2012-07-26

『フェイシング・アリ』クロスレビュー:アリの偉大さと魅力を再認識 このエントリーを含むはてなブックマーク 

自身もボクシングファンなので、アリのドキュメンタリーや雑誌記事は幾度となく目にしてきた。アントニオ猪木戦の記憶はあるが、いわゆる全盛期のアリは噂でしか見聴きしていない。個人的にはもっと早く引退していればと思っていた時期もあった。

インタビューが主軸になっているという点では、NHK教育テレビのドキュメント番組のような流れが感じられたが、淡々と進行する中にも、戦った者にしかわからない独特の感情表現の中に、深い味わいが感じられた。

歴代の対戦者たちは、体はだぶついているものの、シャドーボクシングの動きはそれぞれに美しく、各人が往事を感じさせてくれた。とりわけホームズの左ジャブは今でも充分お手本となると思われる教科書的ジャブだ。"キンシャサの奇跡"の後、大変貌を遂げていったジョージ・フォアマン。45歳の時にチャンピョンになった時はそれ以上に驚きと感動を与えてくれた。その表情や語り口は、とても穏やかで、聖職者としてのフォアマンの説教を一度は直に聞いてみたいとも思った。

アリは、偉大な王者と一般的に形容されているが、対戦者からは恐れられたり、憧れであったり、嫉妬されていたりと様々な感情が交差していたようだが、想像以上に愛されていたということが、この映画を通じて理解できた。アリが自己探求に躍起になっていたことを象徴する「日本人の国は日本、ドイツ人の国はドイツ・・・黒人の国はどこだ?・・・白人の国は?・・・」というコメントは、以上に説得力があった。

ロン・ライルが「60年代は、黒人が結束した時代だと思う。アリは問題を提起した。黒人社会に与えた彼の言葉と影響力を忘れることはないだろう。・・・」と語っていたが、アメリカ大統領が今現在・黒人であることを考えると、まさに隔世の感がある。

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kansa5959

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