骰子の眼

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2009-05-08 23:00


『マンガ漂流者(ドリフター)』第2回:川口まどかにリンクするコミックはコレだ!【リンク編】

『死と彼女とぼく』から繋がっていくコミックとは何だ!? 吉田アミが教授します!
『マンガ漂流者(ドリフター)』第2回:川口まどかにリンクするコミックはコレだ!【リンク編】

先週の『マンガ漂流者(ドリフター) ~新感覚★コミック・ガイド~』(前回の記事)でご紹介したマンガ家・川口まどかさんの『死と彼女とぼく』。今回は、その作品と何かしらリンクしていくコミックを吉田アミさんがズバリ直感でご紹介します。あなたにピッタリなマンガがここにあるはず!


このマンガが好きな人はこのマンガも好きなはず!
感覚でリンクするコミック・レビュー編。

同作家の他の作品にリンク!

『やさしい悪魔』『やさしい悪魔の物語』 / 川口まどか

『死と彼女とぼく』に、ノックアウトされた人は同作家の『やさしい悪魔』もおすすめ。何とか説得を続ければ人間だもの、けっこう分かり合えそうな「死者」とは違い「悪魔」は、別物。人間とはまったく違う価値観で生きている。主人公のやさしい悪魔は、金貨の代償に人間の願いを叶える人間寄りの悪魔。同じ悪魔からは“クレイジー悪魔”と呼ばれている。悪魔よりも人間に興味を持つということは? 悪魔になくて人間にあるものって何?


こぼれ話

1987年より秋田書店の「ひとみDX」などで連載されていた『やさしい悪魔』。『やさしい悪魔』での単行本は全13巻。その後、講談社の「デザート」に不定期に連載され『続・やさしい悪魔』全1巻、秋田書店の作品を選り抜いてまとめた『川口まどか自選傑作集 やさしい悪魔』全3巻を発売した後、秋田書店の「ミステリーボニータ」にて、新シリーズ『やさしい悪魔の物語』として連載され、単行本全10巻にまとまっている。そのほか、番外編『やさしい悪魔の物語 黒い夢 白い夢 君の夢』が発売。一見、巻数が少ないように思うが合わせるとなんと全24巻に及び、『死と彼女とぼく』よりも長く(2009年5月現在)、執筆開始も早い。川口まどかの代表作の一つ。

なぜ、こんなにもややこしい刊行になっているかというと、作品の掲載誌が次々と休刊しているため。だが、作品自体はほとんど1話完結の様相を呈しているためさほど混乱はきたさない。現在、手に入りやすい『やさしい悪魔の物語』から読んでも大丈夫。


さらにリンク!

『サタニスター』 / 三家本礼

“悪魔寄り”のシスター「サタニスター」がシリアル・キラーを倒す!悪魔よりも殺人鬼のほうがもっと恐ろしい。人間て、奥深い。ホラーマンガ版『ジョジョの奇妙な冒険』とも評される『ゾンビ屋れい子』でお馴染みの三家本礼のごきげんスプラッター・ホラー・ショー。『死と彼女とぼく』の新章『死と彼女とぼく めぐる』第1回では、すわっ!闘うヒロインマンガに転向!? と新たな境地を見せた川口まどかの魅力にノックアウトされた方にはこちらもおすすめ。カラっとした明るいホラーでポップコーンとビール、映画館でギャハハと笑って観れるようなB級さがたまらない。ストーリーも意外なほどに王道で外道ではないから読後感もスッキリ!ちなみに登場人物の多くは爆乳。川口まどかのマンガに出てくるヒロインも隠れ巨乳が多いのは秘密だ。いや、隠すことではないか。


『魔人探偵脳噛ネウロ』 / 松井優征

「謎」を食らう“魔人”ネウロが女子高生探偵・桂木弥子とコンビを組んで、謎を解く!というと推理モノを連想するが、何せ魔人。謎の解き方はアクロバティックにてファンタスティック! 小説だと清流院流水や舞城王太郎、西尾維新の書く荒唐無稽で異能者が活躍するミステリーを連想するとイメージしやすいかも。さて、『やさしい悪魔』との近似点を上げると、クリーチャー描写、魔界、悪魔の設定が似ている。2009年4月めでたく連載が終了したばかり。一気に読むなら今がチャンス!




