骰子の眼

dance

東京都 新宿区

2009-09-13 11:23


「複数メディアでのスピード展開は健在」コンドルズ・ダンサー石渕聡インタビュー

結成13年にしてなお疾走し続けるダンスカンパニー「コンドルズ」。結成時からのコアメンバーのひとり、石渕聡氏に話を聞いた
 「複数メディアでのスピード展開は健在」コンドルズ・ダンサー石渕聡インタビュー
撮影コスガデスガ

それぞれが特異なキャラクターと身体特徴を持つ学ラン姿の男性12人が、舞台で踊り、コントをし、楽器を奏でるダンス集団「コンドルズ」。近年は「サラリーマンNEO」「あさだ!からだ!」など、メンバーによるテレビ出演も増えている。現在、「Nine Lives」というタイトルで日本全国をツアー中であるカンパニーのコアメンバーのひとり、石渕聡氏にインタビュー。ダンスのみならず、演劇、人形劇、映像、生演奏など複数メディアでのスピード展開が売りの「コンドルズ」と、3年前に結成したライブバンド「THE CONDORS」について、活動の根底にある想いを聞いた。

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日本縦断大転生ツアー2009「Nine Lives」より(撮影HARU)

結成時から変わらない、コンドルズのスタンダード

──今回のツアーのタイトルは『Nine Lives』ですが?

「猫は9回生まれ変わる」と言われるどこかのこどわざに由来しています。2009年5月の公演で猫が出てくるシーンがあって、そこから「猫で行こうか」と。タイトルを最初に決めて、内容が、作品を作る過程でタイトルの意味に寄ってくる。今回は「何回も生まれ変わる」というのがひとつのキーワード。例えば舞台上でも、テキストは同じで違うシチュエーションに置くとか、同じ曲で違うダンスをやるとか。発想として「繰り返す」がテーマになっているんだ。

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──今回のツアーの見所は?

今までと違うポジション・持ち場があったりすることかな。コンドルズは今年で13年目。メンバーがほぼ同じ中で、担当するシーンが決まってくる。それはいつものことなんだけど、コンドルズを知らない人にとては、ダンス、演劇、人形劇、映像、生演奏という複数のメディアが詰め込まれているのが新鮮に写るのでは。その定番は今回も健全です。

撮影コスガデスガ

──コンドルズのスタンダードですよね

そう。良平(リーダーの近藤良平氏)がメンバーを使って他のメディアで活動するときはダンスだけということもあるけど、コンドルズではこのやり方、複数メディアでのスピード展開という方法以外ではやらない。これがコンドルズのノウハウ、方程式だから。

──石渕さんは、今回のツアーではどのようなパートを?

踊りとコント。今回はセリフが少ないかな。それとジャンベを演奏しています。メンバーの山本光二郎のサックスとの共演。この組み合わせは初めて。毎回、生演奏は入れるようにはしている。生演奏は、ワンシーンでも空間ががらりと変わるからね。

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日本縦断大転生ツアー2009「Nine Lives」より(撮影HARU)

「コンドルズ」と「THE CONDORS」

──石渕さんは、何種類の楽器を演奏されているんですか?

ピアノ、ギター、マンドリン、バンジョー、ベース、トランペット、サックス、バイオリン、それとジャンベ。バンド「THE CONDORS」ではエレキギターを。高校生のときに、ブラスバンド部に1年、マンドリン部に2年いたんだ。昔から、楽器を演奏するのが好きなんです。

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──ダンスカンパニーの「コンドルズ」とは別に、「THE CONDORS」という名前でバンド活動もされていますよね。いつ結成したんですか?

メンバーが皆それぞれコンドルズとは別にバンドをやっていたんだよ。だったら皆でやろうよ、と。コンドルズの結成10周年で新しいことをやろうか、という話もあって。バンドは2006年に結成して、3年目。ダンス公演の方が動員力が大きいから、ダンスのお客さんの一部が来るという感じですが。バンドで知ってダンスを観に来る、という人もいるけどね。

日本縦断大転生ツアー2009「Nine Lives」より(撮影HARU)

──ダンサーとしての活動と、何が違いますか?

