骰子の眼

cinema

2010-05-24 12:20


カンヌ映画祭『ストーンズ・イン・エグザイル~「メイン・ストリートのならず者」の真実』記者会見レポート

「いい時代だったね」70年代初頭のストーンズを捉えたドキュメンタリーが、舞台となった南仏カンヌで上映された
カンヌ映画祭『ストーンズ・イン・エグザイル~「メイン・ストリートのならず者」の真実』記者会見レポート
カンヌ映画祭の『ストーンズ・イン・エグザイル~「メイン・ストリートのならず者」の真実』上映に登場したミック・ジャガー

フランスで現地時間の19日、ローリング・ストーンズのミック・ジャガーがカンヌ映画祭を訪れ、自身がプロデューサーを務めたドキュメンタリー、『ストーンズ・イン・エグザイル~「メイン・ストリートのならず者」の真実』が上映された。本作は、映画祭自体とは運営の異なる「監督週間」部門の特別招待作品として上映されたもの。ストーンズのアルバムのなかでも傑作として評価の高い『メイン・ストリートのならず者』が出来上がる過程をおさめた、当時の貴重なアーカイブ映像を使ったドキュメンタリーだ。監督は、スコット・ウォーカーのドキュメンタリー『スコット・ウォーカー 30世紀の男』等で知られるスティーヴン・キジャック。この作品を観たミックとキース・リチャーズからの依頼で、今回のドキュメンタリーを制作することになったという。

監督とともに舞台挨拶に立ったミックが、「今夜の観客のなかにストーンズ・ファンはいるかな?」と客席に向かって問いかけると、割れるような拍手と歓声が会場を包んだ。ミックはフランス語と英語の両方でスピーチを読み上げ、「70年代初頭、僕らは若く、ハンサムで、愚かだった。いまは愚かなだけだけどね(笑)。当時はニクソンがホワイトハウスに居座り、ベトナム戦争が続いていたけど、僕らは南仏にこもってアルバムを作っていたから世間の風潮には疎かった」と当時の様子を振り返り、「そんな僕らのストーリーをまとめた映画をここ、カンヌで上映することができてとても光栄に思う」と語った。

webdice_stones_IMG_3413
舞台挨拶を行ったミック・ジャガー

映画では1971年、イギリスの重税を逃れてコートダジュールの別荘に移り住んだストーンズのメンバーが、自由で気ままな暮らしのなかで、昼夜を問わず思い立ったときにセッションをおこないながら曲を作り上げていく様子が、そのノンシャランなロックンロール的私生活とともに描かれる。さらにストーンズのライブ・ドキュメンタリー『ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト』を作ったマーティン・スコセッシ監督など、ミック自身が選んだゲストのコメントも織り交ぜられている。

それにしても、ここまで貴重な当時の映像資料が眠ったままにされていたという事実に、まず驚かされる。キジャク監督によれば、すべてのフッテージを総合するとゆうに二百分以上はあったそうで、そこから厳選して編集する作業は困難を極めたとか。たしかに61分という上映時間はあっという間で、作品を観るともっと観ていたいという気にさせられる。約一時間にまとめられた理由は、BBCで5月24日に放送するため番組の時間に合わせて作られたようだ。

webdice_stones_IMG_3469
記者会見を行ったスティーヴン・キジャック監督(左)とミック・ジャガー(右)

『メイン・ストリートのならず者』に関してはもう一本、写真家ロバート・フランクが当時のアメリカ・ツアーの模様をおさめた『コックサッカー・ブルース』が有名だが、こちらはドラッグ関係のかなりきわどいフッテージが混ざっているという噂で、バンド・メンバーの判断によっていまだにオクラ入りとなっている(『ストーンズ・イン・エグザイル~「メイン・ストリートのならず者」の真実』本編にも『コックサッカー・ブルース』の一部が登場する)。それだけに、今回のドキュメンタリーは当時の彼らの様子を拝める貴重な作品だ。

webdice_stonesinexile_mickkeith
映画『ストーンズ・イン・エグザイル~「メイン・ストリートのならず者」の真実』より (C) Dominique Tarlé

ミック自身もそれを意識してか、公式上映の翌日には各国のメディアの取材を受けるなど、カンヌでの協力ぶりが目立った。「当時はイギリスからのエグザイル(亡命生活)状態だったけど、僕はチャーリー(・ワッツ)なんかとは違ってホームシックにはならなかったね(笑)。結局南仏に居たのは半年ぐらいだったし、明るい太陽のもとで好きなことをしているあいだにあっという間に時間が過ぎていったよ。今振り返っても、いい時代だったね」と語った。

(取材・文・写真:佐藤久理子)


『ストーンズ・イン・エグザイル~「メイン・ストリートのならず者」の真実』
2010年7月12日(月)より渋谷アップリンク・ファクトリーほか、
全国順次公開予定!

渋谷アップリンク・ファクトリー
(東京都渋谷区宇田川町37-18トツネビル1F) [地図を表示]
渋谷東急本店右側道200m右側

監督:スティーヴン・キジャック(『スコット・ウォーカー 30世紀の男』
出演:ミック・ジャガー(vo)、キース・リチャーズ(g)、チャーリー・ワッツ(ds)、ビル・ワイマン(b)、ミック・テイラー(g)、ロニー・ウッド、マーティン・スコセッシ、ジャック・ホワイト、ドン・ウォズ、カレブ・フォロウィル(キングス・オブ・レオン)、ベニチオ・デル・トロ、ウィル・アイ・アム(ブラック・アイド・ピーズ)、シェリル・クロウ、アニタ・パレンバーグ、ジミー・ミラー(プロデューサー)、アンディ・ジョンズ(エンジニア)、ドミニク・ターレ(写真家)、ボビー・キーズ(サックス・プレーヤー)、リズ・フェア、他
アメリカ、イギリス/61分/2010年/カラー/ドルビー・デジタル・ステレオ/
英語・フランス語・スペイン語・ドイツ語・イタリア語・オランダ語・ポルトガル語)
提供:ヤマハミュージックアンドビジュアルズ
配給宣伝:アップリンク


webdice_YMBA-10160 2M

DVD『ストーンズ・イン・エグザイル~
「メイン・ストリートのならず者」の真実』

2010年7月28日発売
YMBA-10160
3,675円(税込)
ヤマハミュージックアンドビジュアルズ
詳細はこちら




SHM-CD『メイン・ストリートのならず者』
〈デラックス・エディション〉

発売中
UICY1478
3,800円(税込)
ユニバーサルインターナショナル



レビュー(0)


コメント(0)