2011-11-12

デジタルシネマの問題について このエントリーを含むはてなブックマーク 

facebookの『独立系映画事業者ネットワーク(仮)』というグループに投稿したものを転載します。
重複した事を書いていますが、投稿順に載せました。

DCI(Digital Cinema Initiatives)というのは、ハリウッドが決めたデジタルシネマに関する技術統一の仕様です。

DCPというのは、デジタル・シネマ・パッケージで上記のDCI準拠のサーバーで上映されるための上映フォーマットでJPG2000で、24Pというビデオとは違うフォーマットです。現在は2Kが標準ですが、将来は4Kの画質になる予定らしい。

VPFというのは、ヴァーチャル・プリント・フィーといって、配給会社は35ミリプリントを作らんくてもいいのだから映画館のデジタルシネマの機材で上映される際に、使用料をプリント代より安く頂戴ねというシステムです。7〜9万円位で、各社上映初日から時間が経つと安くなる計算式があります。

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具体的、現実的な話です。

1)ハリウッドメジャーがKDM発行のサーバーだけどノンシネリンクというDCI準拠でない映画館にも上映を許可するとしたら、ミニシアターはVPFによるサービサーのシステムを入れずに、既存のプロジェクターにDCPサーバーを繋げばいい。コストは150万円以下。これを推奨します。

であれば『第九地区』も上映できるし、ハリウッド系もVPFを払わなくてもいいので、売上の小さな映画館に上映許可をだすのでは。

誰かメジャー系に務める人、知り合いのいる人この件確認してほしいです。

さらにこのシステムなら名画座も生き延びれる!

技術的に勉強して、DCI準拠でなくても鍵(KDM)はかけられるし、セキュリティの問題はないということをアピールして、既存のシステムと組み合わせるべき。

2)別問題として、独立系配給会社はデジタル化の件で、仲間を募り、VPFの料金で団体交渉をすべき時。

また、映画館、及び独立系配給会社へのVPFの補助金を行政に働きかける時。わかりにくい業界の問題だが世論に訴える必要もあると思う。

3)DCI準拠のDLPプロジェクターはNECが一番小さくてスクリーンの横幅14メートルとミニシアターにはオーバースペック。プロジェクターメーカーは大半が日本の会社なので、200万円くらいでスクリーン最大横幅8メートルくらいのDCI準拠のプロジェクターを開発してほしい。

(1)で言ったように、サーバーは150万円以下、これなら350万円の出費で映画館をデジタル化できる。しかもDCI準拠で。シネコンだってキャパ60のところもあるのだから、オーバースペックのものが相当導入されているのが現実。結局、映画館のデジタル化で利益を上げているのはサーバーメカーと、プロジェクターメーカー。それとオリックスなどのファンドかな。

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ようするに、モノクロに色が付き、モノラルがサラウンドになったように、技術は進歩する。デジタルシネマ化は避けられない現実、これに反してフィルムを守るというのは伝統芸能を保存するような行為。

ただ、技術の進歩を受け入れる事と、ハリウッドの技術基準を押し付けられることは別問題。
電気の発電と送電の分離では無いけど、

「サーバーとプロジェクターを分離して、経済的自由を独立系映画業界人は手に入れなければならない!」

なんてね。

サーバーはDCI準拠のサーバーで、プロジェクターは業務用か民生器で画質の追い込みをしてDCI準拠より上の品質を目指す、という提案です。

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DCI準拠は、セキュリティの問題と技術的統一の問題とするなら、DCI準拠のプロジェクターでも定期的に色補正をしないものとDCI準拠でないプロジェクターで色補正したものでは後者の方がいいように思うが、サーバーはDCI準拠のDCPサーバーであることが前提ですが。

反デジタルシネマ、脱デジタルシネマでなく、脱DCI準拠という選択を今迄だれも考えていないがセキュリティ的にも脱DCI準拠でもKDMは、発行できるので問題ない。

VPFを配給会社に強いない、脱DCI準拠の既存のプロジェクター(フルHD対応=2K)とDCPサーバーの導入をミニシアターは検討すべき。150万円以下でできます。というかそれしか生き延びる選択肢はないように思います。

すでに1スクリーンを経産省の助成でデジタルシネマ化したところも、残りのスクリーンのデジタルシネマ化はこのシステムでお願いしますと配給会社の意見です。

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デジタル化はコストが削減できる。これは事実です。

サーバー、プロジェクターあわせて1500万円のものをキャパ500人の劇場に導入するならまだしも、キャパ100人の劇場には完璧にオーバースペック。大体ソニーの4Kのプロジェクターなんて大きすぎてミニシアターには無理。

映画館の皆さん惑わされないで下さい。サーバーさえDCPに対応していれば、プロジェクターは今使っているもので十分です。もちろんフルHD対応は必須ですが、今それをお持ちなら問題ありません。

