骰子の眼

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2009-06-24 22:00


AV監督になりたいあなたへ! 雨宮まみのエクスタシーサミット『AV業界転職セミナー』開催

「AV監督ってどうやってなるの?」そんな素朴な疑問に答えます!AV業界の鉄人たちをゲストに、知られざるAV監督の素顔に迫る!
AV監督になりたいあなたへ! 雨宮まみのエクスタシーサミット『AV業界転職セミナー』開催
タートル今田監督作品『初恋 愛里ひな』より

AVライター・雨宮まみが毎回アダルトカルチャーを紹介する恒例イベント『雨宮まみのエクスタシーサミット』。今回は、昨今の大不況に立ち向かうべく「AV業界転職セミナー・AV監督編」が、5月27日にアップリンク・ファクトリーで開催された。ゲストには、新進気鋭のアラサーAV監督、沢庵氏(フリー)、侍・ヴァン氏(ドグマ所属)、タートル今田氏(HMJM所属)が登場し、それぞれの体験に基づく本音を聞かせてくれた。その模様をレポートする。

エクスタシーサミット
(左から)侍・ヴァン、沢庵、タートル今田、雨宮まみ

すごく普通の幸せを求める自分と、主人と奴隷みたいな関係を求める自分が分裂している感覚ですね(笑)(沢庵監督)

雨宮まみ(以下、雨宮):沢庵監督は新卒でAVメーカー「ワープ(ワープエンタテイメント)」に入社したということですが、動機など含めて当時の話を聞かせて下さい。

エクスタシー番外編01

沢庵:僕は大学に入る時に浪人をして、人よりも3年間遅れたので、自分の就職したい方向にはあまり行けないようになってしまったんです。

雨宮:いわゆる一流企業とかは全然考えていなかった?

写真:沢庵監督(左)

沢庵:ただ、スーツを着て満員電車に揺られるようなサラリーマンにはなりたくなかったんですよね。就職活動も一応したけど、「とらばーゆ」みたいな求人情報誌で「ワープ(ワープエンタテインメント)」という会社が載っていた。それも真面目に就職しようという応募したというよりかは、そういうところの面接を受けたらコンパとかで盛り上がるかなと(笑)。そうしたら、3日後くらいに合格が決まって、ちょっとやってみようかなという曖昧な気持ちで始めました。


雨宮:人生のネタになるかなと思って入ったんですね(笑)。外から見ているのと、実際入ってみるのでは印象は変わりましたか?

沢庵:やっぱりイメージとして怖いなとかありましたよ。一応、親にも言ったら“働かないよりはいい”ということで許してもらえました。自分で怪しいなと感じたらまた考えようと、とりあえず3ヶ月やってみようという気で。そうしたら、「ワープ(ワープエンタテインメント)」の社長は人間的にすごく尊敬できる人で、付いていこうと思ったんです。

雨宮:始めはADのお仕事をされていたんですよね?

沢庵:あわよくば広報に行きたかったんです。元々モノを作るのが好きで、出版系などに携わりたいという希望があったんですね。でも現場のADでも、作る喜びを感じました。その後、ある監督に“僕のダイジェスト版を作ってくれない?”と言われて任された。その作ったものをいろいろな人に見せたら評判が良くて、“これは面白いな”と。そこからはまっていった感じですね。

雨宮:監督としてデビューしたのは2002年、入社して1年後くらいで早いですよね。

沢庵:会社の気質自体が、監督を育てようというというものなんです。

雨宮:「ワープ」は外側から見ていても、人を育てるのが上手いなと感じます。

沢庵:でも会社的には育てた人材が独立して行ってしまうから、商売上がったりで(笑)。でも社長が“それが俺の誇りだ”と言ってくれる。フリーになった人間でもやっぱり会社と交流を持って、社長をみんな尊敬していると思います。

雨宮:若手監督が集まってやりたい企画をやる「ドラゴンズゲート」という社内レーベルに参加していましたよね。

沢庵:会社の体質が単体女優を扱う中で、そこでは企画女優さんを使って予算100万円以内でやるという。それは女優さんを中心に考えていたのを、企画に自分のやりたいことを中心に据えるきっかけとなりましたね。

雨宮:フリーになったきっかけは、そのやりたいことをやるという所だったんですか?

