骰子の眼

art

東京都 品川区

2010-08-28 02:25


夏の終わりフェスBLANK MUSEUM BLUE NIGHTレポート、原美術館がブルー一色に染まった夜

8/28、29ともに当日券も販売、何もない美術館を行き来して楽しむクロスカルチャー・イベント開催中
夏の終わりフェスBLANK MUSEUM BLUE NIGHTレポート、原美術館がブルー一色に染まった夜
仲西祐介による窓の外から差し込まれる青い光により、原美術館の館内は幻想的な雰囲気に包まれた。

東京都品川区の原美術館で開催中のクロスカルチャー・イベント『BLANK MUSEUM』の2日目となる『BLUE NIGHT』が行われ、デレク・ジャーマン『BLUE』の上映と、渋谷慶一郎と相対性理論のやくしまるえつこが出演しインスタレーションを披露した。
午後4時半開場というゆったりとした時間取りで行われたこの日、前売がほぼソールドアウトという人気を博しながら、平日ということもあり、庭に面したカフェの椅子席はドリンクを手に暑さをしのごうとする観客で少しずつ埋まっていく。

映画の上映までは、1Fの階段付近では大石麻央(動物マスクの人体彫刻)が自らの作品を被り出演。昨日行われたLUCIFER NIGHTのピリッとした緊張感と変わり、今日の館内はリラックスしてくつろげるムードに満ちている。従来のフェスティバルにはない自由度を目指すBLANK MUSEUMの多元性がこんなところにも見える。

上映開始の時間となり、館内のすべてのギャラリーで、デレク・ジャーマンがエイズの闘病を続けながら、最初から最後までを青一色で描いた『BLUE』が日本語字幕付きで上映。彼の遺作であり、病気に伴う肉体的/精神的な信じがたい痛み、宗教観、人間の意識、青という色にある神話性など様々なイメージを綴っていく。数百もの観衆がただブルーの画面を見ていることから生まれる不思議な共有感は、自宅でDVDで鑑賞する行為では決して味わえない。知覚の扉が開かれるこの体験により、決して感傷ではなく、この映画にある〈生きることの喜び〉というシンプルで力強いメッセージをまごうことなく感じることができる。

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デレク・ジャーマンの『BLUE』を日本語字幕付きで上映。

続いて、各ギャラリーで照明家・仲西祐介によるライティング・インスタレーションが行われる。ギャラリーIIの『BLUE SCREEN』では、スモークがたかれたギャラリー内のそこここに角度をつけた鏡が置かれ、青い光が投影されることにより、直前まで青い映像が映されていた壁に見ている人たちの影が次々と映される、部屋ごとのコンセプトに基づいた照明によるBLUEのバリエーションは、まさに体験するインスタレーションと言えるもので、他にも『BLUE WIND』『BLUE WALL』『BLUE SHADOW』と、デレク・ジャーマンが青に込めた精神を新たなかたちで表現していた。


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ギャラリーIIで展開された『BLUE SCREEN』。

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ギャラリーIVの『BLUE WALL』。何の変哲もない壁を窓から覗くとそこには……?

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明滅する光により観客のシルエットが青く壁に映し出されるギャラリーVの『BLUE SHADOW』。


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揺れる水面が淡くサイケデリックな文様を有むギャラリーIIIの『BLUE WIND』。

一方、中庭のほうでは美術館の壁面に『BLUE』の映像が映されるインスタレーションがスタート。白い原美術館の外観が青く染められ、そこに『BLUE』のサウンドトラックが流れるという趣向だ。すべての欲や執着がほどけていくかのような気分で青のなかに浸っていると、ほどなくして渋谷慶一郎が登場し、緑豊かな中庭に置かれたスタンウェイのグランドピアノによりデレク・ジャーマンの『BLUE』に新しい息吹を与える。

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初日に続き庭の中央に鎮座するミラーボールが夕暮れを彩る。

様々な音や言葉が連なるサウンドトラックと重なるように、彼は音の〈気配〉を青い色で敷き詰められた館内に丁寧に生み出していく。そこに、この夜の特別出演であるやくしまるえつこが加わり、『BLUE』の台詞の日本語訳のリーディングをため息の出るようなタイミングで加えていく。それは決して激しくはないけれど、『BLUE』という作品自体が持つのと同様の、古い慣習を打破せんとする静かな力を感じてやまなかった。

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暗闇に青く浮かび上がる原美術館の中庭。

サウンドトラックとのめくるめくコラボレーションのあと、ふたりは相対性理論+渋谷慶一郎『アワーミュージック』に収録の「BLUE」を演奏。やくしまるの「おやすみなさい」という言葉とともに、BLUE NIGHTは終了した。これからの日本の音楽シーンを担うふたりのクリエイターが『BLUE』という共通項で繋がれ、この作品にある終末感ではなく、生命力に転化させることには大きな意味があり、この作品の精神をこれからの若い世代に伝えていくきっかけになったことは言うまでもない。

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原美術館そのものがインスタレーション作品となった夜。

終演後の会場にはマドンナ「ライク・ア・ヴァージン」など、この作品の制作当時である80年代ゲイカルチャーのブライトサイドとも言える楽曲が流れ、『BLUE』という作品の普遍的な魅力を逆説的に浮き彫りにしていた。その最後のBGMも含めて、『BLUE NIGHT』は鬱屈した世情を吹き飛ばす、極めて開放感に溢れた一夜だった。
BLANK MUSEUMは残すところあと2日。28日(土)、29日(日)は羊が先導役になり注目のパフォーマーそしてミュージシャンが多数出演する『LOOKING FOR THE SHEEP』だ。

(文:駒井憲嗣 撮影:山川哲矢)

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BLANK MUSEUM予告編 /全日程VJとして中庭に面したスタジオで、中継映像をその場でミックスしプロジェクターからシューティングする、三代川達(ワタナベカズキ、シラヤナギタク)が編集。

『BLANK MUSEUM』原美術館

【前売券の販売について】
アップリンク店頭では29日(日)の前売券を28日(土)22:00まで販売しております。
イープラスでの前売券の販売は全日終了いたしました。
またBLANK MUSEUM開催中の原美術館でも29日(日)の前売券を販売しております。

【当日券の販売について】
28、29日ともに13:00より販売いたします。

詳しくはhttp://www.webdice.jp/blankmuseum/まで

●2010.8.28(土) “LOOKING FOR THE SHEEP day1”

Performance:飴屋法水たち、東野祥子、ホナガヨウコ企画
LIVE:伊東篤宏+山川冬樹、勝井祐二(音楽)+迫田悠(映像)、日比谷カタン、山本精一+JOJO広重 (ゲスト:穂高亜希子)
Navigator:のぎすみこ(ひつじのさんぽ)、大石麻央(動物マスクの人体彫刻)
VJ:BLANK MUSEUMスタジオ:三代川達(ワタナベカズキ、シラヤナギタク)
14:00開場/15:00開演/20:00終演
料金:前売5,500円/当日6,000円

●2010.8.29(日)“LOOKING FOR THE SHEEP day2”

Performance:飴屋法水たち、東野祥子、ホナガヨウコ企画
LIVE:エミ・マイヤー feat.Shing02、種子田郷+さとうじゅんこ、テニスコーツ、マイア・バルー
Navigator:のぎすみこ(ひつじのさんぽ)、大石麻央(動物マスクの人体彫刻)
Overture:JON(犬)
VJ:BLANK MUSEUMスタジオ:三代川達(ワタナベカズキ、シラヤナギタク)
14:00開場/15:00開演/20:00終演
料金:前売5,500円/当日6,000円


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