決してデジタルシネマ化は高くありません。DCPサーバーを150万以下で購入するだけで、今後のデジタル化に対応できます。

映画館に知識が無いと思って、高価な機材を導入しないとデジタル化に乗り遅れるとおどされて、地方のミニシアターがVPFを配給会社に強いるシステムを導入したら終わりです。

サーバーとプロジェクターは別に考えて下さい。

今あるプロジェクターを利用して下さい。
地方の映画館でVPFがかかったら配給会社は作品を出せなくなります。
映画館の皆さんよく考えて下さい。

もう一度繰り返しますが、今後映画配給の素材はフィルムではなく、ブルーレイでもなく、DCPになります。その際、DCPサーバーは映画館には必須となります。

そのコストは150万円以下で買う事ができます。プロジェクターは今使っているものを使用して下さい。設備投資はそれだけです。DCPサーバーにはKDMの鍵もついています。KDMをかけるという配給会社の作品にも対応できます。VPFは必要ありません。

もう一度言います、経産省の助成で1スクリーンに立派な機材をいれた映画館で複数のスクリーンがある劇場の方、残りはDCPサーバーの導入は必要ですが、プロジェクターは既に設置してあるならそれを使用して下さい。新しく設置するならフルHDの手頃なプロジェクターを設置して下さい。そして画質の追い込みをして下さい。このやりかたで150万円以下の投資でプロジェクターも買うなら100万円もしません、その投資でデジタルシネマはできます。

映画館、ホール運営の方、名画座の方質問があればお答えします。

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僕は、専門家ではないのですがアップリンクの配給そして小さな映画館の経営のために、生き残るために、関係者の方に会って得た知識です。

多少の間違いあるかもしれませんがご指摘頂けたらと思います。

DCPサーバーと、DCI準拠のプロジェクターを繋ぐには2本のケーブルがあります。1本は映像用、1本はセキュリティ用です。凄く簡略化してますがこれでいいはずです。(間違っていたら教えて下さい)そのセキュリティ用はシネリンクという名称で、サーバーとプロジェクターの間で常に信号のやり取りをしています。ようするに映像信号を録画機などにつなぐと、この信号のやり取りで判明してしまい、録画を阻止します。

で、DCPサーバーだけを導入して、既存のプロジェクターに繋ぐときはアダプター(15万円位)が必要です。シネリンクは繋ぎません。そうすると、原理的には映像信号のケーブルを録画装置に繋げるとダビングできます。

原発の問題と同じで、DCI準拠では機械的なセキュリティが技術的に保証されています。しかし、原発での人のミスによる事故は防ぎようがありません。それと同じで映写室に悪意をもった者がいるとすれば、というか僕がギャングなら、まずDCPサーバーからでている映像信号を普通のプロジェクターで使用できるように先程述べた変換できるアダプターを15万円ほどで購入します。それで、映写室に忍び込み、DCI準拠のプロジェクターへ繋がっているケーブルをアダプターに繋ぎ、その先にハードディスクレコーダーをつなぎ映像を盗みます。
音声は、アンプから盗みます。

いいたいことは、悪意があれば、どんなセキュリティでも盗めるという事。

で、現実的問題です。地方の映画館でハリウッドのメジャー作品も上映しているというところは、配給会社がKDMはマストだが、シネリンクはなくてもいいというということなら、僕が提案している250万円でデジタルシネマ化できるということです。

多分、シネリンクまで知っている人は配給にはいないと思うので、KDMを発行をすれば、配給は、ああ、デジタルシネマ化されていると思い、作品を出してくれると思います。

DCI準拠は、シネコンサイズの映画館の基準です。スクリーンが横幅最低20メートルはあるような映画館の基準です。日本のミニシアターのサイズは想定していません。
なので、高い機材を導入するしかないのです。

皆さんが、シネコンの経営者だとします。1スクリーン仮に1000万円かかるとして、1サイトに何スクリーンあるのか、そして自社のサイトは全国いくつあるのか、ハリウッドは作品はDCPになるし、全国で数百スクリーンをデジタル化する投資はしたくない。数十億になります。そこで発明されたのが、配給に負担させるVPFです。

ソニーは自社のサーバー&プロジェクターを売りたい、4K対応なので将来も安心です。でもちょっと他社より明るさが暗いので、対応したスクリーンの張り替えは、映画館負担でお願いします。所有権はソニーとしますので、シネコン様には経済的負担は強いません。VPFというリース料を配給会社が払う仕組み。

香港ベースのGDCはサーバーメーカーなので、サーバーを売りたい。プロジェクターはウシオの子会社であるクリスティ製。ソニーとは違い、所有権は映画館にあります。映画館への販売はウシオの子会社ジーベックスが行います。メンテナンスも請け負います。配給会社との交渉はGDCが行う。ジーベックスが映画館にGDCのサーバーと自社クリスティの映写機を売り、メンテナンスを独占する。さらにVPFという上納金を配給からお金を集めるので、毎月VPFの売上をGDCは映画館様に支払うので、購入していただいても損はさせませんよという商売。

