骰子の眼

music

東京都 渋谷区

2009-09-16 15:20


「一つ一つの素材がジムの演奏を通して有機的な世界を描き出している」─ジム・オルーク『The Visitor』クロスレビュー

新企画〈スピーカーで正しく音楽を聴く“体感試聴会”〉がスタート!渋谷アップリンク・ファクトリーに訪れた至福の夜
「一つ一つの素材がジムの演奏を通して有機的な世界を描き出している」─ジム・オルーク『The Visitor』クロスレビュー

webDICEが贈る新たな企画、〈スピーカーで正しく音楽を聴く“体感試聴会”〉が2009年9月10月、渋谷アップリンク・ファクトリーにて開催された。記念すべき第一回となるのは、ジム・オルークの純粋なオリジナル・アルバムとしては8年ぶりとなる新作『The Visitor』。全1曲、38分あまりのインストゥルメンタル・アルバムという規格外のスタイルに、びっしりと彼の美意識が張りめぐらされている。すべての楽器を自ら演奏し、さらにアレンジやレコーディング、ミックスまでをトータルで務め、実に200トラックを要したという。緻密な音響工作の独壇場と言える創作方法でありながら、聴きごこちはあくまでアコースティックかつオーガニックで、どこまでも心地よく、エモーショナルな世界が広がっているのだ。

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会場のアップリンク・ファクトリーは、22時30分開演と深夜の開催ということもあり、渋谷の喧噪から隔離された落ち着いた空気と、ジム・オルークの新作をいち早くきけるという参加者の静かな興奮に満ちていた。“体感試聴会”は、現在残念ながら衰退してしまった、〈スピーカーで正しく音楽を聴く〉という行為の復権により、もういちど音楽ファンに音楽を聴く楽しさを伝えたいというテーマでスタート。今回参加していただいたレビュアーからも「音の立ち上がりが良い」「作品にじっくりとひたることができる」と好評だったアップリンク・ファクトリーのサウンドシステムにより、音楽家が本来意図していた音のディティールまでをたっぷりと感じてもらうことができる。普段ヘッドフォンやMP3で聴いているときには気づかなかった音作りの秘密、作品の本質や世界観をより感じてもらえる企画となっている。今後も続々と“体感試聴会”ならではの作品を取り上げる予定なので、どうぞお楽しみに。

会場となったアップリンク・ファクトリーの田口製作所スピーカー

ジム・オルーク プロフィール

アメリカ「ポスト・ロック」シーンの牽引者。 1969年シカゴ出身。10代後半にデレク・ベイリーと出会い、ギターの即興演奏をスタート。ガスター・デル・ソルなど多数のプロジェクトに参加し、シカゴ音響系の中心的存在となる。1999年のソロ・アルバム『ユリイカ』は、ポップ・ミュージックのファンからも高い支持を得る。近年ではソニック・ユースのメンバー兼音楽監督としても活動(2005年末に脱退)。2004年にウィルコのプロデューサーとしてグラミー賞を受賞。日本文化への造詣も深いことで知られ、くるり、ボアダムス、カヒミ・カリィ、中原昌也らとのコラボレーションや、映画監督・若松考二の作品の評論など活動を広げている。


ジム・オルーク『The Visitor』

2009年9月16日リリース
PCD-93291
2,415円(税込)
P-VINE

2001年に発表された名作『インシグニフィカンス』
以来、約8年ぶりとなるニューアルバム

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レビュー(10)


  • yui onoderaさんのレビュー   2009-09-12 00:39

    ジム・オルーク『The Visitor』レビュー

    音響作家ジム・オルークの約8年ぶりとなるニューアルバム「The Visitor」。「インシグニフィカンス」や「ユリイカ」の流れを汲んだ、全一曲のインストゥルメンタルアルバムである本作は、完璧主義者であるジム・オルークが、孤独な作業をひたすら繰り返し、...  続きを読む

  • soranoirohaaoさんのレビュー   2009-09-12 02:02

    夜の闇 音の拡がり

    夜の遅い時間、眠りについてもいいかもしれない時間、 仕事帰りの気だるい身体を引きずり、うんざりする渋谷の雑踏に 耳を毒されないよう、巨大スピーカの待つ会場へと向かった。 正直、心配していた。 美しい音を奏でるジム・オルークの新譜とはいえ、...  続きを読む

  • oneさんのレビュー   2009-09-12 02:57

    ジム・オルーク The Visitor

    映画のような音楽。短編映画を何本か観たような満足感。素晴らしい。 長尺だからこそできる、緻密で複雑な盛り上がり方と抜き方。その繰り返し。 もう既にストーリーが目に浮かんでいるような一曲なので このままの音源を活かして、再び誰かに 映画にし...  続きを読む

  • ayatë (アヤテ)さんのレビュー   2009-09-12 11:11

    生きるって、素晴らしい。

    「生きるって、なんて素晴らしいんだろう。」試聴会でジム・オルークの新作『ザ・ヴィジター』を聴いて、感嘆とともに真っ先に浮かんだ言葉である。全1曲、約38分のインスト・アルバム。それは、1人の人間の人生を、生から死まで走馬灯のように垣間見ているかのよう...  続きを読む

  • chao2sukeさんのレビュー   2009-09-14 12:45

    一つの世界の様々な顔を堪能。

    ジム・オルークの曲は今回初めて聴きました。 「40分のインスト」「実験的」という触れ込みから、例えば坂本龍一の「out of noise」のような前衛的な楽曲をイメージしていたのですが、耳に入ってきたのはとても聞き心地のよい、ジム自身の中にある世界...  続きを読む

  • eveningjoyさんのレビュー   2009-09-14 20:16

    目にはさやかに見えねども、誰かやって来、静かに帰って

    先日ジムオルークの新作「the visiter」の視聴会にいってまいりました。 いったい今“あたらしいCDを出す”ということに対してどれだけの多くの人の生活や願いがかかっているかということは容易に想像できるものではないが、beatlesのリマス...  続きを読む

  • ニシカワさんのレビュー   2009-09-15 00:01

    『The Visitor』 祝祭のタイムライン

    音楽とは、祝祭である。 例えば、昨今では芸能人の相次ぐドラッグ問題などで、まさにその現場としての「レイヴ」や、マイナージャンルであるはずの「ゴア・トランス」などが取り上げられ、情けないことに肩身の狭い思いをしている。しかし、根源を辿れば宗教的儀...  続きを読む

  • フーリガンさんのレビュー   2009-09-16 00:40

    爆音で爆睡!

    体感試聴会の直前まで、歌舞伎町の新宿ロフトでライブを見ていた。久しぶりに会う知り合いと一緒だったし、いい感じで酔っていて、トリのバンドの途中で抜けて、渋谷まで移動するのが、面倒くさかったので、ギリギリまで行こうか迷っていた。 それでもなんとか開演時...  続きを読む

  • jec12345さんのレビュー   2009-09-16 00:44

    新しい音楽体験か?

    他の人のような立派なコメントは、、、 書けない。 しかし、自分にとって『明らかに』新しい音楽体験であった。 このアルバムで試聴会を実施された スタッフの皆様に心より敬意を表したい。 今時なかなかない、よい企画...  続きを読む

  • bepperさんのレビュー   2009-09-16 00:52

    音の粒

    ジム・オルークの新譜のシチョウカイに参加させてもらった。 薄暗い会場にはシンプルに、白っぽいスピーカーが2本立っていた。そして客席。それ以外には一切無駄な要素がなかった。入った瞬間、こういう場所って、普通はポスターの1枚でも貼ったりするものなの...  続きを読む

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