2011-07-02

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2011年06月30日
原発震災 ー 日本メディアは西洋よりも真実を伝えているか
「<ロンドンSW19から>より
http://newsfromsw19.seesaa.net/article/212784550.html

関東在住のアイルランド人ジャーナリスト、ディヴィッド・マクニールさんが CNN International のウェブサイトに寄稿した記事に和訳がついた。「誰が福島原発事故の真実を伝えたか ー 日本メディアは西洋よりも真実を伝えていると果たして言えるのか」という記事だ。オリジナル(英語)は6月15日に掲載されていて、すでにどっさりコメントがついている。

地震発生からほとんど毎日、マクニールさんが東京や被災地から書き送る記事をインディペンデント紙で読んでいた。長い記事、エモーショナルな記事が多く、読みながらよく泣いた。

インディペンデントはイギリスの高級紙のひとつで(わたしの長年の愛読紙でもあり)、3月13日日曜日の朝刊の1面を全部使って日の丸と日本語のコピーを掲載したのを見た時は胸がいっぱいになった(そして泣いた)。

がんばれ、日本。
がんばれ、東北。

http://www.asahi.com/international/update/0313/TKY201103130283.html
ニュースエージェントの店頭で当日のインディペンデントを持つその店の看板娘(だと思うよ、ニュースエージェントはインド亜大陸系移民が経営していることが多いので)の映った写真と朝日新聞の記事。

マクニールさんは地震以前も、日本の新聞でもめったに書かないようなディープな日本の問題をきめ細かい取材に基づいてしばしば報じていた。辺野古に座り込むおじいおばあのこと、元日本軍捕虜をビルマにまねく活動をしていた元日本軍通訳の永瀬隆さんのこと(つい先きごろ亡くなった)、石原慎太郎が築地市場を移転すると豪語する豊洲の毒性のこと、皇太子妃雅子さんの苦境など、みんなマクニールさんの長編レポートで読んだ。

CNN Internatipnalのこの記事も、日本をよく知るマクニールさんがもう黙っていられない気持ちで書いたのだろう。

あのとき、日本のテレビがどのように震災を報じていたかをわたしは知らないので想像するしかないのだが、当時ユーストリームで無料公開されていたNHKの報道を見る限りでは、わたしには英国BBCやチャンネル4やアルジャジーラ・イングリッシュやロシア・トゥデイのほうが、知らせるべきことを知らせ、見せるべきものを見せていた気がする。

誰が福島原発事故の真実を伝えたか
ー 日本メディアは西洋よりも真実を伝えていると果たして言えるのか
(抜粋)

デイヴィッド・マクニール
By David McNeill 30 June, 2011 CNN-GO
http://www.cnngo.com/ja/tokyo/life/TMAI/david-mcneill-whos-telling-truth-fukushima-meltdown-222708

福島第一原発に対する政策や規制、技術など、一連に渡る批判的意見が飛び交っている。メディアはいち早く自省をし始めたものの、決して美しいとは言えない。

Newsweek Japan は、惨事の中、「自らのミッションを遂行できなかった」として、過激な外国人レポーターを批判した多くの出版会社の 1 社である。

Newsweek によれば、ジャーナリストの中には逃げ出したものもおり、その多くが機能不全に陥った原発に過剰反応し過ぎていると伝えている。

鼻息の荒い外国人記者は、そういった槍玉に挙げられやすい。(略)

そんな中、日本の新聞紙やテレビ記者達は、冷静さを保っていたものの、原発内部で起こっている事実関係の隠蔽や情報開示に遅れがあったことは事実である。

中でも、福島原発を取材した地元メディアの報道から、「メルトダウン」という言葉がすっぽり抜け落ちていた事実は注目に値する。(略)。

「言葉を伝えるメディアにブラックアウトが起こっていたと言えるでしょう。」と、今月、外国人記者クラブの雑誌『No.1 Shimbun』の取材に答えた秋山氏は話している。(略)新聞やテレビが、「メルトダウン」という言葉を発するまでに 2 ヶ月以上もかかっている。一体これはなぜだろう?

大手新聞社やテレビ局で構成される日本の記者クラブのシステムは、政府や TEPCO、原子力安全・保安院から直接開示される情報を脚色して伝えているに過ぎない。 与えられた事実に基づき、非常に規律のとれた、表面的でイマイチはっきりしない情報が公表されていたということだ。

さらに、多くの記者は、独自に最悪の事態を結論付けるべきであるにも関わらず、原発内部の状況を推測することを躊躇っていたのだ。

日本のレポーターには、東京という人口過密地帯でパニックが発生することを避ける責任があったと話す人もいる。(略)

とは言え、単に誇張しなければ、メディアはその責任を果たしていると言えるのだろうか?事実の隠蔽や、情報開示の遅延、曲解は、メディアの責任に当たらないのだろうか?

(略)

読者は、穏やかな生活を送るために事実を知らされないことに対し、自問自答すべきだ。

先日、日本人フリーランサー上杉隆氏は、メディアに対し、もっと違った対応が取れたのではないかと意見を述べた。「最悪のシナリオを想定し、記事にして、さらに、それに関連する現在を追加する方法が、原発状況に関する正しい報道の仕方と言えるでしょう。」と彼は言う。

(略)

新聞やテレビとは反対に、3 月以降、日本の雑誌は危機感があり、抑制がなく、情報を伝える世界一の出版物であったと言えるだろう。 『週刊新潮』は、TEPCO の管理陣を「戦犯」と呼び、『週刊現代』は、関村教授やその他の原子核科学者を「とんちんかん」だと伝えた。

(略)

公共監視機関である新聞やテレビニュースは、最新の情報をタイムリーに伝えるべきではないだろうか?

こういった一連の問題に対し、まっさきに噛み付いたのは外国ジャーナリズムであった。

(略)

日経広告研究所によると、日本の電力業界は、年間に 880 億円も広告事業に費やしている日本最大の広告主である。

TEPCO 単独でも年間 244 億円を費やしている。(略)お金の使われ方を見つけ出すことがジャーナリストの仕事ではないだろうか。

***

表紙に「放射能が来る」と大書きした『AERA』を批判したり笑ったりした人たちは、それが誇張でもアオリでもなんでもない「正しい危機感」であっただけでなく、残念なことに、「冷厳たる事実」でさえあったことがわかったいま、何を語るのだろう。

どんな言葉を語るにせよ、まず、自らの間違いを認識し、反省し、できれば間違った非難をしたことを謝罪すべきと思うが、もうだれかそうした言葉を口にしただろうか。善悪を決めようというのではなく、単にマナーとして。

http://getnews.jp/archives/105688
『AERA』の「風評被害をあおるけしからん表紙」と『週刊ポスト』の「日本人の情緒と倫理観に訴える高潔な表紙」を比較対照する写真と記事。単なるサンプルとして(この記事そのものは『AERA』を非難していないし)。

それにしても、なんの情報開示もないなかで、ポストは日本の何を信じようとしたのだろうか。

取り上げた記事の全文およびその他の情報はブログ「ロンドンSW19から」でお読みください、
http://newsfromsw19.seesaa.net/article/212784550.html

キーワード:

原発震災 / 報道


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藤澤みどり

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藤澤みどり

“英国在住の文化ウォッチャー、芸術とお酒と政治好き。ブログ「ロンドンSW19から」http://newsfromsw19.seesaa.net/”


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