2011-07-26

不正に抗う気概を共に育む——「レイバー映画祭2011」—— このエントリーを含むはてなブックマーク 

 先週台風が来てから関東もグッと過ごし易くなり、夜もよく眠れ、個人的にはとても助かっています。

 先週末田町で開催されたレイバー映画祭2011に参加してきました。なかなか観るチャンスのない作品が7本も観れて前売り・予約だと1300円と、僕のような貧乏人には大助かり。会場のホールもトイレも清潔でした。

 上映作品は上映順に、
 『ハードレイン——パンドラの箱からふりそそぐ放射能——』(監督:デビッド・ブラッドベリー、2007年、オーストラリア?)
 『世界は恐怖する——死の灰の正体——』(監督:亀井文夫、1957年)
 『反原発デモ映像ダイジェスト』(製作:レイバーネット、2011年)
 『(仮題)子どもたちを守れ!——福島の闘い——』(監督:湯本雅典、2011年)
 『返品歓迎』(製作:韓国民主労総、?年、韓国)
 『ごみと格闘する人々——日韓清掃労働者交流の記録——』(製作[監督?]:高幣真公/[撮影?]山崎精一、2011年)
 『コカコーラ・ケース——多国籍企業の犯罪——』(監督:カルメン・ガルシア、2009年、カナダ)。

 最初の『ハードレイン』と最後の『コカコーラ・ケース』は日本初公開とのこと。
 
 各作品の詳細は下記のURLを参照して下さい。

 http://www.labornetjp.org/news/2011/0723annai

 http://unionyes.exblog.jp/
  
 各々の作品について個人的に印象に残ったことを少しずつ。

 『ハードレイン』
 ウランの採掘自体が、放射線量の上昇をはじめとする深刻な環境破壊を引き起こし、鉱山労働者は勿論、周辺住民の健康を脅かすという、抽象的な知識としてしか知らなかったことを、リアリティを持って疑似体感出来た。
 ただしその日はかなりの寝不足で、上映時間が、普段は未だ寝ているか、ようやく起き出す時間だったため、集中して観賞出来なかったせいか、作品全体としての印象は薄い。

 『世界は恐怖する』
 1950年代の米ソの核実験により放出された放射線が、関東地域の大気や地表の放射線量を著しく上昇させていることを、様々な研究機関の協力を得て、科学的・実証的に明らかにした作品。しかし当時未だ日本には原発はなく(日本語版Wikipediaによれば、日本で最初に原子力発電が行われたのは1963年)、当時の放射線は全て遠く海外からやってきたものだった。それゆえに3.11に現在進行中の大事故が起きる以前でも、日本の大気や土壌の放射線量は、全国に18ヶ所、54基もあった原発により、本作で描かれているのとは比べ物にならない程、上昇していたのだろう。そんな状況の中で平然と暮らしていたかと思うと、改めてゾッとする。

 金魚の卵にコバルトを浴びせる実験の結果生まれた、双頭をはじめとした奇形の金魚の稚魚達の姿はショッキングだったし、それ以上に広島と長崎で被曝した女性から生まれた、奇形の胎児のホルマリン漬けは衝撃的だった。身体が完全に癒着した双子、一つ目、無脳症、生物の身体とは思えない肉の固まり…。

 『反原発デモ』
 何よりもデモ隊の姿を周囲から隠そうと奮闘し続ける警官隊の様子が、腹立たしいと同時に哀れ。警官達もまた、このネオリベ社会では、上からの命令に服従しなければ生きていけないのだと思い込まされているのかもしれない。その意味では警官達は共犯者であると同時に被害者なのだろう。

 『子どもたちを守れ!』
 福島第一原発の事故によって排出された放射線の影響を矮小化し、放射線に対する国民のセンシビリティを下げようと躍起になっている日本政府は、チェルノブイリ事故当時のソ連政府以下と評されている。子ども達を守ろうと、この日本政府の棄民政策と必死の形相で闘う福島の親達の姿を追った小品。上映後の湯本監督が紹介してくれた、事故直後よりも下がったとは言え、依然放射線を恐れて子どもが公園に来ない郡山市の球場で行われる巨人ーヤクルト戦を、巨人のシンボルカラーであるオレンジのタオルで埋め尽くそうと、福島の地域紙が呼びかけていたというエピソードは、政府とその取り巻きの「努力」がそれなりに「成功」していることの証しなのか…。

 『返品歓迎』
 日本でも韓国でも派遣労働者は「モノ」でしかないという実態を赤裸々に暴き出した人形アニメ。

 『ごみと格闘する人々』
 『返品歓迎』を観て絶望的な気分になっているところに、そのような現状から脱することが出来るのは、働く者同士の連帯とそれに依拠した粘り強い交渉を通じてだけなのだということを訴える作品だった。

 『コカコーラ・ケース』
 コロンビアで殺害・誘拐など手段を選ばず組合潰しを行うコカコーラとの闘いを続ける、同国の組合員達と米国の活動家・弁護士達の姿を追ったドキュメンタリー。苦情を訴え要求をぶつけ、納得のいくまで交渉し続けることの技能を学ぶ必要性を改めて痛感させられた。また連帯の必要性も。と言うのも本作の登場人物達も、仲間がいなければ巨大企業と闘い続けることなど出来なかっただろうから。

 レイバー映画祭は例年7月〜8月の土曜日に行われているよう。非常に安価に見応えのある作品がまとめて観られるので、興味のある方は是非。僕も来年も参加したいと思っています。

 行きも帰りも節約のため渋谷駅まではウォーキングだったので、寝不足もあって身体的には結構疲れました。帰宅後シャワーを浴びてサッパリしてから、トマトの缶詰を使った自作のパスタを食べながら、のんびりワイン。日曜日は昼前までゆっくり寝ていました。

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知世(Chise)

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知世(Chise)

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