骰子の眼

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東京都 江東区

2008-04-10 02:01


ウィスット・ポンニミット:日本に一番近いタイのマンガ家

現在、KIDO Pressで開催中の「ウィスット・ポンニミット」新作版画展。その個展に合わせて久しぶりにウィスット・ポンニミットことタムくんが来日した。
ウィスット・ポンニミット:日本に一番近いタイのマンガ家

まるでノートに落書きをしたようなマンガは、シュールで痛々しいときもあったし、やさしく包み込んでくれるような温かさもあった。3~4年前タムくんのマンガが日本で注目を集め、あれよという間に彼の作品がメディアに広まっていったのはまだ記憶に新しい。タイに帰った後も変わらず日本で支持を受けているタムくん、日本には半年ぶりに来たそうで「ゆっくり自分のペースで街を歩いたんだけど、やっぱり日本はいいね。好きです。天気もいいし(笑)」。自身が描くマンガのキャラクターのように実にマイペースで穏やかなタイ人なのである。


今回の個展はオリジナル新作版画12点とドローイングが展示されており、展示だけでなく販売もするのは初めてだという。

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「木戸さん(KIDO Press)が誘ってくれたんです。一緒になんかやりたいねーって。なんか、この個展は新鮮な気持ちです。僕、ほんとはこういう絵とか描くの、あんまり合わないんですよね。ストーリーがない、キレイな絵を1点描くというのはあまりやったことなくて。でも、今回やってみて1つの絵に意味があるっていう作品もいいかなぁって。4コマとかじゃなくて、1コマ。楽しいなー、またやりたいなって思う」

(写真右)「ときめき」(c) Wisut Ponnimit / KIDO Press 2008

作品のテーマとしては、「あんまり重たい考えはなくて、ポジティブな感じ。色もリラックスな感じで…絵を見て気持ちがリラックスしてほしい」と言うように、作品はパステルカラー調の柔らかい色合いで、見る者を心地よくさせてくれる。

今回描いているのは、マムアン、愛犬のマナオ、したくんなど、すっかり定着したキャラクターたち。そろそろ新しいキャラクターも見たいところだが…

「このキャラクターたちも3~4年くらいたったね。新しいキャラクター描きたいな。変なキャラクターつくりたい(笑)」

ここまでタムくんの話を聞くと穏やかな感じがするが、実は彼なりのマンガや音楽に対する葛藤のようなものがあるのだ。

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「最近、他の人のマンガは全然みてない。音楽もあまり聴かなくなったんだよね~。聴いてもなんか…勉強になっちゃうから聴かない。マンガもみたら勉強みたいになっちゃって。“この人の絵すごいねー”とか“この人は何を考えているんだろう”とかって考えちゃう。そうなると自分がつまんなくなっちゃうんだよね」

(写真右)「I hear your heart beat」(c) Wisut Ponnimit / KIDO Press 2008

昔と今では、彼の周りの状況はかなり変化したことだろう。

「昔みたいに、リラックスして描く感じはもうなくなっているんですよね。いつも締切りがあるから。できれば、描きたいときに描くようにしたいですね」と、プロフェッショナルならではの悩みがありつつも、「いいことを考えたらいい。そうすれば、いろいろよくなるんだっていう。最近わかってきた」と、ポジティブな気持ちを持っている。その気持ちは、もしかしたら今回の作品に投影されているのかもしれない。

密かに人気のあるキャラクター「したくん」には、実は耳がなかった(描き忘れたから・笑)とか、バンコクでは仕事が忙しいけど毎日遊んでいるとか、なんだか友達と世間話をしているような感覚でリラックスしてしまいました。これはタムくんならではの空気でしょうか。。。最後に日本のファンに対して、「僕がタイに帰っても、いっつも見てくれていて大感謝です。ほんとにカンドーしてます。これからもいいものつくりたいです」とのメッセージ。次は、5月の『タイ式★シネマパラダイス』でタムくんに会いにいきましょう。

(取材・文:牧智美)

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ウィスット・ポンニミットPROFILE

1976年生まれ。マンガ家・アニメーション作家・ミュージシャン。 1998年マンガ家デビュー。2003年10月、神戸に語学留学の目的で日本在住スタート。マンガ、ライブ、アートの3つを軸に活動し、月刊「IKKI」(小学館)などの漫画誌他、web1コマ漫画(コロムビアMEウェブサイト)を連載。2005年横浜トリエンナーレの参加、graf(大阪)での展示会を開催。2006年6月タイへ帰国するまでに、マンガ単行本、DVD、展覧会、ライブなどの活動数知れず。現在バンコクに在住し、マンガ、アニメーションの制作や展覧会、音楽ライブ活動を行っている。主な作品に単行本「everybodyeverything」(マガジン・ファイブ)、単行本「タムくんとイープン」(新潮社)、DVD「hesheit」(UPLINK)、DVD「タムくんアニメ グリーン」(UPLINK)、「細野晴臣トリビュートアルバム」のジャケットイラスト等多数。今後日本では、5月「タイ式★シネマパラダイス」にてアニメーション上映&ライブ、7月下旬に大阪graf media gmにて展覧会を開催。

★タムくん「アジアクロスロード」に生出演します!
放送日:4月11日(金) 16:40~17:57
放送局:NHK-BS1
アジアクロスロード 公式サイト

ウィスット・ポンニミット 公式サイト
webマンガ



『ウィスット・ポンニミット』新作版画展

4月5日(土)~5月8日(木)
時間:12:00~19:00(日・祝・月曜は休)
会場:KIDO Press ビューイングルーム[地図を表示]
(東京都江東区清澄1-3-2-6F/地下鉄半蔵門線「清澄白河」駅A3出口より徒歩約10分)

KIDO Pressで制作するのは今回で2回目。淡い色をふんだんに使ったカラーリトグラフによるオリジナル新作版画12点とドローイングを展示、販売している。

KIDO Press 公式サイト


ティーザーチラシ画像

『タイ式シネマ★パラダイス』

タムくんも参加!世界が注目するタイ映画を一挙上映!

5 月31 日(土)~7 月11 日(金)
会場:シネマート六本木[地図を表示]
(東京都港区六本木3-8-15/地下鉄六本木駅3番・5番出口より徒歩約2分)

【上映作品】
『キング・ナレスワン 序章~アユタヤの若き英雄誕生~』『キング・ナレスワン~アユタヤの勝利と栄光』『アルティメット・エージェント』『ヌーヒン バンコクへ行く』『ミー・マイセルフ 私の彼の秘密』『セルラー・シンドローム』『メモリー ~君といた場所~』

【特別上映作品】
★ウィスット・ポンニミット短編アニメ集上映+音楽ライブ(5月30日、31日/タムくん来日)
★タイの鬼才アピチャッポン・ウィーラセタクン監督特集
『真昼の不思議な物体』『ブリスフリー・ユアーズ』『アイアン・プッシーの大冒険』『トロピカル・マラディ』の長編4 作品+短編「Worldly Desires」
★ドキュメンタリー『デック 子供たちは海をみる』チャリティ上映

配給・宣伝:株式会社エスピーオー
タイ式シネマ★パラダイス 公式サイト


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