バンドの周りに、ダンスだけしていると会わない人たちが集まってくるんだ。ダンスは自分達だけの決まりごとというか、内側で完結しちゃう。でもバンドだと、PVを作るアーティストとか、レコーディングスタジオのエンジニアとか、外の人たちと仕事をする機会が多いのが新鮮で。その人たちがダンスにも関わってくれるから、拡がり感があって面白い。

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撮影コスガデスガ

──ダンスと音楽は、ファンが別れがちですよね

そうそう。だからそれが面白い。バンドは正直、売れても売れなくてもダンサーとしての活動に影響がないから(笑)売れなければ解散、という切実な事情もない。作品の中身の話より、売れる売れないの話になるとつまらない。それはどっちでもいい、という要因にしていたい。ダンスにしても、勝山(メンバーでプロデューサーの勝山康晴氏)が営業的なことを一手にやってる。動員数を常に気にしているのは彼だけ。本番当日に「かつ(勝山)、今日どれくらい入ってんの?」と聞く、というゆるい、それくらいのスタンスじゃないと。内側で面白いことをやるというモチベーションがないと、やってる意味がないと思う。バンド「THE CONDORS」にしても、ダンスカンパニー「コンドルズ」にしても、部活みたいなもんなんですよ。定番衣装も学ランだしね。

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──バンドとして、今後の活動は?

9月と10月に学園祭で演奏します。桐朋学園と、僕が専任で舞踊論について教えている大東文化大学。今、教員の仕事として、その他4つの大学で教えています。コンドルズのメンバーにも教員免許を持って実際に学校で教えている人も多いし、塾の講師をしている人もいる。専門も、体育、美術、国語、社会、家庭科…… 実は先生集団なんだ。12人のうち9人が教員免許を持ってる。75%だよ。多いよね。

撮影コスガデスガ

そのときに面白い風が吹けば、船は進む

──いよいよ東京公演が始まりますが、ダンスカンパニー「コンドルズ」として、今後の活動は?

「ダンストリエンナーレ」のイベントの一環として、青山ブックセンターでダンスワークショップやアコースティックライブなどをやる予定。来年1月にはアジア公演も決定しています。コンドルズは、時間的にも経験的にも確立してきている。活動をやめる理由はない。どういう目的で、どこへ向かうか明確になくても、そのときに面白い風が吹けば、船は進むんです。複数メディアのスピード展開で客を飽きさせない、というコンセプトは変わらない。ただやり続ける。水の上に浮いていれば、大きな風が吹いてきて疾走感が生まれる。それが続いていくだけです。

「コンドルズ」は、1996年に400人だった観客を、11年後の2007年に2万人に増やした。アートマネージメントからの視点で、日本での成功事例としてアカデミズムの研究対象にもなっている。2009年夏には、豊島区からの要請で地域の「盆踊り」をプロデュース。ダンス的な種をまき、ダンスに興味がない人たちを巻き込んでいく。それが13年目を迎えたコンドルズのスタンスだ。いよいよ「Nine Lives」ツアー最終地である東京での公演が、18日~21日に東京グローヴ座で開催される。

(インタビュー・文・構成:世木亜矢子)

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■ 石渕聡 PROFILE

1996年の立ち上げからコンドルズに参加。超濃厚なダンスが特徴。バンドプロジェクト「THE CONDORS」のギタリスト兼バンマス。作曲担当。振付家としてマルハニチロ「ゼリーdeゼロ」TVCMなども手がける。NHK総合「サラリーマンNEO」内「テレビサラリーマン体操」のピアニスト。大東文化大学専任講師ほか、筑波大学などでも教壇に立つ文学博士。2006年に著書『冒険する身体』(春風社)を出版。



コンドルズ「Nine Lives」 東京公演 スコティシュフォールド・スペシャル
9月18日(金)~21日(月・祝)

出演:青田潤一 石渕聡 オクダサトシ 勝山康晴 鎌倉道彦 古賀剛 小林顕作 田中たつろう 橋爪利博 藤田善宏 山本光二郎 近藤良平
会場:東京グローヴ座(東京都新宿区百人町3-1-2)[地図を表示]
料金:前売り4,500円 当日5,000円

※前売りが完売している公演回も。チケットの詳細は「コンドルズ」公式サイトから

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