骰子の眼

art

東京都 渋谷区

2010-08-20 21:42


8/22再UST決定!!宇川直宏の現在美術作品DOMMUNEになったBLANK MUSEUM

2010年8月26日(木)から29日(日)にかけて原美術館で開催の『BLANK MUSUEM』を前に、当日出演者等によるイベントが開催された。
8/22再UST決定!!宇川直宏の現在美術作品DOMMUNEになったBLANK MUSEUM
日比谷カタンによるライブ、そして伊東篤宏とメガネ、アンダーウェアによるポールダンスが加わった凄まじいパフォーマンス

2010年8月26日(木)から29日(日)にかけて原美術館にて開催される『BLANK MUSUEM』。
開催を前に、8月16日(月)、Ustream中継配信チャンネルDOMMUNE(ドミューン)で「渋谷慶一郎の王様と割礼。/BLANK MUSEUM特集」が行われた。※8月22日(日)19:00から再放送決定!!
番組は蛍光灯の放電ノイズを拾って出力する「音具」OPTRONプレーヤーの伊東篤宏による強烈なパフォーマンスと、メガネ、アンダーウェアと呼ばれる怪しげなポールダンサー二人による妖艶なダンスでスタート。続いてオルガンの弾き語りをするJON(犬)によるパフォーマンスの後、トークショーのホストである渋谷慶一郎、進行役の吉田アミ、『夜想』主宰の今野裕一、アップリンク主宰の浅井隆、羊や熊、そして後半はDOMMUNE代表の宇川直宏まで入り、DOMMUNEを始めとする熱いメディア論を展開。
ラストは日比谷カタンによるパフォーマンス、そしてオープニングに登場した伊東篤宏とメガネ、アンダーウェアによるポールダンスが加わり、凄まじいテンションのままプログラムは終了した。
ここでは当日の写真とともにトークショーの一部を抜粋してお届けする。

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伊東篤宏、メガネ、アンダウェアーによるパフォーマンスでスタート

「自分で応援する」という観客の姿勢が今、問い直されている

浅井:webDICEで過去に掲載した記事で雑誌の「STUDIO VOICE」が廃刊になった時のトークショーがあって。そこで宇川君が「ガタガタ言うんだったら自分でメディアを持たないとダメだ」と言っていて。そのあとにDOMMUNEがスタートして、最初は大手の企業がバックについてるのかなと思っていたけど、まったくの自分たちだけの力でやっていると聞いて「これは応援したい」と思ったし、もっとUstreamというメディアの可能性を現場で見たいと思った。DOMMUNEはもちろん全世界で観ることができるけど、実際ここまで来て現場を観るのがいいと思うし、結果的にそれがメディアを維持していくことに繋がると思う。 音楽でも映画でも演劇でも何にしてもそうだけど、メディアなんて信じるのでは無くて、自分で観に行って自分で良いか悪いかを決めて、そのベストワンを圧倒的に支持すればいい。「自分で応援する」という観客の姿勢が今、問い直されていると思う。だからまず動いて行動することだよね。Ustreamで止まっているのではなくて。ここに来るのが「リアルDOMMUNE体験」だと思うけど。

吉田:DOMMUNEでは、Ustreamでの体験の方が価値が低いと浅井さんは考えているのですか?

浅井:いや、Ustreamの体験はそれはそれでいいと思う。ただ、自分でも時々仕事をしながらDOMMUNEを見たり、DJを聴いたりしているけど、それってやっぱり自分の五感全部を使った体験ではないでしょう。

吉田:何かしながら片手間に観ているのと、現場でそれだけを観ているとでは同じ体験をしたとはいえない。

浅井:でもここにいる人たちはとりあえずこの空間を共有しているわけだから真剣だよね。やはり生の五感で感じることが一番自分の経験なりに刷り込まれていく可能性は高いと思う。

