2012-12-04

『砂漠でサーモン・フィッシング』クロスレビュー:サケとコイ このエントリーを含むはてなブックマーク 

砂漠で鮭釣りがしたいなんていう、金持ちの気まぐれとしか思えないプロジェクトを押し付けられ、さえないサラリーマン(お役所だけど)水産学者のアルフレッド、いやいや従うもだんだん引き込まれていき、なんだか恋も人生も開けてきちゃうお話。

前評判でユアンがかわいいとは聞いてたけど、それより何よりシャイフがイケメンだった。金持ちだけが持つ余裕にあふれていながら壮大な理想を持ち、実は情熱家。
そんなシャイフとアルフレッドの交流も見ていて心地よく、最終的に主人公が信じる力を取り戻す姿も暖かい目線で見ていられる。イギリスらしいやりすぎないユーモアもちょうどいいさじ加減。
だけどそんなさわやかな物語の中で引っかかることが一つだけあった。

2人には元々それぞれ相手がいる必要があったのか?ということ。

ロバートはまあいい。彼のキャラクターには物語の中で恋のライバルだけではない役割があるし、だいたい若き軍のヒーロー(イケメン)がさえない中年男に恋人をとられるなんて一種古典的な映画的仕掛けで、ハリエットをあきらめて去る彼の姿はすがすがしく、このさわやかなラストを邪魔していない。

それに対して、古ぼけた退屈な日々に引っくるめられて置いてかれる妻の後味の悪さには、こんなよけいな仕掛け、この物語に必要だったかなあ?としばし思ってしまう。

だけど、ロンドンの自宅の庭で鯉が住むちいさな池みたいな、退屈な世界から外に泳ぎ出るには犠牲も必要になる。アルフレッドは退屈だけど安定した仕事を失い、長年連れ添った妻を切り捨てて自分が信じることに挑戦することを選択する。澄んだ川の流れみたいなさわやかなハッピーエンドの底にほんの少しの泥を混ぜ込んだのは、人生で本当に何かを成し遂げたいのなら清流も濁流も併せ呑む位の覚悟がいるということなのかもしれない。

だってそうでも考えないと、2人のレンアイ模様を盛り上げる為のありがちな舞台装置だなんて、そんなの深夜の"Please don't leave me"が切なすぎる。

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