2012-03-21

ドイツ公共放送ZDF『フクシマの嘘』が描くあり得る未来 このエントリーを含むはてなブックマーク 

<まえおきが長いので、本題に急ぎたい方は次の米印以降にお進み下さい。もっと急ぐ方は一番下まで一気にどうぞ>

ロンドンはいまぐらいの季節がとてもいい。3月は例年気温の高低が激しく、強い風の吹き荒れる日もあるので気候はベストとは言えないけれど、春分の日に向かって毎日目に見えて昼の時間が長くなる。鳥の声が早朝からそこらじゅうで聞こえ、桜が咲き始め、暗い冬の後の開放感が一気にやってくる。

とは言え、この冬はほんとうに雨が少なくて雪もたいして降らず、まるで関東の冬のように乾燥していた。そのせいで早々とホースバン(ホースの使用禁止)が出た。イギリス中で貯水池が干上がりかけており、特にロンドンはオリンピックの夏を控えているので、人びとが春のガーデニングを始める前に先手を打ったようだ。違反すると1000ポンドの罰金。このまま雨が降らないと夏のガーデニングが苦行になる。毎朝の水まきにホースがあっても30分はかかるのに、これを全部ジョーロでやるなんて不可能だ。

* * *

さて、あいかわらずチェルノブイリ本翻訳プロジェクトに忙殺される今日この頃ではあるものの、昨日、つれあいが香港からフェイスタイムしてきて(話題のメインは息子の進学先のこと)終わりがけに「ZDFのドキュメンタリーを見たか」と言うので今日YOU-TUBEで探して見てみた。

「今度大きい地震が来たら4号炉の燃料棒がメルトダウンして日本は終わりだってさ」とかれは言い、それがZDFのドキュメンタリー『フクシマの嘘』で証されているんだそうだ。「そのドキュメンタリーは見てないけどZDFのフッテージはたびたび見たことあるし、4号炉が一番危ないのも知ってるよ(かれが知らなかったことのほうに驚いた)」と答えた。

1月の地震のときも3月の地震のときも、報を聞いてまっさきに考えたのは4号炉は大丈夫かってこと。なにしろ、いまにも剥き出しになりそうなぼろぼろの冷却プールに1300本以上の燃料棒が沈んでいて、急場しのぎの冷却装置でなんとか冷やし続けている。1号、2号、3号炉みたいに稼働中じゃなかったから緊急停止のための制御棒も入ってない。水がなくなったら、あるいはプールが崩れ落ちたら、崩壊熱の上昇を抑えるものが何もない状態になる。しかも原発数機分。

* * *

『フクシマの嘘』を制作したZDFはドイツの公共放送テレビ局で、ウィキペディアによれば広告収入は7%、残りは受信料で運営されているそうだ。広告に頼る部分が少ない分だけ企業ではなく視聴者の側に立って作ることが可能になるし、受信料で運営されているから時の政権も遠慮なく批判できる。

ドイツのことは知らないが、イギリスの公共放送である(国営放送ではない)BBCは視聴者の受信料で運営されている。視聴者は受信料(TVライセンスという)を買って放送を視聴する(サービスを受ける)権利を得る仕組みで、受信可能な受像機を持っていて電波を受信できる地域に住んでいる限りは支払い義務がある。

BBC1〜4とBBCニュースチャンネル、BBC国会チャンネルがあり、いまは全部のチャンネル(3と4は夜だけ)が24時間でいつでもインターネットで視聴可能なので、コンピュータでもiPadでも端末を持っていれば支払い義務がある。違反が見つかると(つまり、サービスを盗むと)1000ポンドの罰金を言い渡され、それでも支払いに応じないと裁判所に呼び出され、それでも支払わないと収監される(これで刑務所に入る人が毎年何人かいる)。

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ZDFの『フクシマの嘘』は、さすがに国を挙げて脱原発に舵を切ったドイツの公共放送の制作だけあって、BBCの『メルトダウンの内幕』より生々しくて突っ込んだ内容だった。初めて知る情報はほとんどなかったけど、嘘の歴史がコンパクトにまとめられていて、「あの事故はくるべくしてきた」のがよくわかる。

BBCのほうは、いまのキャメロン内閣が新世代原発推進だからってことでもないだろうが、日本政府の事態収束宣言を否定していなかったし、WTCのときの消防士のドキュメンタリーと似た、「かくして最悪の危機は脱した」という美談仕立てになっていた。これはこれで、いまや地に落ちた日本のプロモーションになっていてありがたい気がした。

東電でぼろぼろになった日本企業の信用は、オリンパスの醜聞でいっそう傷を深くしていたので(イギリスでは特に)、企業も政府も信用できないだめだめの国だけど、自分を犠牲にしても郷土や隣人を守ろうとする個人がたくさんいるのが日本という国だ、みたいなコンセプトにならざるをえなかったのかもしれない、とも思う。

ZDFの『フクシマの嘘』にも菅直人が出てくる。で、またこれにも「菅直人を美化し過ぎ」とか「菅直人は嘘ばっかり」とかって批判が出るんだろうとは思うが、菅は脱原発依存に傾斜したので推進派に追われたってのは(たぶん)ヨーロッパの脱原発派の共通認識だ。3月10日のガーディアン紙の福島取材記事でも、「日本の市民は原発の再稼働に懐疑的であり、大半の国民が原発に依存しないエネルギー政策を求めているが、それが可能になったかもしれない最大の脱原発提唱者を失ってしまった。それは菅直人だ」と書いてあった。

フクシマの嘘(ZDF)日本語字幕付き
前半
http://www.youtube.com/watch?v=mKPpLpam6P0


後半
http://www.youtube.com/watch?v=uOgoZDDsRkc



キーワード:

福島第一 / ドキュメンタリー


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藤澤みどり

ゲストブロガー

藤澤みどり

“英国在住の文化ウォッチャー、芸術とお酒と政治好き。ブログ「ロンドンSW19から」http://newsfromsw19.seesaa.net/”


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