2012-10-25

検索型ドキュメンタリー『モンサントの不自然な食べもの』 このエントリーを含むはてなブックマーク 

遺伝子組み換え問題に切り込んだ作品として話題の『モンサントの不自然な食べもの』。
本来は最重要である本作のテーマ、メッセージの部分はふれずに、ドキュメンタリーとしての手法に着目したい。

本作は、私が知るかぎりでは初となる「検索ドキュメンタリー」だ。
「モンサント」という、悪名高きアメリカの巨大食品会社がある。→遺伝子組み換え食品で世界の胃袋を牛耳るという、グローバル戦略で弱者から搾取しまくっているらしい。→実際にどんな悪事を重ねているのか、調べてみよう。

物語はこのような構造で、監督がモンサントにかかわるキーワードを拾い出し、その対象にリアル取材を敢行する。そのていねいな繰り返しでモンサントの実態をあぶりだしていく。

社会派ドキュメンタリーで、しかも対象がデカければデカいほど、この手法は効果的と思われる。まともに正面からぶつかるとしても、相手がデカすぎると追及の矢が鈍りがちだし、空振りする場合も多い(実際、モンサント社は取材拒否)。
そこで「検索」というフックがあると、たとえ周辺取材でも、取材のスタンスが明確となる。しかも独りよがりでなく、「検索」という普遍性が担保されることにより、物語に「フェアな」印象を与えられるのだ。

もちろん、単に検索に頼るだけでは「検索で作ってみました映画」に過ぎないが、本作はあらゆるアプローチ(「クロス検索」的な)を試みながら、インドや南米にまで飛び回る取材力が伴っているのだから、説得力は何倍増にもなっている。

たびたび挿入される監督の検索シーン。それは鑑賞後に自宅に帰りモンサントについて、遺伝子組み換え食品について調べる観客の姿に連なっている。類を見ない「観客参加型映画」として、主題のセンセーショナルさと相まって、本作は強く印象づけられることとなった。

キーワード:

モンサント / 遺伝子 / TPP


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青木ポンチ

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青木ポンチ

“株式会社スタジオポケット所属の編集・ライター。 【Twitter】 http://twitter.com/studiopocket”


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