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JON(犬)によるパフォーマンス

渋谷:そうとも限らないと思うけどね。Ustreamで感動するってありえることだと思いますよ。生の現場のみに感動があるというのは少し違う気がする。例えば他の何かをしている時にUstreamがあることで、より感動が増幅することだってありえると思う。これは他の所でも話したんだけど、荒川修作さんが今年の5月に亡くなったじゃないですか。あのとき、年齢も70歳を過ぎていたし大往生というか、おつかれさまでしたという感じで、亡くなった直後は悲しいという感じではなかった。ただ、ちょうどその頃、彼のドキュメンタリーのサントラを創っていて、そのことによって音楽が変化していくのは感じていたんだけど。でもその後、買い物をしている時かな、ツイッターで荒川さんの事務所から「reversing destiny happen」っていうツイートが流れてきて、それをRTしたときにやっと涙が流れてきたんですね。それは言ってみればツイッターというかRTがトリガーになっているわけでしょ。だからそういう、あたらしいメディアによって生まれる感情なんていうのは当然のように日々起きているでしょ。

浅井:決してUstreamというメディアを批判しているわけではなくて、ネットとは別の回路としてこうしてオープンスタジオを持っているということは素晴らしいと思う。

今野:ここで宇川さんが編集をしたりディレクションをした映像が流れるというのが面白いと思う。編集も何もしない、いいかげんな映像だって今は素人で流すことが出来るわけですよね。そういう意味ではこれは一つの雑誌とも言うことができると思う。

渋谷:宇川さんは映像をツイートの反応で変えているわけでしょう。ツイートの反応でスイッチングをかえるVJって、数年前には想像できなかったわけで。思ったよりも早く未来が来たという気がする。

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左から今野裕一、吉田アミ、渋谷慶一郎、羊、浅井隆

浅井:ただ観ている人がDOMMUNEを支えているようで実は経済的には支えていない。ここの入場料がDOMMUNEを支えているという現実だよね。それは僕らも今野さんも雑誌を創ったことがあるからわかると思うんだけど、やっぱり雑誌を買ってくれた人が出版を支えるわけですよね。DOMMUNEとかUstreamは初めから無料で放送すると決めてやっているわけで。そこをどうやって大きなスポンサーが入らずに成り立たせるかというのは、劇場や映画館をやっているようなアップリンクの問題でもあり、今野さんが「夜想」を持続させる問題と一緒だと思うんだよね。今野さんはスポンサー、欲しいと思う?

今野:どうかな。あったら面白いというのはあるけどね。前にやっていた「WAVE」の時には西武のスポンサードを受けていたけど、全額出してくれるというのは断って、自分から半分にしてもらった。こちらの自由が無くなるから。100だったら向こうのものだけど、50/50だったらイーブンでしょう。西武がどんなに大きくてもペヨトル工房とイーブンでしょうと。だから対等にやることができたんだけど。まぁ当時の西武の堤清二さんがすごくいい人で、何度も何度も潰されそうになったのに「こういう雑誌は無いと駄目だから」と守ってくれていた部分はあるけど。

浅井:でもそこは堤さんの美談にするのではなくて、観客なり読者が「WAVE」や「夜想」を潰したくないから買う。そこが何より大切なんだよ。

今野:これからはメディアが一番大変だと思うんですよ。乱暴な言い方をすれば今後は産直になると思う。アーティストはだいたい自分でできるでしょう。作家でも現在は自分でレイアウトを組んでダウンロードをするような人がいるわけで。間にメディアや出版社を挟まなくてもいいわけですよね。ミュージシャンも極端にいえば自分のレーベルを立ち上げて自分で音楽を出せばいい。それがそんなに難しいことでは無くなってしまった。そこで間で飛ばされているのはメディアや出版社です。そこをどうやって生き延びるかというのはとても難しい問題。

DOMMUNEの現場とUstreamにはヒエラルキーの構造はない

(ここで宇川直宏がカメラを廻しながらトークに参加)

