骰子の眼

art

東京都 品川区

2010-08-27 01:00


BLANK MUSEUM開催中!ケネス・アンガー、灰野敬二、ジム・オルークが織りなしたLUCIFER NIGHTレポート

休館中の原美術館を舞台にしたクロスカルチャー・イベント、8/29まで多彩なアーティストを迎え開催
BLANK MUSEUM開催中!ケネス・アンガー、灰野敬二、ジム・オルークが織りなしたLUCIFER NIGHTレポート
LUCIFER NIGHTに出演した灰野敬二(右)とジム・オルーク(左)

8月26日から29日までの4日間、東京都品川区の原美術館で行われるイベント『BLANK MUSEUM』が開幕、本日26日は映画作家ケネス・アンガーの作品上映、そして灰野敬二とジム・オルークによるライブ・パフォーマンスが行われた。

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入り口では大石麻央による動物マスクの人体彫刻が迎えてくれる

原美術館の休館日だからこそ、からっぽの空間を味わってほしいというコンセプトで企画されたこのイベント。開演まではイサムノグチや宮島達男、奈良美智といったアーティストによる常設展示を楽しむ時間として設定されており、残暑のなかの清涼剤のような〈何もない空間を楽しむ〉という時間をそれぞれに楽しもうという観客が、開場時より多数訪れた。
会期中は大石麻央による動物マスクの人体彫刻が入り口や館内、そして庭に設置されており、その人間とぬいぐるみの中間に位置するような彫刻に、観る者はほのぼのとした感覚を覚えるのと同時に、人と人との距離感とはなんなのかという実存的な疑問を受け取ることになる。
その後、館内のギャラリーそしてホール計5つのスペースを使って映画作家、ケネス・アンガーの上映が行われた。いまなお強い影響をクリエイターそしてアーティストたちに与えるアンダーグラウンド映画の巨匠による強烈な映像世界を一挙に堪能できる、映像作品の回顧展とあってギャラリーに入りきれないほどの参加者は食い入るように映像に見入っていた。60年代の伝説的作品『スコピオ・ライジング』と2000年代に入ってからの短編『マン・ウィー・ウォント・ハング』が同じギャラリーでプログラムされていたように、彼の作風である新旧の呪術的な世界を同時に観ることで、あらためてケネス・アンガーという作家の異様なまでの存在感を感じることのできる上映会だった。

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ギャラリーIIの様子
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ホールでは『ラビッツ・ムーン』『ルシファー・ライジング』が上映された

仲西祐介によるライティングが暮れゆく原美術館を紫と青に染めていくなか、灰野敬二とジム・オルークがステージとなるカフェに登場。庭の芝生に座ったオーディエンスを前に、ライブがスタートした。灰野はハーディ・ガーディ、そしてジムはライブでは初となるガット・ギターを用いてのパフォーマンス。灰野の奏でる民族的と言えそうな音色とドローンに、ジムはギターをスティックで叩き打楽器的に鳴らしたり、バイオリンのように弓で弾いたり、さらにそこにブルースハープを重ねていくなど、絶妙なポイントで灰野の声と音に反応していく。灰野のプリミティブとさえ形容できる音にジムが現代的なセンスとコード感で切り込んでいくアンサンブルは、極めて緊張感に溢れている。

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照明家として数々の映画や舞台を手がける仲西祐介が4日間の照明を担当するのもBLANK MUSEUMの見どころのひとつだ

とっぷりと暮れた原美術館に鳴り響く虫の声と、ふたりのつま弾く音がミックスされ、寂寞と甘美な感覚の双方が互いに押し寄せてくる。ライブ後半のクライマックスでは、スタート前と同じくミラーボールが再びゆっくりとまわり、カタルシスを高めていく。永遠とも思えるドローンの後、気がつくと演奏は終了していた。たっぷり1時間のパフォーマンス、サングラス越しにさえ満足げな表情を感じさせる灰野は、ジムとがっちり握手を交わし、ステージを後にした。
ケネス・アンガーと灰野そしてジムのアートに対する真摯かつフェティッシュな指向が一致し、奇跡的な美しさを放ってBLANK MUSEUMの第一目は終了した。

