2013-10-09

『潔子爛漫』を見てる・4―見どころ編・魔法の鏡― このエントリーを含むはてなブックマーク 

きのうは、ドラマのあまりの無茶苦茶な展開に気が抜けて
(普通は、目が離せなくなって、と言うところ?)、
続きを書く気になれなかった……。

さて、それはさておき、結局は元お嬢様が艱難辛苦を乗り越えていく物語というよりも、
力(イコールお金)のある男に見初められ、嫁に迎えられ、守られて暮らす、
といったシンデレラ・ストーリーのようなものでしかないのか、の『潔子爛漫』だが
(まあ、次から次へといろいろなことには見舞われ、そのままではとても収まりそうにもないとはいえ)、
お昼のドラマといった軽んじられやすい枠にしては、小道具や伏線といったものに、かなり細部にまで気を配っているほうではないかと思う。

その一つに、潔子の持っている美しい手鏡がある。
それは武士の家に代々受け継がれてきた由緒ある鏡で、祖母から譲られたものなのだが、
祖母は次のような戒めの言葉と共に、潔子にその鏡を授けた。
「鏡には、自分の心が映るのじゃ。
 だから毎日鏡を見て、自分自身の心と向き合わねばならぬ。
 自分が決めた道を、一筋に進んでいるかどうか、目をそらさずに見れば鏡はその問いに答えてくれよう」

その言葉どおり、潔子はなにかあるたびにこの鏡のふたを開けて見つめるのだが、
ドラマの中では、それがていねいに何度も何度も描かれる。
ある時には泣きそうになっている自分の顔が映っていたし、またある時には晴れやかな笑顔がそのまま映っていた。
しかし、潔子が女中奉公をしていた折、
その手鏡を女学校時代の友だちで、奉公先の娘でもある千代にひょんなことで取り上げられてしまう。
「これ、あたしにちょ~だい? あなたには宝の持ち腐れよ。あたしが使ってあげる!」
と。
実は千代は、心のねじけた娘で、しかも恋敵として潔子を憎んでいたのだ。
返してほしい、と正面から頼み込んでも効き目がなかったので、潔子はとっさに機転を利かせてこう叫ぶ。
「開けてはなりませぬ! それは己の心を映し出す魔鏡なのです!」
なにかと思えば、
「心が美しい者が見ると美しく映り、逆に人に敵意を持ったり、邪心を持つ者が見ると、世にも醜い顔が映ると伝えられております!」
その言葉に、心に一抹のやましさを覚える千代がおそるおそる鏡をのぞき込むと、
そこにはゆがんだ自分の顔が映っていたのだった
(つまり、やましさが千代に自分の顔をそのように見せたのだった)。
それで悲鳴をあげて鏡を放り出し、潔子は無事鏡を取り戻すことができることとなる。

この場面をテレビでたまたま見かけて、
あれ、なんて頭のいい女中だろう、相手の良心を突くとは、と思い、
実はそれが私が初めて見た『潔子爛漫』のシーンで、そこからこのドラマに引き込まれて見続けるようになったのだが、
遡って、ネットで最初からこの物語を見てゆくと、それは潔子が機転を利かせる以前に、
そもそも祖母に重ねて言い含められていた言葉であることがよくわかる。
亡くなる時にも祖母は、「鏡の中に己の心を見つめて生きよ」と、潔子に言い残して世を去った。
潔子はその言いつけを守り、日々鏡に向き合い、自分の心を見つめて成長してきた。

そして、それはあながちうそではない。
魔法の鏡でなくても、鏡は己の心を映し出すだろう。
常に己の心に問うこと、それがどんな時でも肝心なのだ
(あ、潔子の祖母の口調が移っちゃったかな)。

そう、いじめだのいやがらせだのする人間は、ほんとうは心の底で自分のしていることを知っている。
だから、自分に誇りなんか持てるわけがないし、自分のことを好きになれるわけもない。
それを思うと、いやがらせをしてくる相手に、こちらからなにかを言ってあげる必要もない、という気になるし、
自分のしたことはみんな自分にはね返ってくる、という意味もよくわかる。
潔子と千代の、この鏡を巡るエピソードがそのことを実によく表していた。

しかし、その、人の良心とも呼べるべきもの、
それは今の時代にほんとうに人の心に生きているのだろうか。
生きているはず、人なのだから。
でも、それすらも疑わしいのがこの現代。
ほんとうにこのように自分を恥じる気持ちがあったなら、集団暴行なんて起きるはずがないんだし。
もしかすると現代は、「恥知らず」という言葉さえ通用しない時代なのかも知れない、とも思う時がある。

明治という時代設定を借りてこのドラマが言おうとしていること。
そこのとこ見逃さずに、『潔子爛漫』ファンは見続けてほしい。

写真はその第11話から。
鏡をのぞき込む意地悪お嬢様、千代(ただし、今はすでに改心)。
このショットはなんだか、"そんなこと言うなら見てやろうじゃないの!"って大胆不敵な感じですね。

キーワード:

潔子爛漫 / 第11話 / 恥知らず


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Reiko.A/東 玲子

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