沢庵:会社には5年いたのですが、業界的には長い方だったんですよ。その中で“失敗はもういっぱいしたな”と。フリーになってからは失敗できないという考えがあったので、なるべく多くの失敗をしていこうと思っていたから自信がつきました。あとは、今度は自分が育てる側に回らなくはいけなくなり、事務的なことが増えてきた。それが少し嫌で、監督に集中したかったんですね。

雨宮:社員監督よりフリー監督の方が一枚一枚の売り上げに対する厳しさってありますよね?

沢庵:そうですね。でも作品を買う人にとっては中身を見て決めるわけじゃなく、パッケージを見て決める。そこは作る側にとって一番のジレンマとなるところなんですよね。“俺のせいじゃないんじゃないの?”って思うけど、でも売れたら“俺のおかげ”ってなるんです(笑)。

雨宮:逆に会社にいると自分のやりたくない企画を担当することもありますよね。

沢庵:ないことはないですけど。でも基本的には撮影自体は毎回楽しいんですよ。自分のやりたい事と仕事感覚のバランスですね。必ずどこかに冒険できる所がある。“モノを作っている以上は新しいことをやりたいな”と毎回考えて、新鮮な気持ちでできるんですよね。

雨宮:いまは月に何本くらいの作品を撮られているのですか?

沢庵:4~5本くらい。でもほんとは3本くらいがもっと丁寧に撮れる数かなと。やっぱり余裕を持って街を歩いている方が、エロって発見できるんですよ。仕事ばっかりやっているとネタが切れてしまうんです。

雨宮:日常で見つけていくということですね。

沢庵:自分が特殊だなと思うのは、オナニーをしている時に“これ、いいな”と思ったらメモをしたりしますね(笑)。次の撮影で使おうみたいに。

雨宮:AV監督の私生活というのは興味がある人も多いと思うんです。

沢庵:すごく普通の幸せを求める自分と、主人と奴隷みたいな関係を求める自分が分裂している感覚ですね(笑)。両方とも持ち合わせている女性がいたら素晴らしい、いいパパになりたいとも思いますしね。でも現場で“結婚できないよ”とかよく言われます(笑)。

雨宮:では、これからもSな作品を撮っていくんですか?

沢庵:メーカーのこれ位という掲示と、俺のもっとやりたいという思いのせめぎ合いなんですよね。やれるならなんでもチャレンジはしてみたいです。


外部の人には作品のイメージから、僕の会社は怖く思われているかもしれない。でも現場で一番大事にしているのは女優さんの気持ちなんです(侍・ヴァン監督)

雨宮:ヴァンサン(侍・ヴァン氏の本名)はフランスにいた時は、AVやポルノの仕事はしていなかったんですよね。

エクスタシー番外編02

侍・ヴァン(以下、ヴァン):無かったです。色々な作品を撮ったけど、主に少し変わった音楽家のドキュメンタリーを撮っていました。

雨宮:Sachiko Mさんの作品を2003年から撮っていて日本に縁があった。

写真:侍・ヴァン監督(左)

ヴァン:その撮影で2004年~2005年に日本へと来ていた時に、AVメーカー「ドグマ」のTOHJIRO監督と出会ったんです。面接を受けたのですが、最初黒いサングラスと低い声に笑顔も無くて怖い印象でしたね(笑)。でもそこで日本の映画の話で盛り上がりました。


雨宮:TOHJIROさんは元々映画監督だったんですよね。AVメーカーに入る時はどんなことを考えていましたか?

ヴァン:20歳くらいの時に映画監督になりたいと思ってから、いつかはお金が無くなったらそういう(ポルノを)撮るのもいいかなと考えてた。つまり、自分の中で全然タブーでは無かったんです。犯罪者になるわけではないので、友達にも普通に話せますしね(笑)。

雨宮:「ドグマ」というメーカーはハードなイメージが強いのですが、最初に現場に行ったのが『Mドラッグ』という作品だったですよね。

ヴァン:ADとしての初仕事ですね。若い頃にヨーロッパやアメリカのポルノは見ていたけど、ハードなことをする現場に驚きましたね。いまはもう普通だと思うようになりましたけど(笑)。最初はそれより言葉の問題が大きかった。女優さんの言葉が分からないから、彼女たちが泣いているのを見て“こんな事をするのは違うのでは”と思ったりもしましたが、いま日本語を分かるようになるとうれしくて泣いていることもあるのを知りましたね。

