骰子の眼

cinema

石川県 金沢市

2009-09-06 23:10


スピルバーグと創価学会、キューブリックと幸福の科学が同居するフィルム・フェスティバルから希望が見える!?『カナザワ映画祭2009 新世界秩序サバイバルガイド』ご招待

昨年『カナザワ映画祭2008フィルマゲドン』で話題を呼んだ映画祭。今年は、9月19日からの5日間〈未来世界〉〈カリスマ〉〈宗教〉〈新世界秩序〉という4つのカテゴリーで上映!
スピルバーグと創価学会、キューブリックと幸福の科学が同居するフィルム・フェスティバルから希望が見える!?『カナザワ映画祭2009 新世界秩序サバイバルガイド』ご招待

昨年クリスピン・グローヴァー氏の「ビッグ・スライドショウ」などで話題を呼んだ『カナザワ映画祭2008 フィルマゲドン』に続き、今年も石川県金沢市で『カナザワ映画祭2009 新世界秩序サバイバルガイド』が9月19日から9月23日まで開催される。

本映画祭の主催であり、2007年1月の立ち上げ以来意欲的な活動を続けている市民団体「かなざわ映画の会」の小野寺さんはwebDICEの取材に対し、今年のコンセプトについて「説明しづらい」と笑いながらも、「去年はダークな作品が多くて、残酷なことをひたすらたくさんあつめるのがテーマだった。その後、本当に世の中が暗く悲惨になって、日々の生活のなかでそうしたことを常に接することになってしまったので、今年はポジティブな作品を選ぼうと思った」と語る。

今回の上映作品は〈未来世界〉〈カリスマ〉〈宗教〉〈新世界秩序〉という4つのカテゴリーに分かれている。〈未来世界〉はスタンリー・キューブリック監督のマスターピース『2001年宇宙の旅』(1968年/アメリカ)、大友克洋監督が現代SFにおける近未来世界のビジョンの礎を築いた『AKIRA』(1988年/日本)。石井聰亙監督作品からは、ドイツの人気ノイズバンドを捉えた『半分人間 アインシュテュルツェンデ・ノイバウテン』(1986年/日本)、オリジナルから音響、画面構成など全面的に手が加えられた『アジアの逆襲 REMIX LIVE VERSION』(2005年/日本)、中沢新一脚本、浪越徳治郎出演による実験作『THE MASTER OF SHIATSU 指圧王者』(1989年/日本)と3本が並び、かつて私たちが思い描いていた理想郷としての未来像がかいま見られるラインナップ。

 
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2010年代を迎えようとする現在もなお強い影響を与える『2001年宇宙の旅』(1968年/アメリカ)

〈カリスマ〉はまず巨船を運ぶ伝説的シーンでも知られる、ヴェルナー・ヘルツォーク監督・クラウス・キンスキー主演の大作『フィッツカラルド』(1982年/西ドイツ)。フランシス・フォード・コッポラ監督がジョセフ・コンラッドの『闇の奥』を下敷きにベトナム戦争を描く『地獄の黙示録 特別完全版』(1979年/アメリカ)。そしてオリバー・ストーン監督が古代マケドニアの大王を主人公に制作した歴史巨編『アレキサンダー』(2004年/アメリカ)と、破格のパワーを感じさせる作品ばかりが並び、オバマ大統領就任より世界で変容したカリスマの意味をあらためて問いかける作品ばかりだ。

 
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コリン・ファレル扮する英雄像が賛否両論を呼んだ『アレキサンダー』(2004年/アメリカ)

〈宗教〉では、大映が勝新太郎ら豪華出演陣を迎え一大モブシーンを交えながらブッダの生涯を描く『釈迦』(1961年/日本)、ドキュメンタリー作家フレデリック・ワイズマンが僧院の日常を観察者の視点から追った『エッセネ派』(1972年/アメリカ)。大川隆法原作、莫大な製作費を費やしたスペクタクルシーンの噂が語り継がれていた『ノストラダムス 戦慄の啓示』(1994年/日本)が観られるのは貴重な体験になるだろう。そして池田大作による創価学会の誕生を綴った小説を映画化、70年代における日本大作映画の潮流を作り上げた大ヒット作品にも関わらず、カルト化されていた『人間革命』(1973年/日本)『続・人間革命』(1976年/日本)といったラインナップで、多様な宗教観を検証する。

 
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丹波哲郎ほかオールスターキャストで制作された舛田利雄監督の『人間革命』(1973年/日本)

