骰子の眼

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2008-11-26 06:23


『ノモンハン』『天皇伝説』ライブ上映興行師 渡辺文樹監督インタビュー

客に馬鹿にされようが自分で上映する、撮影もビデオでなくてフィルムで撮る、大事なのは緊迫感 11/27,12/2 東京上映
『ノモンハン』『天皇伝説』ライブ上映興行師 渡辺文樹監督インタビュー

10月31日西荻窪の勤労福祉会館で渡辺文樹監督の『ノモンハン』と『天皇伝説』が上映された。例によって上映の情報は街頭に貼られたポスターで知った。ぴあや東京ウォーカーでは知ることのできない今や貴重なアンダーグランウンドな上映情報である。

当日西荻窪駅から会場迄15分余り商店街を歩いていく、会場に近くになったのがすぐわかる。なぜなら警察が街頭に立っていて、会場に近づくにつれその人数が増えてくるからだ。会場は交番の真横にあるのだが、入り口周辺は私服、制服の警察、刑事があふれ会館内にも同じく、目つきの悪そうな警察関係者が列挙している。否が応でも緊張感が高まってくる。

そんな中で上映は始まった。会場内には入り口を入ったところに渡辺監督が16ミリ映写機の横で上映の準備をしている。映写機の横にはDVDデッキがあり家庭用のステレオアンプにつながれ、そこからステージ左右にケーブルが伸び、その先にはスピーカーが接続されている。映写システム一式を会場に全て持ち込みで設置しての手作り上映会である。

『ノモンハン』上映の前に客席後の映写機の横にいる渡辺監督から前説があり、直前の横浜での上映では民族派右翼が会場にも入り込んだが問題はなかった事、基本的には監督としては右翼もお客であれば入場は拒まないが、警察がチェックして入場させていない事、もし万が一の事があったら上映は中止する事などを告げられ、さらに緊張感が高まる中、上映が開始された。問題なく上映は終わり、休憩を挟んで『天皇伝説』が上映される。

渡辺文樹監督の映画は、スクリーンの上の映画が作品ではなく客席の後ろで廻る映写機そのものが発する音と光、映像と音のシンクロを計るための監督自らの調整する姿、それら全てを含めて渡辺文樹の映画作品である。

先日、500円硬貨に煙草を貫通させるというマジックで手品師たちがその仕掛けを暴露したテレビ局を訴えていたが、ここでは、ライブ映画興行師渡辺文樹の映画を観た感想は述べるのはあえてしないでおこう。
まずは、観てのお楽しみである。


詐欺罪で3回逮捕されることが決まっていた

── 今年5月に無銭宿泊で逮捕されたと報道されましたが、これは実際のところ何があったんですか?

「今年5月14日に、福島の自宅で逮捕されて、例によって俺はポスターや張り紙を作っていて、女房と子どもは幼稚園に行ってたんだよ。車がきて、ぱっと見た瞬間に警察だと思った。そのときに神奈川での上映をやめさせたいんだな、と」

── それは何日後の上映だったんですか?

「5月26日、27日に神奈川県民ホールで、『ノモンハン』と『天皇伝説』を上映する予定で。16日の出発予定で、横浜の宿を確保していたんだよ。でも、警察もよくこんな山間部に来たなと思って。どっちにしたって、パクられるようなことは正直ないからね」

天皇伝説

── すでにポスターは貼っていたんですか?

「4月上旬に神奈川県民ホールに申請しに行ったとき、帰りに都内にポスターを400枚貼ったんだけどね。実は2001年に『腹腹時計』を神奈川県民ホールで上映しようとしたときに、断られたんだよ。不承認という形で。不承認って許可を出していない段階で。そのときは俺も若かったから、執行停止を求めたんだけど何もでなかった。不承認を停めても元の白紙状態になるから、裁判所で判断はしないということで、高裁でやるしかなかった。一年くらいかかって賠償金20万で、神奈川県が負けたんだよ。神奈川県としては、俺が申請するときは断れないわけ。でも、裏で神奈川県警と連絡とってたんだね。

写真:皇室の家族関係の「謎」に迫るというストーリーの『天皇伝説』(監督・脚本・編集・撮影:渡辺文樹)

話しを戻すけど、警察手帳を見せて宮城県の石巻警察です、詐欺罪で逮捕しますって言うんだよ。詐欺罪って?で、石巻警察管轄の東松島市にある宿に泊まりませんでしたか?って聞くんだよ。そういや1月下旬にロケハンに行って、4泊の予定が2泊で帰ってきたことがあって。
これにはいきさつがあって、俺が犬連れて行ったんだけど、宿がダメだと言ってもめたんだよ。じゃあ仙台の友達のところに預けようとしたけどダメで。結局ロケハンが上手くいったから、4日の予定を2日で切り上げてそのまま帰ってきたんだね。俺の住所や会社の連絡先も書いてきたし、FAXで請求書を送ってくださいと電話で伝えていたんだよ」


── なぜ、そのときにお金を払わなかったんですか?