雨宮:監督と女優さんのコミュニケーションが取れているかということですね。

ヴァン:大事ですね。外部の人には作品のイメージから、ドグマという会社は怖いところだと思われているかもしれない。そこはヴィジュアルがメインの世界で働く難しさでもある。でも現場が一番大事にしているのは女優さんの気持ちなんです。中には、楽屋にお弁当があるということや、スタッフさんと話したということに喜んで泣いてくれる人がいるんです。

雨宮:そういう普通のことが成り立っていない現場もあるんですね。

ヴァン:本当に女優さんはすごいと思う。彼女達のしていることは、監督やスタッフには絶対できない。1時間くらい縛られているようなこととかね。

雨宮:ゲロを浣腸して、浣腸して出したゲロをまた飲んだりしてますからね。

ヴァン:自分のデビュー作『髪結いの女』では、シーンをどこでカットするかにも難しさを感じました。そしてエロスはすごく難しいということを勉強しました。どのアングルが良いかと考えてアップを使うと、逆にエロく無くなることがある。撮影から編集までバランス感覚というのが重要になってきて、経験を積んでいくほどに面白くなります。

雨宮:ヴァンサンの趣向やこだわりはどういったものでしょう?

ヴァン:難しいですね。ハードなものでも否定はしないけど、言うならば映像フェチです。“インパクトのある作品を自分で撮りたい”という欲求はありますね。

雨宮:AVに関わる人を撮りたいという想いもあるんですよね。

ヴァン:いまドグマでも2~3年前から毎月TOHJIRO監督の特典メイキング映像を撮っています。エロスと関係ない、AVの裏舞台を見せたいという想いがあるんです。女優さんが辛いシーンを撮った後に、3時間ほど休憩を挟む。ゆっくりご飯を食べて、ゆっくりお風呂に入る。誰しも人生において常に何かをやっている訳ではない。見ている人はつまらないかもしれないけど、この何も無い状態という素晴らしい状況を見せたいという想いが強いですね。

雨宮:これから撮ってみたい人とかはいますか?

ヴァン:悲劇的なヒロインのような人がいいですね。


女優さんは好きでもない男とやるわけで、その人が脱ぐというありがたみは大きいんです(タートル今田監督)

雨宮:今田監督は日本映画学校に行っていたんですよね?

エクスタシー番外編03

タートル今田(以下、今田):そうですね。僕は大学を卒業した後、トラックの運転手になったんですよ。そしてお金が貯まった頃に、映画を撮りたいなと考えてたんですけど、その後なんか出会い系のサクラをやったりもしてて……。

雨宮:仕事が色々と飛びますね(笑)。

写真:タートル今田監督(左)

今田:行き当たりばったりで生きてこうなったんですよ(笑)。卒業制作にハンセン病を撮ったドキュメンタリーが好評となって、劇場公開をしたんです。その後、原一男という映画監督の元で助監督をしていたんです。そこで今「ドグマ」に所属しているノーマルKIMという監督と一緒に働いていました。


雨宮:偶然に二人ともAV業界に(笑)。

今田:AV業界に入っていった彼を“裏切りもの”と思っていたんですけどね(笑)。でも当時所属していた制作会社が解散となってしまい、僕も食えなくなってしまって。出会い系サイトのサクラを1年くらいやった後に、「ハマジム」というAVメーカーに入社しました。日本映画学校の先輩に紹介してもらったんです。

雨宮:特に憧れて入ったという感覚ではなかったんですね。

今田:そうですね。平野勝之監督などは好きだったのですが、AVはちょっとと思っていました。入る時も“脱ぎませんけどよろしくお願いします”と言って。でも気付いたら裸になっていましたね(笑)。

雨宮:では、初めて脱いだ時は悩んだりしたんですか?

今田:緊張しましたね。その前にいろいろな現場で監督が、本番をしているのを撮っていってびっくりしていたので。ハメ撮りをしたきっかけは、会社で『H-1グランプリ(ハマジム-1グランプリ)』というのをやったことです。一人30分の作品を制作費20万で。お金が無いので知り合いを出していこうと思ったんです。そしたら気恥ずかしいのも含めて、意外と面白かったんですよ。

雨宮:それでデビュー作を撮る時には、ドキュメンタリーのような形式がいいなと思われたんですか?