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灰野敬二
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ジム・オルーク

それにしても、今日の夕暮れに原美術館に出現したあの光景──ケネス・アンガーの映画の上映が終わると三々五々庭に集まり、芝生に座って、自然とアーティストの美しいアンサンブルに思い思いに耳を傾ける姿──は、クロスカルチュラルなBLANK MUSEUMのコンセプトが象徴されたシーンだったと言えるだろう。
BLANK MUSEUMは29日(日)まで開催。デレク・ジャーマンの『BLUE』をテーマに渋谷慶一郎そして相対性理論のやくしまるえつこが出演する『BLUE NIGHT』は当日券の発売が朝11時に発表されるほか、28日(土)と29日(日)に羊をナビゲーターに多彩なアーティストによるパフォーマンスやライブがひとつのタイムラインの上で繰り広げられる『LOOKING FOR THE SHEEP』は当日券の発売が決定している。〈ここでしかできない体験〉を能動的に求め楽しみたい人ならば、きっと満足してもらえるイベントであることは間違いない。

(文:駒井憲嗣 撮影:山川哲矢)

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BLANK MUSEUM予告編 /全日程VJとして中庭に面したスタジオで、中継映像をその場でミックスしプロジェクターからシューティングする、三代川達(ワタナベカズキ、シラヤナギタク)が編集。

『BLANK MUSEUM』原美術館

【前売券の販売について】
前売券のアップリンク店頭での販売は各イベント前日の22:00まで販売しております。
イープラスでの前売券の販売はそれぞれの日程の前々日の18:00までです。
またBLANK MUSEUM開催中の原美術館では翌日以降の前売券を販売しております。
8/27(金)BLUE NIGHT ※イープラスでの販売を終了いたしました
8/28(土)LOOKING FOR THE SHEEP day1 ※イープラスでの販売を終了いたしました。
8/29(日)LOOKING FOR THE SHEEP day2=8/27(金)18:00まで販売中です。

【当日券の販売について】
雨天・晴天に関わらず28(土)、29(日)は13:00より販売いたします。
27(金)BLUE NIGHTは晴天の場合のみ、15:00より若干数を販売いたします。当日11時にtwitterにて発売の有無を告知いたします。

詳しくはhttp://www.webdice.jp/blankmuseum/まで

●2010.8.27(金)『BLUE NIGHT』

Screening:デレク・ジャーマン『BLUE』
16:30開場/17:30上映開始
Installation
ライティング・インスタレーション:仲西祐介
出演:渋谷慶一郎、やくしまるえつこ(特別出演)
18:45開始/20:00終了
料金:前売2,800円/当日3,300円

●2010.8.28(土) “LOOKING FOR THE SHEEP day1”

Performance:飴屋法水たち、東野祥子、ホナガヨウコ企画
LIVE:伊東篤宏+山川冬樹、勝井祐二(音楽)+迫田悠(映像)、日比谷カタン、山本精一+JOJO広重 (ゲスト:穂高亜希子)
Navigator:のぎすみこ(ひつじのさんぽ)、大石麻央(動物マスクの人体彫刻)
VJ:BLANK MUSEUMスタジオ:三代川達(ワタナベカズキ、シラヤナギタク)
14:00開場/15:00開演/20:00終演
料金:前売5,500円/当日6,000円

●2010.8.29(日)“LOOKING FOR THE SHEEP day2”

Performance:飴屋法水たち、東野祥子、ホナガヨウコ企画
LIVE:エミ・マイヤー feat.Shing02、種子田郷+さとうじゅんこ、テニスコーツ、マイア・バルー
Navigator:のぎすみこ(ひつじのさんぽ)、大石麻央(動物マスクの人体彫刻)
Overture:JON(犬)
VJ:BLANK MUSEUMスタジオ:三代川達(ワタナベカズキ、シラヤナギタク)
14:00開場/15:00開演/20:00終演
料金:前売5,500円/当日6,000円


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