「普通はチェックアウトのときに払うんだけど、結局ロケハンで先に帰ってきちゃったから。で、宿に電話して請求書を送ってくれということになった。あちらが請求書を送ったというけど、俺は全然見てないんだよ。で、俺は自宅じゃなくて作業場にいたからそのまま4月になっちゃったんだよ。宿が警察に相談したらしいんだな。警察とツーカーみたいで。その宿は警察がよく忘年会とかで使うところなんだよ」

── もし払ってないのであれば、普通宿から電話をしてきますよね。

「全然記憶がないんだよ。FAXもきてないし。結局、俺が支払いをしなかったのが一番悪いんだけど。ただね、それを詐欺罪って言われるのはあれ?って思ったけどね」

── 払えば済む問題ではないですか?

「だから、逮捕された時点ですぐに払ってますよ。とにかく一緒に来てくださいって、手錠かけられて。担当の警部から、お金払われたのはわかりましたけど、今払ってもその時点での話だから払ったからって容疑は消えるわけはないと言われて。話を聞いたら、神奈川県警で俺の身辺を洗ったらしいんだ。共産党員との関係はないというのがわかっているのに、何かないかって随分探したらしいんだよ。会社の借金とか全部調べたりとか。
で、この宿の未払いがあってのでやって来たんだよ。で、警部と雑談をしたときに、神奈川県警がしつこく電話をよこしてきたって、バカだからしゃべちゃって。身柄をとりおさえるのが目的だってことで、その時点で3回逮捕するって決まってたんですよ」

── 3回?何の容疑で?

「みんな詐欺ですよ。1回目は1月の宿の件、2回目は2年前に名古屋で上映したときの宿泊代。上映と、下山事件関係の背景を調べるために取材をしてたんですよ。それで10日間くらい名古屋の公共施設に泊まったんですよ。名古屋では右翼に街宣やられてお客さんが200人くらいしか入らなかったんです。売上が20~30万くらいしかなくて、そこの宿は後払いということで。結局、最後は債権だったんです。どういう債権計画を立てて支払いするかっていうことでやってたんだけど、そのお金が計画通り払われてなかった。それを警察が見つけてきて、刑事が名古屋まで行って被害届けを出させて。

1回目のは起訴はされずに、留置所に23日間入って。で、釈放だなって思ったら、また名古屋のときので逮捕状を出されて。翌日すぐに20万払ったけどダメで。それで、また留置所が23日間続いて。次は去年泊まったスタッフとキャストの宿泊代を払ってないでしょ、250万くらいあるでしょって言われて。旅館から被害届け出てますよって。で、また詐欺罪になった。さすがにそのときは払えなかったけどね。結局7月15日まで拘置所にいたんだよ」

── 250万が未払いであれば、またそれでいつでも逮捕できるのではないですか?

「そんなの何だって逮捕できる。これは権力だから、やりたい放題だよ」

── 9月の横浜の上映はできたんですよね?

「ええ。そのときになぜ神奈川県警が動いたかというと、去年の『御巣鷹山』を含む6作品を神奈川の青葉公会堂で上映したんですよ。そのときに右翼が街宣車10台ぐらいで来たんだ。100名近い警備もあって。お客さんがほんとに入らなくて。後で知ったんだけど、5月26日・27日はアフリカ会議というのが横浜であってバッティングしていたのもあるらしいんだよね。それで右翼は騒がせたくはないと。それを証明する手立てはないけど、それしか考えられないよね」

── 9月17日・18日の代々木八幡区民会館での上映が中止になった経緯は?