今田:そうですね。僕が「ハマジム」に入った時はドキュメントというのを撮る人がAV業界にはほとんどいなかったんです。どうせやるなら好きなジャンルでやりたいと考えてから、今でも一貫して続けています。

雨宮:作品の中でそれぞれのシチュエーションで女優さん達の“素”が出ていますよね。

今田:やっぱり女の子が一番エロくなるのは、普段のセックスではないかと思うんです。そういう風に演出として押し込めていきますよね、仕事の感覚を抜いて口説く形です。

雨宮:でも今田監督の方からあまり攻めていきませんよね(笑)。

今田:女の子と対する時に話を聞くというのは重要な要素だと思うんですよね。そういう部分から僕は入っていく。相手がなんでAVに出て、何を望んでいるかをひたすらに聞いていくという趣向ですね。

雨宮:意見を聞いて相手を紐解いていくような形ですね。

今田:気持ちは入っているんです、実際にお付き合いした人も結構いますよ。恋愛になることが普通だと思うんです。それがセックスだと思う。AVの撮影だからといって男と女が出会ってそういうことをするわけですから。

雨宮:その普通っぽいのがAVでは珍しいですよね。

今田:生々しさを出したいんですよね。AVはカメラを回している時点でやっぱり作り物なんですけど、どこまでリアルに出来るかどうかという部分をやりたいんです。

雨宮:最近のAVって接合部と顔を一つの絵に収めるとか、密着しない体位で抱き合ったりはしないものが多いですよね。

今田:僕の場合にもそういうシーンは大事なので入れるけど、そこに唾を飲んでもらうとか絵的にワンアクション部分を入れますね。

雨宮:今田さんのスタイルだと、撮りたい作品は女の子次第で作品が変わったりはしないんですか?

今田:だいぶ左右されますね。相性が合わないとかも克服しなくてはと思っています。僕は自分の興奮するツボが“相手の琴線に触れる“という所にあるので、もうちょっとフィジカルの部分でどうにかするのが課題ですね。

雨宮:今田さんの場合、この人はすごく好みのタイプだとか、女性の好みはないんですか?

今田:あまりないですね。でも“この子が恋したらどんなセックスをするのだろうか”と相手に興味を持ちます。それは記録して見せていく価値があるところだと思うんですよね。女優さんは好きでもない男とやるわけで、その人が脱ぐというありがたみは大きいんです。

雨宮:AVだから当たり前になるわけではないんですね。

今田:それが嫌なんですよね、実際は特別なものであるはずなんだから。葛藤があって抵抗があって、その上でセックスをする。そこを大切にしたいなと思っています。


■雨宮まみ PROFILE

AV誌『DMM-DVD』『AV FREAK』、SM誌『SMネット』、他『STUDIO VOICE』などにも執筆する、各方面で活躍中のAVライター。共著には『エロの敵』(翔泳社)『リビドーガールズ』(パルコ出版)など、現在「てぃんくるSNS」にてブログが公開中。
雨宮まみの「弟よ!」

■沢庵監督 PROFILE

1975年生まれ、34歳。新卒でAVメーカー「ワープエンタテイメント」に就職、その後2006年に退社。現在フリーの監督として活躍している。『脅迫スイートルーム』シリーズでドSぶりを余すところなく発揮しつつ、マキシングなど大手メーカーでも活躍中。
AV監督・沢庵(たくあん)の虎馬ブログ

■侍・ヴァン監督 PROFILE

1976年生まれ、33歳。AVメーカー「ドグマ」所属の監督。自国フランスにて映像の学校へ通い、その後会社を立ち上げる。2005年にインターネットで見た日本のAV女優・友田真希に惹かれ、彼女のドキュメント撮影でドグマから協力を得たことをきっかけに同社に入社。昨年デビュー作として撮影した『髪結いの女』が発売中。
侍・ヴァンの無意味なブログ

■タートル今田監督 PROFILE

1976年生まれ、33歳。日本映画学校卒。トラックの運転手や出会い系のサクラなどの職業を経験した後、AVメーカー「ハマジム」に入社。代表作に『温泉美人』『初恋』などが上げられる。

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