2013-10-04

『もうひとりの息子』クロスレビュー: 『招かれざる客』との共通点が興味深い このエントリーを含むはてなブックマーク 

 湾岸戦争時のドサクサで、イスラエルの病院でイスラエル人とパレスチナ人の赤ん坊が取り違えられ、18歳になった時にその事実が明らかになったことで、2つの家族が関わり合い始める、という作品。

 イスラエルでの民族間の対立の深さや実態は、日本で暮らす者にはうかがい知ることはできない。
 身近なところの対立に照らし合わせてみると、例えばネット上での過激な主張や意見の対立は、対立する相手との接点が少ない人ほど陥りやすいと思う。
 ある国に行ったこともない人ほど、見もしないでその国を悪く言う、といったことである。
 そして、相手の意見に耳を貸さず拒絶する姿勢を取り始めると、それを貫いてさえいれば一方的に精神的に優位に立ち続けることができるので、関係が好転することは望めない。
 つまり、逆に関係を良くするためには、とにかくお互いの距離を縮めることが必要だと思う。

 この作品は、扱っている題材がデリケートだったり、フランス人がイスラエルを舞台にした映画を作るという成り立ち上、内容的には2つの民族が融和への道を模索する、常識的な博愛モノにしかなり得ない。
 そんな背景の作品で、2つの家族の距離が縮まるきっかけになるのが、自分の過去を覆されアイデンティティーがゆらついている2人の子供たちが、似た境遇からお互いに近づき合うことであり、自然な展開で良いと思った。

 また、1960年代のアメリカでの白人と黒人の結婚を描いたアメリカ映画『招かれざる客』で、父親たちは現実の困難への心配を口にしては会話をピリピリした雰囲気にしていたのに対し、母親たちは子供の幸せを第一に考えて、一貫して穏やかな態度を取り続けていたが、偶然なのかこの作品でも同様に男女を使い分けた設定になっている。
 実際には、女性の方が男性よりも物事の良し悪しの判断が思い込みに囚われていて、他人の意見や現実的な考えを受け入れようとしない場合も多いと思うが、自分の子供が対象となっている2つの映画では、母親が意固地な態度をとらないということで文化や時代を超えて共通しているというのは興味深い。

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さるべ

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