宇川:現場とUstream上でのヴァーチャルな体験の話でいうと、僕はちょっと二極論で話すのはおかしいと考えています。まず、DOMMUNEにはリアルな現場があります。要するに身体性が伴っている。なのでこのフロアに一度も来ないで擬似的なクラブ体験としての側面のみを拾ってDOMMUNEを批判する人がいるならそれには無理がある。それなら「ここ」に来てから意見しろよ、と。この現場での乱痴気とサウンドシステムを体験してから感じたことを批評して欲しい。なので浅井さんや渋谷くんが擁護してくれるのは大変嬉しいです。ただひとつ、Ustream上に配信されているDOMMUNEには「ここ」がすっぽり抜け落ちた第三の現場としての「今」があることも事実なんです。例えばジェームス・タレルのインスタレーションをカタログで見たとしても、本当に体験したことにはならない。「いま」「ここ」というアウラがその紙面に焼き付いていないからです。しかし配信しているDOMMUNEの視聴覚体験には、第三の現場としてのコミュニケーションが存在している。それがツイートのタイムライン(以下TL)。世間でソーシャル・ストリーミングの夜明けと騒がれているとおり、USTREAMとTwitterの親和性があってようやく形成さている意識交流を核とした現場です。僕は毎日TLを観ながらスイッチングしていますが、例えば一人のビューワーが「ハードミニマルで全裸ダンスなう」と呟くと、その行為が飛び火してビューワー達がどんどん脱いで行く。ここは脱衣所かと思う程(笑)。本当にラップトップの向こうで全裸になっているかどうかが問題なのではなく、エネルギーの共鳴作用が巻き起こるこの第三の現場を否定することは出来ないと言いたいのです。つまりこのスタジオ、DOMMUNEに来てくれたオーディエンスが連帯している「今」と「ここ」が共存する現場を覗き見ながら、TLには「ここ」が抜け落ちた「今」の連なりが共時性を纏って全く別の時空を形成しているということです。そこにはどちらが上か下かというヒエラルキーの構造はないんですよ。

浅井:今日のツイート見ていて、「今日のDOMMUNEのスイッチングは素晴らしい」と書いてあって。スイッチングは宇川君の編集でDOMMUNEのなかにしかない「今」だよね。それは宇川君のスイッチングでしか表現することはできなくて、ここにいるお客さんも僕らもスイッチングされた世界ではない。そこがDOMMUNEのなかの「今」だと思うし、DOMMUNEのなかの「今、ここ」というのは宇川君のスイッチングとカメラワークによって作られた世界だと思う。

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日比谷カタンによるパフォーマンス

宇川:そうですね。ブッキングもサイトのデザインもカメラもスイッチングも僕がやっているので、つまり僕の身体、脳内と眼球と右腕の筋肉を通過した世界がTLの中に存在するビューワーのみなさんに解放されているんですが、逆に僕という身体を通過した世界は、このDOMMUNEの現場には浮かび上がっていない。だから全く別の体験なんですよ。更には僕自身もクリエイティビティを剥き出しにしている訳ではなく、この現場で起こった事件を切り取っているに過ぎない。ジガ・ヴェルトフは『カメラを持った男』という映画で「キノグラース(映画眼)」というコンセプトを提案したけど、それをいうなら僕は『カメラを仕掛けた男』だと自称したい。つまりリスペクトしているアーティストを日々このスタジオにお招きしてお洒落なライティングで定点観測をしているようなもの。それを生で配信し続ける。いわば「映画眼」ではなく「観測眼」。これはライブストリーミング世代のネオ・キノグラースであって、僕のリアルタイムスイッチングはボスト・モンタージュであると。だから現場と配信を同じ土俵で優劣つけるのは全くのナンセンスで、体験として全然別のレイヤーにあるという話なのですよ。

浅井:ただ贅沢なのはこの現場にいる僕らは宇川君のスイッチングの技も見ることができるわけですよね。尚且つ現場も感じられるので、ここに大きいモニターがあって宇川君のスイッチングをここにいるお客さんが見る事が出来れば、「今、ここ」を感じながら、バーチャルなネット上の宇川君の眼球を通したDOMMUNEの「今、ここ」を同時に見ることもできる。

吉田:オープンスタジオを持つDOMMUNEの場合、今ここの場所にいるのが一番選択肢として得るものが多いということですよね。

浅井:そう。だから、みんなここに来ればいいんだよ。DOMMUNEを応援しているという意思表示をするために、パソコンの前からスタジオに来るべきだよ。

吉田:浅井さんはここに来る前まではDOMMUNEに対して、否定的でしたか?

