愛でした。

 和平合意が結ばれてから10年以上が過ぎた今もいまだに和平は実現していません。映画もそのことを伝えるテロップで終わります。しかし、このラストシーンから感じたのは清々しさと希望でした。愛と教育で平和を実現するということは簡単ではなく時間がかかるかもしれません。しかし、ヒンドゥのもとから信念を受け継いで旅立った子供達が、わずかづつでも平和への道を築いてくれることを期待したい、そう思いました。

 映画の中でミラルの従兄(アラブ)の彼女(ユダヤ)が言います。「アラブでもユダヤでも関係ない。彼は私に優しいし、何よりも私を愛してくれる。」
 再び国籍や宗教の区別無くすべての人が一緒にクリスマスを祝うことができる日が来ることを願いつつ会場を後にしました。

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ぶん

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