2013-08-24

『日本の悲劇』クロスレビュー:5年後にもう一度観る このエントリーを含むはてなブックマーク 

5年ぶりに渋谷近辺に復活したうどん屋に行くと薄味が難点だった出汁を美味しく感じられた。私が変わったのか店が進化したのか?
うどん屋の後に近所の試写会場にて『日本の悲劇』を鑑賞。
出演者の素晴らしい演技とカメラワークにもかかわらず唖然とするラストの後味の悪さが苦手で飲み慣れないコーヒーのようであったのが3年前の『春との旅』だったが監督の小林政広は主役の仲代達矢と再び組むことになり銀行強盗の企画が頓挫した後に年金不正受給問題を取り上げたのが『日本の悲劇』。
ほとんどが仲代達矢と北村一輝との二人芝居で10分弱に渡る長廻しから始まり音楽は一切ない。
家の中の出来事はその家庭ごとで違うので想像で描いたという強烈な二人のぶつかり合いがモノクロで描かれる。
「役者というのは、役と自分との間で七転八倒するものなんです。役者にまず必要なのは技術であり、毎日訓練して競い合う精神です。外国では皆やっているのに、なぜ日本はこうなってしまったのか。周囲の次世代には伝えていきたいんですが、なかなか難しいです。」
仲代達矢がこう語っているということは単なるアドリブではないと思われる。
死を覚悟した仲代演じる父親を観ていて、ここ2年で急激に老化した自分の父がオーバーラップした。70歳を超えても技術顧問の仕事があったが仕事のない元同僚から嫉妬されて身を引いた途端に「後は死ぬだけ」を繰り返すようになった父。
仲代は決意の行動を取った後は家族の一番良かった頃を思い浮かべながら意志を貫き、その場面のみカラーで映しだされる。
私の父は何かを思い浮かべたりしてくれるのか?
まだ私が何かすべきことがあるのではないか?
そんなきっかけを与えてくれた。
なんとなく比較する作品として浮かんだのが小林正樹の『日本の青春』だったがそれは外れた。フランソワ・トリュフォーがきっかけで映画の道を目指した監督からはトリュフォーの香りは何も漂ってこない。正直なところ現時点では退屈寸前で好きな映画ではない。
何年か経って私の好みは変わるのか?それとも?

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