「代々木八幡区民会館では何回もやってるし、許可はもらってたんだよ。ポスターも貼り始めていたし、週刊新潮の記事の影響もあったんだよね。急に週刊新潮から電話があって取材させてくれっていうから。俺はてっきり小さい記事で作品のこと書いてくれるのかなって思ったら、どうも様子が違ってね。記者が先に作品を見られないんですかっていうんですよ。まだ東京では誰も見てないから見せないといったら、どういう話ですか、このキャッチはどういう意味なんですかって聞いてきて。そうしたら、あんな記事を書かれて」

── この煽っているチラシだけで書いてしまったんですね。

「そう。ただ、新潮社はそういう歴史があるから、怒る気もしないけど。それで、結局右翼が抗議に行って、代々木八幡区民会館にも新潮社にも街宣をかけて」

── それならば、無料で上映して観客にカンパを募れば…

「普通はそうなったら、申請訂正というのがあるんですよ。これはまずいから、ちゃんと有料で加算料払ってください、で済むんですよ。それが、不備申請でダメだというんですよ。結局、今まで30年以上ルーズな運営をしていたんです。施設側はいかなることがあっても、有料である以上無料申請は虚実だって言うの。

それはいいけど、他の人たちは今まで通りにやってくださいって俺は言ったんだよ。俺が執行停止の申し立てをしたら、施設側は消防法にも適用されないようなお粗末な施設なんですと。避難誘導もできないような老朽化施設で、そこに不特定多数の人が来て何かあった場合の責任はとれないから、興行的なものはダメだと言うんだ。そういう意見書をだしてきた。俺は表現の自由となるから通ると思ったんだよ。消防法をとってない施設で興行をやるのは正直難しいというのはわかってるんですよ」

── 用紙には無料と有料と選ぶ欄がある、と。

「それはもちろんあります。あちらの職員は無料の方に丸をつけるんですよ。去年と同じ形だから。俺は危ないなと思ったから、施設に2週間前に電話したんです。いつも無料と書いて有料でやってるけど、今回はあとで問題になると困るから有料でやると言ったら、職員は去年と同じでいいですと返してきた。そのときはまだポスターが貼ってある程度だったから。で、週刊新潮がでたら態度が変わって、上のほうからダメだと」

── そもそも用紙に有料の欄があるのがおかしいですよね。

「ずさんなんですよ。ずさんな歴史を自分で開示したところがあるからね。行政ってそんなもんですよ。控訴は完全に取り下げました。その後に施設を使う他の人のことも考えたからね」

「表現は闘い」であることを感じてほしい

── 最初に無線宿泊で逮捕したのも警察で、上映会を右翼から守ってくれるのも警察ですよね。

「そうなんだね、結果的に。守られて上映するのはジレンマなんだよ。ただね、何かお客さんの中で騒ぎを起こされるのが一番困る。スクリーンを破られたり、映写機をぶっこわされたりしてもストックがあるからできるけど。でも、なんかやったときは俺も黙ってないから争いになりますよね。そこに人が介入してきたら怪我する可能性があるからね」

── 今、監督の中でこういう状況をどういうふうに受け止めていますか?

「逮捕されたこと自体は、権力ってこんなもんだと思ってますけどね。やる気があったら10年でも20年でも何でもやりますし。会場内には公権力は入れないっていうのが俺のスタンスなんです。正直、警察は私服で金払って入ってきてますけどね。俺は会場内に公安はいれませんと施設側には言ってるけど、横浜の上映をみてると右翼が入ってくると警備が取り囲んで入れないみたいだね」

── ということは、右翼もお客さんなのに入れないんですね。

「入れない。一方で、警備がいなかった郡山の上映会は、お客さんにとったら怖かった。会場は職員らがガードしているわけ。右翼らしい人を入れていいんですかって聞かれて、それは自由だって。みんなの表現の場だからって。何かあったら俺が責任取ると言って。それで3人くらい入ってきた瞬間に緊張感が違うんだな(笑)。あれは落ち着かないよ。そいつらも落ち着かないから、ちょっとしたら外へ出ようとして後ろのお客さんとぶつかるわけですよ。で、お客さんが“なにすんのよー”って騒いだりして。お客さんが落ち着かないというかね」

ノモンハン

── 作品の話を聞かせてほしいのですが、『ノモンハン』と『天皇伝説』はどちらが先にできたんですか?

