2012-07-31

話にはまだ続きがある――『この空の花』 このエントリーを含むはてなブックマーク 

さて、実はこの大林宣彦の映画に注意が向いたのは、
長岡の花火が取り上げられていることに気づく前に、UPLINKの浅井さんに見ることを勧められたからで、
それと共に、確かこれが工藤冬里が今月2日に企画したtori kudo's meltdownの発端となっている映画のひとつであることを思い出したからで、
それもあって見に行こうかと思ったはずなのに、
後者の理由を映画が始まるまでころっと忘れていて、
映画を見始めてから、
あの世から来た少女、花が、劇の脚本を持って先生のところにやってきた時に、
「この劇は声で演じられます」(だかなんだか。脚本がないから正確なせりふは忘れた)と
言ったところで、ああ、そうだった、と思い出して、
その後はずっとそのことも念頭に置きながら見ていたのだけど、
声というより、私から見たらむしろ「言葉」で、視覚的な言語のインパクトも、発話と同時
に字幕を使うことで多用した映画だった。

それで、見てきた翌日(すなわちきのう)は、tori kudo's meltdownの会場で、20円以上のカンパで販売していた(のに手を伸ばしかけた時に気づいても、出演者だから、と1冊ただでさらってきた)、
冬里君が書いたパンフレットを行きも帰りも電車の中で読み直していたんだけど、
彼が自分の企画の中で浮き上がらせたかったテーマのひとつ、

「被害者はリアルなことは語れない。語れないということさえ語れない。そして語れないということさえ語れないということさえ語れないのか」

は、『この空の花』の中でも、
富司純子演じた、花の母親のリリ子が、
祈りの花火ですら、打ち上げの前のサイレンの音が空襲の時と同じで怖くて見に行けない、
というところに表わされていたと思う。
つまり、生々し過ぎる感情には、人は自分を守るために向き合えないということ。
それでも、リリ子は空襲の体験を紙芝居にして、小学校で語り聞かせをやっていた。
語れない、ということよりも、結局は語ることの大事さを訴えてくる映画だった。
そして、抽出された感情でも、十分に怖さや悲しさを人に伝えられるということを教えてくれていた。
だいたい、自分の中の「リアルそのもの」なんてものには誰も触れることができないだろう。
そんなことしたらみんな発狂してしまうもの。
どんな言葉も、声も、外に出して人に伝えるために具体的な形を取った時点で、
そぎ落とされたり、切り落とされたものを、後ろに置いてきている。

それを言ったら、きのう私が書いた、
『大林宣彦の「この空の花」を母と見に行ったことについて』
にも、実は取りこぼしたことがいっぱいある、
というより書けなかった、というか書きたくなかったのよね、
『この空の花』は命を紡いでいくことがテーマになっているだけに、
母娘の物語が含まれているでしょ――被爆二世の玲子(なんでまた、玲子?)と、子を生む
ことに重荷を負わせてしまった母親。
それから、空襲から子どもを守り切れなかった母親と、母親に思いを伝えるためにこの世に
戻ってきた娘の魂。
母娘の思い合う心がきめ細かに描かれていて、そのことを自分の感情とまざまざと結びつけ
て書くことはできなかった。
まあ、今なら思い切って書けそうな気もするけど、もういいよね、これで十分だと思うし。

で、どこまで(どのように?)リアルでいられるか、あるいは今の時代にそれぞれがリアル
であることとはどういうことか? というのが、ひとつの追求のしどころであったと思われ
るtori kudo's meltdown では、
私はつい、求められるものに応じ過ぎて、全然とまでは言わなくても、ほとんどその日の自
分にとってのリアルな部分は反映させていなかったように思う。
それがちょっと心残りだったんだ、あの日は。
しかし、そもそも彼の企画の趣旨、それから、求められていたのが集団即興の中の一人では
なく、ソロでの出演だった、ということは、当日、会場に着くまで理解していなかったんだ
し、卒なくすませよう、という心理がこんな私にも働いたとしてもしかたがない。
この「卒なく」というのは、周囲の期待にこたえているのが無難、ということなんだが。
周囲と言っても、事実上期待していたのは冬里君しかいなかったがな。
ああ、そういや共通の友人のミックが見に来てくれていたけど、
彼女の言ってくれた「よかったよ」なんて、
私の心を楽にするために言ってくれた言葉に過ぎないし。

昔(とは、1980年ぐらいだろうか)リアルというバンドがあって、
ある時、センチメンタルな曲調に流れてしまったliveをしたら、
終わった後に、「全然、リアルじゃねーぞ!」とやじられていたのをなぜか思い出す。

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