さらにリンク!見えざるものが見える。ぼくらは故に惹かれあう

『美しいこと』 / 橋本みつる

「誰が見てもキレイと感じるものってあるのかな?」。感受性が強すぎて、他人の愚鈍さ、鈍感さが許せなくて、そんな自分が大嫌いになりそう。そんな少女・みなこと、エスパー少年・夜居のボーイ・ミーツ・ガール。夜居がみなこに見せた「本当に美しいもの」の正体とは?


『目隠しの国』 / 筑波さくら

時々、目隠しがずれたみたいにちょっと先の未来を見えてしまう少女・大塚かなでと触れた人の過去が見える少年・内藤あろうのボーイ・ミーツ・ガール。特殊な能力を持つが故の苦悩、他人との接し方に右往左往する様は『死と彼女とぼく』とリンクする。ホラーな描写が少ないので、怖いお話が苦手な人にも安心しておすすめできます。




さらにリンク!「キャー」と言わない霊感少女&霊能力者

『白眼子』 / 山岸凉子

白眼子

川口まどかと山岸凉子のこの世に在らざる者の描写はとても似ていると思う。根幹になる思想が同じなのでは? というわけで、ホラーモノを多く描いている山岸凉子からあえて本作をチョイス。白眼子と呼ばれる霊能者の元で育てられた少女の運命は…?


『霊感少女-闇のカルテ』 / 成毛厚子

幽霊が見える少女・沙夜香は、心霊研究家の叔父と共に除霊を行っている。幽霊を祓うだけの悪の存在と捉えず、さまざまなかたちに描いたホラーマンガ。1983年より講談社の「週刊少女フレンド」にて不定期連載された。主人公の沙夜香は、神秘的な美少女として描かれ、作中では一度も笑みを浮かべず、立ちはだかる幽霊にも基本的に動じずに対処する。心霊現象が理由などなく、わけはわからないけど“在る”ものとして描かれるなど、『死と彼女とぼく』に通じる。子供頃見た心霊番組を髣髴とさせる読後感で、けっこう怖いよ、気をつけて。


次回は、マンガ家・やまだ紫に肉薄します!

(文:吉田アミ)

【過去のコラム】
吉田アミの新連載コラム『マンガ漂流者(ドリフター) ~新感覚★コミック・ガイド~』がwebDICEでスタート!(2009.4.22)
『死と彼女とぼく』川口まどか(2009.5.2)


吉田アミPROFILE

音楽・文筆・前衛家。1990年頃より音楽活動を開始。2003年にセルフプロデュースのよるソロアルバム「虎鶫」をリリース。同年、アルスエレクトロニカデジタル・ミュージック部門「astrotwin+cosmos」で2003年度、グランプリにあたるゴールデンニカを受賞。文筆家としても活躍し、カルチャー誌や文芸誌を中心に小説、レビューや論考を発表している。著書に自身の体験をつづったノンフィクション作品「サマースプリング」(太田出版)がある。2009年4月にアーストワイルより、中村としまると共作したCDアルバム「蕎麦と薔薇」をリリース。6月に講談社BOXより小説「雪ちゃんの言うことは絶対。」が発売される予定。また、「このマンガを読め!」(フリースタイル)、「まんたんウェブ」(毎日新聞)、「ユリイカ」(青土社)、「野性時代」(角川書店)、「週刊ビジスタニュース」(ソフトバンク クリエイティブ)などにマンガ批評、コラムを発表するほか、ロクニシコージ「こぐまレンサ」(講談社BOX)の復刻に携わり、解説も担当している。5月下旬より佐々木敦の主宰する私塾「ブレインズ」にて、マンガをテーマに講師を務める予定。
ブログ「日日ノ日キ」

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