「大体同じ時期に平行してやっていて、今年完成したんです。ノモンハン事件を調べているうちに、天皇血についてもつくりたいなっていうのがあって」

写真:ノモンハンで起きた、歪んだ軍隊内差別の矛盾を描いた『ノモンハン』(監督・脚本・編集・撮影:渡辺文樹)

── 『天皇伝説』の中で、右翼が騒ぐ部分というのは映画の中で主人公(=渡辺監督)が手にしたVHSのビデオテープに録画されていたもので「こんな危険なものを持っていて大丈夫だろうか」と言っていましたね。映画を見れば実際、右翼が騒ぐことはなにもない。VHSのテープがデタラメだったらデタラメだったということで。物語としては監督の主張ではなく、映画の中のフィクションとして見られるつくりになっていますよね。

「フィクションの一環としての情報提供みたいな感じだからね。天皇家の血の問題をダラダラ調べていくような話じゃないから。映画のスタンスはそうでしょ。そこに自分が調べた情報を入れて、その中でエンターテイメントとしてつくってお客さんに関心をもってもらえればいいと思ってるからね。一般のお客さんを相手にしているから、お金を取る以上は」


── さまざまな問題があるテーマを取り上げるスタイルは、興行師としてのこだわりですか?

「映画をやる以上、どんな作品でもお客さんにみてもらいたい気持ちは常に持ってますよね。観客を想定してつくっていますからね。いくら商売ではないといっても。でも、『ザザンボ』までは商売でしたけど、『罵詈雑言』あたりからははずしてきたかな」

── 逆に、初期の頃が商売だったんですか?

「商売だよ。『家庭教師』の頃とか。マスコミにぺこぺこして、こっちも演出してバカになってやりましたけどね。そうしないと動かないですからね。お金ないから。やっぱり義理人情の世界だから、お願いしますよとしつこく言っていれば、しょうがないから書いてやるかってなるから。そこですよ、狙いは。でも、いい加減だなって思いましたね、ジャーナリズムというものは。
いろんな現場でどういう人がどういうスタンスでやっているかを見たけど、映画の内容・評論にしても正確なものはひとつもないよね。要するに、真実というのがない。他の人たちの脇をみて、俺はこの程度まで書いていいんだっていう。映画って感性でしょ。感性で書けばいいのに、ここまでほめちゃっていいのかなとか。かなりインチキだと思うよ」

── 『天皇伝説』を観て気づいたのですが、音声はプリントに入れてなくて別で出しているんですか?

「最近は、『御巣鷹山』からそうですよ。お金がかかるから。俺、磁気テープの音が好きなんでね」

── たまに、映像と音が合っていないときがありますね。

「基本的に音はDVDです。新しくアンプを買ったんですけど、まだ使い慣れてないから(笑)。『ノモンハン』はちょっとズレるときがあるけど、『御巣鷹山』に比べればずっといいですよ。『御巣鷹山』は完全にズレますから(笑)。映画って、いろんなものがあったらいいんじゃないですかね。デジタルの音よりもモノラルのこもった音とか、監督が調整してる音とか(笑)。合わないときもあるけど、お客さんも一体感で観てますよ」

── 今、撮影中の作品はありますか?

「2003年に『阿鼻叫喚』という作品を撮っています。創価学会と暴力団の癒着の映画ね。最後に、池田大作が乗った新幹線にトラックが突っ込むシーンがあって。アクションなんだけどね。この作品に出演した女性が、上映はやらないでほしいって言うんだよ。自分がこの映画に出たのを学会関係者が知ってるからって。上映をしたら殺されるから絶対にやらないでくださいって。それで止まっているんだよね」

── この作品の方が『天皇伝説』より面白そうですね。

「これを撮っているときはいろんなことありましたよ。某テレビ局で報道特集でやろうということになったけど、担当ディレクターに20件くらい嫌がらせの電話があってビビっちゃって。結局なくなりましたね」

── 制作費はどうやって集めているんですか?

「借金ですよ。一番多いのが個人だね。頭下げて金借りて。映画撮るためだったら、何だってやる。はいずりまわってでもやる。今は映画の上映だけでは回収できないからね」

── 上映会にはたくさんの人が集まっていますが、宣伝方法はポスターだけなんですか?

「そうですよ。ネットもやらない、性に合わないからネットはやるつもりは全然ない」

── それはなぜですか?

「インパクトは直ですよ。人間が希薄になったのは、これがないからですよ。東京の人間だけですよ、こんなにのほほんとしていて、ロボットみたいで欲がないような顔してるのは。地方の方が貪欲ですよ。東京はいろんなものが集まってるけど、人間が疎外されて、無感動だよね。過敏で冷酷。ちょっと触っただけで感じやすいけど、他人に対しては冷酷。その点、地方の人は鈍感だけどあったかいよね。怒りもあるし。俺が地方で暮してるのは、それ。地方にはドラマがある、敵が見える。俺は地元では散々言われてますけど、顔が見えるからいいですよ」

── 基本的に、監督自らが上映するスタイルなんですよね。

「自分で行って、自分でやる。お客さんにバカにされようと自分で上映して。それが一番ですよね。制作の気力にもつながるしね、やっぱり客と接しないと。どんなこといわれても、自分の足で交通費払ってくるんだから有難いですよ」

── 制作現場では他にスタッフがいるんですか?

