骰子の眼

music

東京都 渋谷区

2011-03-12 02:20


気鋭のバンドLampが音楽への思いのたけを闊達に発信した一夜─UPLINK FACTORY鼎談試聴會レポート

ブラジル/ラテン音楽のグルーブを咀嚼した新作『東京ユウトピア通信』を語る。
気鋭のバンドLampが音楽への思いのたけを闊達に発信した一夜─UPLINK FACTORY鼎談試聴會レポート
渋谷アップリンク・ファクトリーで鼎談試聴會&ミニライブを行ったLamp。左より永井祐介、染谷大陽、榊原香保里。

60年代から70年代にかけてのポップスやロック、そしてブラジル音楽など多彩な音楽性を駆使し、美しいメロディとハーモニーにより抒情的な世界を構築しているバンドLampのニューアルバム発売を記念して、渋谷アップリンク・ファクトリーで【Lamp『東京ユウトピア通信』発売記念 鼎談試聴會&ミニライブ】が開催された。当日はメンバーの染谷大陽、榊原香保里、永井祐介を迎え、アルバムのコンセプトや音楽に対する3人の全曲解説とともに新作を試聴。イベントの最後には「最近はハーパース・ビザールとかソフトロックや正統派と呼ばれるポップスも一巡してすごい新鮮に聴こえるんです」(永井)というエピソードとリンクする選曲、クロディーヌ・ロンジェ「Who Needs You」を含むアコースティック・ライブも披露された。染谷と永井というふたりのタイプの異なるソングライターを擁し、妥協のない曲作りとプロダクションを作り上げ高い評価を得る彼らが、より開放的なグルーヴ感を追求したニューアルバム、そして創作方法について自ら語るイベントとなった。

昔聴いていたロックっぽさが自然に出てきた(染谷)

染谷大陽(以下、染谷):Lampの活動としては2005年に『木洩陽通りにて』、2007年に未発表音源集『残光』をリリースしましたが、その間に『ランプ幻想』(2008年)と今回の『東京ユウトピア通信』のアイデアがすでに僕のなかにありました。『ランプ幻想』に収録した曲よりもずっと前にあって、こういうアルバムをいつかリリースする予定で、『ランプ幻想』『八月の詩情』(2010年)もその過程で作っていきました。なので、2006年からずっとこの作品にむかって気持ちが続いているんです。

1.「空想夜間飛行」

染谷:この曲は左チャンネルと右チャンネルで2本ドラムが入っているのですが、これはアルデマーロ・ロメロというベネズエラのアーティストを聴いていいなと思って自分たちでも試してみました。
ブラジル音楽は、もともとハーモニーに惹かれて聴き始めたんですけれど、フォークソングだとドミソの三和音が多かったりするけれど、ブラジルの音楽はドミソシとか4和音で構成されている。その複雑でなおかつ美しいところに惹かれていて、聴いているうちにだんだんリズムにも虜になってきたんです。この『東京ユウトピア通信』ではそういうところが解りやすく出ていると思います。

2.「君が泣くなら」

榊原香保里(以下、榊原):最後のほうがプログレッシブな展開になるんですが、リズムアレンジも1番と2番でAメロのドラムの感じを変えたり、Bメロ部分のハイハットとか、曲の構成が面白いので、飽きずに聴いていただけると思います。

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『東京ユウトピア通信』より、画:鈴木翁二

3.「冷ややかな情景」

永井祐介(以下、永井):ライブが元にあって後からレコーディングするというのは僕らとしては珍しいパターン。今までとグルーブ感がぜんぜん違っていると思うし、そこが良くでているなぁと思いました。

4.「遠い旅路」

染谷:永井とのギターソロの掛け合いで、チョーキングのとき気持ちが昂ぶりすぎて、元の音から外れたところにいっちゃって(笑)。僕の親はロックやっててジミヘンが好きだったので、そういうところから僕も音楽をはじめたんですけれど、永井や香保里さんと会って、このふたりの持っているもののなかで自分を出したいというのがなんとなくスタート地点としてあって。自分がやるのはロックじゃないなと思ってはじめていったのですが、最近は昔聴いてきたものや、やってきたものがちょっとずつ(自分の音楽にも)出てきているかなと、ときどき考えます。

ラブソングでも曖昧なところを表現したい(染谷)

5.「君とぼくとのさよならに」

染谷:アルバム・タイトルに東京と入っているのは、あまり東京というものへの直接的な意味というのはないんです。曖昧さみたいなものはLampでは歌詞についても、なんについてもあるよね。それは自分たちのなかでは、意識的に曖昧にしようというのではなく、結局そうなってしまう。どの曲もラブソングなんですけれど、実際にあったことではなくて、どちらかというとそうした曖昧な部分を表現したいんです。

榊原:Lampの歌詞は、悲しい感じをベースに、季節を感じる要素が多く入っています。例えば、「古池や蛙飛び込む水の音」って日本語が解らない外国の人が聞いたら、ただそれだけの、ものすごく単純なものに聞こえると思うんですけれど、でも日本人ってその季節が解るし、言葉以上のものを感じられますよね。歌詞の向こうにあるもの、というほど大げさなことではないですけれども、きっとそういうのがいいと思ってくれる人がいるんじゃないかと思っています。

6.「心の窓辺に赤い花を飾って」

永井:トッド・ラングレンが好きなので、ほとんどの楽器をひとりで演奏して、ああいう雰囲気が、なんとかかたちになって、すごく気に入っているんです。

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『東京ユウトピア通信』より、画:鈴木翁二

7.「ムード・ロマンティカ」

榊原:こちらのサンバ・バージョンのアイデアがもともとあって、『残光』に入っている「ムードロマンティカNo2」は、これからアレンジしていきました。

染谷:それから、今回のインタールードのイメージはミルトン・ナシメントとロー・ボルジェスの共作アルバム『クルビ・ダ・エスキーナ』(1972)に「Cais」と「Um Gosto De Sol」という曲があって、同じテーマを2回違うアレンジでやっているんです。それを自分たちのアルバムでやってみたかった。

8.「恋人と雨雲」

染谷:60年代から70年代の音楽がすごい好きだから、アルバムというものになんの抵抗もないんですけれど、この時代にアルバムってどんな意味があるんだろうということは僕らも感じていて。曲ごとにその曲をいかによくするかということだけを考えているんだけれど、60年代にコンセプトアルバムと呼ばれていたものも、実はほんとうにコンセプチュアルに作ってあるものってすごく少ないと思うんです。今回の新作は、最終的にジャケットも含めて自分たちでしかないからひとつのものにまとまっていると思います。

(文:駒井憲嗣)

▼Lamp「空想夜間飛行」PV





■Lamp プロフィール

染谷大陽(ギター)、永井祐介(ボーカル、ベース他)、榊原香保里(ボーカル、アコーディオン、フルート)により2000年結成。2003年『そよ風アパートメント201』でデビュー。ボサノヴァやAOR、日本のシティポップなどに通じる美しく洗練されたハーモニーとメロディラインと卓越したアレンジメントのセンスにより高い評価を得る。これまでに5枚のアルバムをリリース、2011年2月にニューアルバム『東京ユウトピア通信』をリリースした。
公式HP




■リリース情報

Lamp『東京ユウトピア通信』

発売中
UVCA-3005
2,500円(税込)
ポリスター

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■ライブ情報

2011年3月26日(土)名古屋得三
開場18:00/開演19:00
出演:Lamp、Daniel Kwon、ツクモク
前売3,000円/当日3,500円(ともにドリンク別)


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