ブロードメディアは、メーカーではないので、純粋にVPFを商売として考えているのではないでしょうか。初期投資はオリックスがお金を出します。オリックスはきちんとVPFで儲けさせていただきます。ブロードメディアはVPF回収業者でいいのかな。機材の所有権は映画館にあります。まあ、カラーコピー機を映画館に設置してもらい、コピーの使用料は配給会社が払うというのが、ブロードメディアの方も認めていましたが分かりやすい例えではないでしょうか。メーカー系2社より、VPFが安いのは、独立系配給会社の作品の方が上映期間が短く、年間でVPFを考えるとブロックバスター作品を2ヶ月上映しても1VPF、2週間のアート系の作品でも1VPFということで、数で稼げば、VPFの総収入はいけると計算したのでしょうか。メーカー系より乗り遅れたので、残っている小さなところにカラーコピー機をいれるしかないのでそうなったいうこともあると思います。

勘違いしないで下さい、僕は、VPF商売を敵視しているのではありません。シネコンンに一気にデジタルシネマを導入するために、製作配給のハリウッドのスタジオと劇場とサービサーと言われる会社の間で作られたシステムという事をまず理解しなければならないと言う事です。

このシステムは、小さな1〜3スクリーンの映画館や、全国で50館以下の順次公開する配給会社を想定していないということも理解する必要があるという事です。

ミニシアター系の映画館の皆さん知識を持って下さい。
このままでは、訪問販売で、暖かい、健康にいいからと羽毛を布団を買わされた老人になってしまいます。羽毛布団でなくても、綿の布団でも、きちんと日干しをすれば死ぬ迄幸せに眠る事ができます。皆さん、よく考えて下さい。

なので、繰り返しますが、DCPサーバーの導入、既存のプロジェクターを利用。
あとは、スタッフの教育の徹底。ここが一番重要だと思います。シネコンのアルバイトよりもうちの映写スタッフはセキュリティの問題では教育をしているので安心して下さいということが重要です。

ミニシアター系映画には上記の提案で設備を導入してもらい、別問題として配給会社がシネコンで上映するときのVPFの問題があります。
特に少ないスクリーン数で上映する時のVPFの問題は、皆で話し合い、まとまって交渉する問題だと思います。

最後に、某サービサーから聞いた驚愕の話では、ハリウッドもVPFを払いたくないと言っているところもあるらしいです。フィルムよりデジタルが安いと言われてその差額を計算してVPFを納得していたのですが、プリントが時代が終わり、全部DCPになれば、その差額なんて論理は関係ないじゃんということらしいです。

TPPもVPFも交渉を恐れない(参加=アメリカの意見を飲むという事らしいので議論されていない状態での参加には反対ですが)というかアメリカに押し付けられて考えるのではなく、自分たちの頭で考えて、自分たちに有利なシステムを作る事が必要だと思います。

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ようするになんで僕が、DCPサーバーと既存のプロジェクターを薦めるかというと、アップリンクの映画館にはその選択肢しかないからです。

理由は、アップリンクは元々デジタル専用の映画館で映写室がない。天吊りのプロジェクターを場内に設置している。デジタルシネマのプロジェクターは欲しくても設置する場所が無いのです。民政器でもソニーから4Kのプロジェクタも出たし、うちのスクリーンが120インチなので、民生器で十分という劇場の大きさだからです。

NECのデジタルシネマのプロジェクターが一番小さいけど、横幅14メートルのスクリーン迄に対応、アップリンクのスクリーンは横幅2.7メートル、ユーロスペースでヨーロピアンビスタで4.8メートル、ようするにはなからDCI準拠のプロジェクターはこのサイズの映画館を全く想定していないのです。

くどいようですが、映画館やホールでデジタルシネマ化を検討している方は、DCPサーバー、既存のプロジェクターでお願いします。

VPFをかけられると、配給サイドは作品を供給できなくなります。アップリンクでももう、そういうことは起き始めています。

例えば、今、『ポール・マッカートニー』の映画を12月に公開しますが、VPFがかかる映画館で売上が20万円を絶対見込めない場合は、ブッキングできません。

緊急限定上映なので夜1回、2〜3週を提案しています。仮に興収20万円で配収10万円としましょう。それでVPFを9万円支払うと、手残りが1万円。もし興収が17万円だったらVPFで赤字になります。夜1回の上映で2週間、20万円以上あがる劇場が地方にどれくらいありますか。

VPFをとるシステムだとこのように配給はその映画館にはブッキングできなくなります。
映画館の皆さん、本当に良く考えて下さい。映画館と配給会社が生き残るために。

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浅井 隆

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