「基本的に現場は一人ですよ。学生にちょっと手伝ってもらうくらい。俺はとやかくうるさくいわないから。なんにもできなくても、50歳の監督がやってるから俺もがんばらなくちゃ、と思うだけでもいい。映画の荒さは若干仕方ないと思ってるけど、基本的に一緒ですよ。映画は一人でつくるしかないと思いますよ」

── フィルムが35ミリから16ミリに変わりましたね。ビデオでは撮らないんですか?

「あれは俺にはできないな。やっぱり焼きモノの世界をやったらやめられないよね、下手でも。デジタルは深みがない。デジタルは追求しようがないね」

── でも16ミリはどんどんなくなっていっていますが。

「そうだね。最近、フィルムは輸入品だからね。『ノモンハン』はネガで撮影だけど、『天皇伝説』はポジで撮影だから」

── ということは、マスターは1本しかないってことですか?

「塩酸なんかぶっかけたら終わりですよ。コピーしてないから。だからフィルムの巻き戻しも手動でやってるし、慎重に扱っています。それが面白いんだよね、コピーすれば画質が落ちるし」

── カメラは自分ので撮られているんですか?

「いやぁ、その都度だ。35ミリカメラを持ってるけどメンテナンスしてないし、借りている。やっぱり緊迫感だよね、そのときの緊迫感が映像に出るからね。なんでも情報集めて後で処理すればいいっていう現場と、これを外したら撮れなくなるという現場では緊迫感が違いますよ。そこがなかったら映画にならないからね。緊迫感の中で持続している」

── さらに上映を監督自身がして、ライブ感でやってるから緊迫感ありますよね。

「ライブですよ。周りは騒いでるし(笑)」

── でも、監督が会場の後ろにいると、どんなにつまらなくても途中で帰れないですよね。

「そういうのをね、お客さんに味わってもらわないとね。映像の音が聞き取れないとかあるけど、ま、いいよ。とにかく見てもらって感じてもらえれば。こういう上映会に参加したっていう気持ちがあれば、何かあとで感じてもらえると思うんだよね。ぜんぜん面白くなかったけど、10年後になって『ノモンハン』ってあったなっていう。そういう種まき作業って大事だと思う」

── 西荻窪の会場に近づくにつれて警察の数が増えていきましたし、入口や会場には数十人の警察官がいました。こんな上映会に参加したってことは非常に記憶に残りますよね。

「表現は闘いだっていうのを少しでも感じてもらえれば有難いですね」

(インタビュー:浅井隆)

■渡辺文樹プロフィール

映画監督。福島県いわき市出身。学生時代から自主映画を製作、大学卒業後も家庭教師をしながら映画を製作する。1987年、『家庭教師』にて監督デビュー。
主な作品には、カンヌ国際映画祭出品、日本映画監督協会新人賞を受賞した『島国根性』(90)、松竹が出資・公開予定だったが、登場人物が実名だったため「人権侵害の疑いがある」として福島県法務局が調査に乗り出す騒ぎになり公開を拒否された『ザザンボ』(92)、各地で「金返せ」コールが起こった『罵詈雑言<バリゾーゴン>』(96)、天皇暗殺計画の話であったため、上映会の度に右翼の街宣車が押し掛け裁判にも発展した『腹腹時計<ハラハラトケー>』(99)、日本航空123便墜落事故の陰謀説(撃墜説)が題材となった『御巣鷹山』(05)、現在上映されている『ノモンハン』(08)と『天皇伝説』(08)。


天皇伝説街頭ポスター

『表現の自由を考える上映会』

日時2008年11月27日(木)
18:00『ノモンハン』/19:30『天皇伝説』
会場:九段会館

◎注意◎上記の11月27日九段会館の上映は会場側が上映のための使用を取り消したので、渡辺監督は東京地方裁判所にその取り消しの申し立てを行ったが、却下されたため、上映は中止となった。

日時:2008年12月2日(火)
17:30『ノモンハン』/19:30『天皇伝説』
会場:日比谷公会堂

料金:大人1,200円/学生1,000円(当日券のみ)


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