2012-04-16

勝手にレビュー『核の傷:肥田舜太郎医師と内部被曝』(※ネタバレ注意) このエントリーを含むはてなブックマーク 

正直、話題にされすぎていたので、期待はあまりしていなかったが、期待を上回り、ここ最近で観て最も良かったと思ったドキュメンタリーだった。

こうして作品にでもならなければ、肥田医師の事も、原爆投下以後の事実も、問題も、知り得なかったのだから、本作に出逢えたことがすべてと言っていい。ぜひ多くのひとに観てほしい一作だ。

内部被曝、その後日米両政府がしてきたこと、内部被曝者が受けてきた扱い、今も抱える苦しみ、そして原発―

53分という短い上映時間にも関わらず、
原爆投下がその直後から現在に至るまでもたらしている問題を簡潔に描いている。

また、戦後直後の映像と、自身内部被曝を体験しながらも現在生き抜く肥田医師の証言の両方が含まれているという意味で、本作は非常に貴重な映像だと思う。(戦後の様子を写真で見ることはあったが、本作に出てくるような映像で見ることは初めてに等しく、衝撃的だった。)

加えて、本編上映直後、『3.11以降を生きる:肥田舜太郎医師講演より』と題した講演のダイジェスト(2012年 アップリンク製作 20分)も流され、普段彼が各地で開催されている講演でしている話を聞く事ができ、理解を深めることができることも嬉しい。

特に3.11以降、(内部)被曝をしてしまった私たちが、どのようにそれと向き合うか、具体的にどのようにすれば良いか、明言してくれている。

物凄くシンプルに言うけど、今やろうとすると結構難しかったりする。。
ただ、少しでもそうしようと心がけるきっかけとなったことは自分にとって非常に大きい。

「早寝早起き」
「腹八分目」

そうした言葉が出来た由縁を辿ればすべては自然の摂理に従っていて、それが健康の秘訣であり、健康であるということは免疫力を高めるという医学的な知見に基づいた話も含め、全てが目から鱗だった。

これほど素直に人の言葉がストンと入ってくるという体験も珍しい。

3.11で日本全体が被曝を経験したことや、
日本で安全な所などないと断言できたり、
原発によって、放射能を浴び続け、(内部)被曝していると断言でき、
医学的知見から、原発の問題を指摘できるのも、
戦後内部被曝者たちを診察し続け、現在も生き残っている唯一の医師だからこそ。

そして、
原子力発電を今わたしたちができるのは
それがもたらす重大性、危険性をきちんと解っていないからこそ。

広島、長崎出身者でもなければ、親戚に出身者がいたり、
ましてや内部被曝した知り合いもいない自分にとって、
言葉や歴史の一部にすぎなかった「原爆投下」、そして「内部被曝」を、
実態として捉えることが本作を通し、できるようになった。

肥田医師をはじめ、
本作を製作された方々に心から感謝と、敬意を払いたい。

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hocomi

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hocomi

“UPLINK、ドキュメンタリー好きなフリーター”


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