2014-12-11

「私は映画好きというより映画館好き / 映画ファン同士を繋げたいなぁ」支配人の林未来さんにお話を伺いました!「元町映画館」・関西ミニシアター巡礼 vol.1 このエントリーを含むはてなブックマーク 

先日、神戸の元町映画館にお邪魔して、支配人の林未来さんにお話を伺ってきました。

【1】元町映画館設立のきっかけは?

オーナーの堀が現役の勤務医として大阪で働いているのですが、生粋の映画ファンで将来店を持つなら映画館をという夢を持っていました。

10年以上前にこの建物を購入し、テナント貸しをして購入資金の返済が終了したこと、1階の店舗が出ることになったこと、自分の子供が独立したことが重なった。夢に向かって一歩足を踏み出すタイミングでしたが、自分は仕事があり現場仕事は出来ないので劇場運営をしてくれるスタッフを探そうということで、神戸映画サークルに相談に行きました。その中で運営スタッフとして働きたいという人が見付かり設立に向け動き始めました。

そんな時、神戸に新しい映画館が出来るという新聞記事を読みました。映画館を一から作る場に立ち会える機会なんてこの先二度とないだろうと思い、ボランティアでも何でもいいので何か手伝わせて下さいと連絡しました。一度お会いして話すことになり、映写の経験があることを話すと、「じゃぁ、一緒にやらないか」と言ってもらえ、当時していた情報誌の仕事を辞め運営スタッフとして働くことなりました。

映写スタッフとして働いた経験があり、いつか映画館に戻りたいとずっと思っていました。映画館を離れていた時期もカフェやギャラリーなど街のお店と一緒に上映会を開いていました。映画を観る環境としては決して満足のいく場所ではなかったので、作品は外国のアニメーションや短編映画など。

私はどちらかというと、映画好きというより映画館好きなんですよ。やっぱり映画館に戻りたいという気持ちが強かったです。

【2】なぜ商店街の中に?

オーナーから地元神戸でという思いがあったという話は聞きましたが、場所に対するこだわりがあったかどうかは分かりません。劇場運営が始まってしばらくして、のんびりした雰囲気の商店街の中にある映画館っていいなぁと思えるようになりました。

【3】独自の発想のイベントが目立ちますが、どのように企画されていますか?

劇場運営を始めるに当たって何か特色を出していくことを考えないといけない、では何によって出していくのか?

上映作品で、というのもありましたが、途中参入の劇場ですから自分達の好きなものだけという訳にもいかないだろう。劇場を立ち上げる時にも相談させて頂いた神戸映画サークルが月1回の上映会と、作品の舞台となる国の背景を知るような勉強会を開いていました。

そのアイデアを反映して、上映作品に関連するトークイベントを中心とした勉強会を当館の売りとなるよう続けました。最初はアカデミックでお堅い内容のものが多かったです。現場スタッフ3名は映画館の運営自体が初めてということもあり、現場の業務にプラスα、何かする余裕はありませんでした。

スタートからしばらく経って少し落ち着いてきた時、私はもっと映画館の存在を「売っていきたい」と思うようになっていて、お客さんに来てもらえるような企画・宣伝を考えたかった。

トークイベントに加え、作品に関連するお店とのタイアップ企画を始めました。自分の好きなお店に関連する映画にはきっと興味を持ってもらえるだろうと思って。

元町映画館はボランティアの方に運営をお手伝いしてもらっているのですが、企画に興味があるのかな?と、ボランティアスタッフの若い子達に声を掛けてみました。そこから宣伝チームみたいなものを作りました。

最初は戸惑いながらも、企画・宣伝に携わり頑張ってくれました。その中からアルバイトになり、1人は社員となりスタッフとして活躍してくれています。今では彼らがどんどん独自の企画を立てています。

映画好き、いわゆるシネフィルの方は映画そのものの価値が大事と考えますが、私はどちらかというと、知ってもらうにはどうしたらいいか?とまず考えるタイプです。

私の中で映画の良し悪しはあまりなくて、好き嫌いなんです。あまり面白くない映画だなと思っても、「この映画のこの部分は売りになるかも?」というように映画を商品として見ていて、どこに価値を付けて、どういう層にアピールしていくかを考えることが楽しいなと思っています。