〈新世界秩序〉では、H.G.ウェルズの原作をスピルバーグが現在の物語として解釈した『宇宙戦争』(2005年/アメリカ)、宗教や神話がどのように権力に利用されてきたか、そして9.11や金融・政治などの新しいシステムの必要性を説き、ネット上でも話題となっていたピーター・ジョセフ監督の『ツァイトガイスト』(2007年/アメリカ)『ツァイトガイスト:アデンダム』(2008年/アメリカ)も今回のために新たに日本語字幕を翻訳作成し上映。ドキュメンタリー『天安門』(1995年 アメリカ)も事件から20年を経たことを記念しリバイバル上映となる。そして鈴木則文監督、女番長が腐敗した学園に革命を起こそうとする『恐怖女子高校 女暴力教室』(1972年/日本)。様々な暗殺事件をオムニバスで再現することで日本現代史を分析しようとする『日本暗殺秘録』(1969年 日本)。井土紀州が超越的なヒロインを中心に日本の社会状況を鋭く照射する傑作『ラザロ』(2007年/日本)。そして日本初公開となる、プロのeスポーツ(対戦型ゲーム)選手の人生を綴ったドキュメンタリー『FRAG』(2008年/アメリカ)と、こちらも強い作家性を持つ監督たちが独自の視点で社会を捉えた作品が揃った。

ツァイトガイスト
ピーター・ジョセフ監督が宗教・9.11・金融問題の奥にある陰謀論を表現した『ツァイトガイスト』(2007年/アメリカ)

そして金沢21世紀美術館シアター21では、「カナザワ映画祭で爆音上映をしたい」というリクエストに爆音映画祭を主催するboid吉祥寺バウスシアターが応え、カナザワ映画祭専用の爆音上映「サウンド・フィルマゲドンTM」を実施。通常バウスで行われる爆音上映ともまた異なる、会場の特性を生かした緻密な音響が構築されるということだ。

サウンド面からのアプローチといえば、9月19日にはサイレント映画の金字塔、フリッツ・ラング監督の『メトロポリス』(1927年/ドイツ)の伴奏付上映が行われる。mama! milkの生駒祐子、清水恒輔に阿部海太郎を加えたスペシャルな編成により、柱時計を使ったりピアノを改造したりした自作の楽器をフィーチャーし、今回のために新曲を書き下ろしてのパフォーマンスとのことで、こちらも楽しみにしたいところ。

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『メトロポリス』(1927年/ドイツ)が気鋭のミュージシャンの伴奏により蘇る

この国籍や時代を超えたプログラムをまとめる際の苦労について小野寺さんにうかがうと、「『ノストラダムス 戦慄の啓示』は意外とすぐ了承してくれたけれど、『人間革命』は交渉に時間がかかった。この他にも上映したい作品はあったけれど、フィルムが現存しなかったりしたので、今回のラインナップになった」とのことで、現在考え得る限りの幅広いラインナップであることを自負されていた。さらにこれらの特定の宗教色の強い映画と一緒に、宗教の力への批判を盛り込んだ『ツァイトガイスト』を上映してしまうところに、カナザワ映画祭の懐の深さと批評性がうかがえて興味深い。そして今回選ばれているような大作映画に対しては「こうした映画は世間的には駄作とされている作品が多いけれど、その見方を変えたかった。 それから日本映画では死んで終わり、とか滅びて終わりという映画が多いんだけれど、今年はそういう作品は少ないと思う」と、今回の映画祭に一貫して流れる前向きな姿勢について繰り返した。

そのほか昨年も好評だった覆面野外上映も初日の9月19日(土)夜に実施。9月21日(月)には『Brave New World Order!!』と題して、当代きっての辛辣な批評で知られるライムスターの宇多丸氏と高橋ヨシキ氏によるトークショウも行われるが、小野寺さんも「これからこういう世の中になっていくべきだ、これからの映画はどういう映画になっていくべきかという内容。あれがだめとこれがだめというのはもうみんな知っているので、その先を語ってくれる対談になると思う」と期待する。

どの作品も単なる桁外れのスケールの大きさやカタストロフだけではなく、主義主張の違いはあるものの、その先の希望と社会への視座が明らかに描かれているものばかりだ。これだけのパワフルなプログラムを作り上げた「かなざわ映画の会」に敬意を表するとともに、9月19日からの5日間はぜひとも会場の金沢に集結し、ポジティブな英気を養いたい。

webDICEユーザー対象に、抽選で同映画祭の1回鑑賞券を4名様にプレゼントいたします。応募方法は下記をご覧ください。




『カナザワ映画祭2009 新世界秩序サバイバルガイド』

2009年9月19日(土)~9月23日(水)

会場:金沢21世紀美術館シアター21、シネモンド、中央公園
※詳細はホームページでご覧ください。
カナザワ映画祭2009公式サイト




『カナザワ映画祭2009 新世界秩序サバイバルガイド』映画祭に
4名様ご招待

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■応募締切り:2009年9月15日(火)15:00まで

※当選者の発表は、招待券の発送をもって代えさせていただきます。


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