浅井:全然そんなことはないよ。大リスペクトだよ。だってUSTはメディアだけどDOMMUNEはTHIS IS ART。宇川君のアート活動の一環としてリアルタイムのDOMMUNEがあるわけだから。作った先から消えていくアートをやり続けるなんて本気の覚悟ないとできないよ。

宇川:そのとおりです。こんな鬼気迫った表現はアート活動じゃないと続けられないですよ。DOMMUNEをエンターテインメントではなく、アート活動の一環としてやっているというのは本当に正しくて。僕はこの行為を「現代美術」ではなく「現在美術」だと思っています。いってみればアンディ・ウォーホールが自分のファクトリーに遊びに来た知人に淡々と16ミリを回してポートレートを撮っていた「スクリーンテスト」というシリーズがあったでしょ。僕の行為は今世紀のスクリーンテストといっても過言ではない。このブースに入ってくれるフォトジェニックな友人DJ達を、平日毎日同じキャンバス、同じライティングで撮っているんです。しかも本日でもう114人目ですよ(笑)。今はデザイナー/ディレクターとしての全てのキャリアをいったん断って、毎日これをやっているんです。しかも全てアーカイヴしてます。これは視覚文化史的にみても、「NHKアーカイブス」に匹敵する位貴重な記録だと思いますけどね。

(文・中村 慎)



【関連記事】
「ゼロ年代以前が終わることで、ゼロ年代とは何だったかが確認できるんじゃないか」─STUDIO VOICEトークショウレポート

※8月22日(日)、19:00からDOMMUNEにて「渋谷慶一郎の王様と割礼。/BLANK MUSEUM特集」再放送が決定!!詳しくはDOMMUNE公式サイト


『BLANK MUSEUM』原美術館

※チケットはアップリンク店頭、e+(イープラス)にて発売中!!

詳しくはhttp://www.webdice.jp/blankmuseum/まで

●2010.8.26(木)『LUCIFER NIGHT』

Screening:ケネス・アンガー作品
16:30開場/17:30上映開始
LIVE:灰野敬二+ジム・オルーク
19:00開演/20:00終演
料金:前売2,800円/当日3,300円

●2010.8.27(金)『BLUE NIGHT』※SOLD OUT

Screening:デレク・ジャーマン『BLUE』
16:30開場/17:30上映開始
Installation
ライティング・インスタレーション:仲西祐介
出演:渋谷慶一郎、やくしまるえつこ(特別出演)
18:45開始/20:00終了
料金:前売2,800円/当日3,300円

●2010.8.28(土) “LOOKING FOR THE SHEEP day1”

Performance:飴屋法水たち、東野祥子、ホナガヨウコ企画
LIVE:伊東篤宏+山川冬樹、勝井祐二(音楽)+迫田悠(映像)、日比谷カタン、山本精一+JOJO広重 (ゲスト:穂高亜希子)
Navigator:のぎすみこ(ひつじのさんぽ)、大石麻央(動物マスクの人体彫刻)
14:00開場/15:00開演/20:00終演
料金:前売5,500円/当日6,000円

●2010.8.29(日)“LOOKING FOR THE SHEEP day2”

Performance:飴屋法水たち、東野祥子、ホナガヨウコ企画
LIVE:エミ・マイヤー feat.Shing02、種子田郷+さとうじゅんこ、テニスコーツ、マイア・バルー
Navigator:のぎすみこ(ひつじのさんぽ)、大石麻央(動物マスクの人体彫刻)
Overture:JON(犬)
14:00開場/15:00開演/20:00終演
料金:前売5,500円/当日6,000円


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