【4】月1回開催の元町シネクラブについて

ミニシアターに観に来る人だから、よく来てくれる人の顔がだんだん分かってきて、その頃に気付いたんですが、その人とは他の劇場に行った時も顔を合わせることが何度かあったんです。「またあの人来てるなぁ」ってお互い顔見知りにはなるけど絶対に交流することはない。そういう人達同士で映画について話す場を作りたいなというのが始まりでした。

スタッフもそうですが、ミニシアター映画が好きな人って一人で観に行くことが多い。一人で観るのが好きという人もいますが、何故かというと周りにミニシアター映画好きな人が少ないから。

映画に限らずですが、好きなことについてお互い話するのは楽しいじゃないですか。きっとそういう場があれば楽しいんだろうなということと、映画ファン同士を繋げたいなという気持ちがありました。

元町映画館設立前にオーナーが映画合評会を開いていて、元町映画館でやってみようかという話もありましたが、そんな難しそうな名前なら腰が引けて私だったら参加出来ません。色々考えた末、シネクラブという名前になりました。

それでも、「映画のこと話すって、映画に詳しくないしなぁ」と、まだ参加し辛いイメージがあるみたいです。ホントにお茶飲んで話してるだけなんですけどね。参加された方からは「思ってたより全然楽しかった!」という感想を頂きました。どうしたら気軽な会に見えるんでしょうね?

【5】林さんにとって映画とは?

私は読書も好きで小説をよく読むのですが、映画もドラマを観ることが多く物語が好きなんです。18、19歳とかの思春期よりは少し過ぎた、けどまだ多感な時期に自分について色々と悩むことが多かったです。

私は悩んでいた当時、小説や映画に救われた経験がありました。「現実から新しい扉を開く」って言ったりしますが、私にとっては、「今いる世界を閉じる」ことで、映画を観ている時間、本を読んでいる時間は、ドロドロとした悩みに囚われた現実を閉じることが出来ました。

映画が凄く好きで、自分にとって大事なものになったのはその頃からでした。

【6】関西の映画ファンに一言

映画ファン歴が長くなると自分で作品を選ぶようになってくると思いますが、自分にとって面白いものもそうでないものもひっくるめて観て、その中からやっぱりこれが面白かったとなるのがいいのかなって思っています。あまり自分の中でジャンルを固定しないでいろんな作品を観て欲しいですね。

元町映画館ではインディーズ作品の上映も結構やります。シネコンでは絶対上映しないインディーズ作品、お客さんがあまり入らないことは分かっていても、応援出来るのはミニシアターぐらいじゃないですか。これからの監督を応援していくことは重要な役割だと思っています。それでもお客さんに入ってもらわないと、なかなか次の作品に繋がらないんです。

関西ではインディーズ作品は本当にお客さんが全然入らないから、観てダメだったらダメっていうことを監督に伝えて欲しいし、それを嫌がる監督はほとんどいません。それよりも反応がないことが怖いと皆口を揃えて言います。

劇場が育てるのではなく、やっぱりお客さんが育てるんです。「自分が育ててやるんだ!」という思いをもって観に来て欲しいなと思います。劇場はそういうお客さんと映画の出会いの場を提供するだけなんです。

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元町映画館
〒650-0022神戸市中央区元町通4丁目1-12
TEL:078-366-2636
http://www.motoei.com/

◎元町シネクラブvol.14
日 時:12/21(日) 13:30~15:00
会 場:元町映画館2F「黒の小部屋」
参加費:200円(お茶代)
お題映画:『ショート・ターム』『消えた画、クメール・ルージュの真実』『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』『聖者たちの食卓』

キーワード:

元町映画館 / 神戸


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yoshida tetsuya

ゲストブロガー

yoshida tetsuya

“12月14日に元町映画館でショート・ターム鑑賞会というイベントを準備中です!”


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