骰子の眼

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2011-06-02 11:35


裕木奈江のレイキャヴィク・フィルム・メイキング・ジャーニー:最終回

初日舞台挨拶有!6/4(土)より『レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー』公開。
裕木奈江のレイキャヴィク・フィルム・メイキング・ジャーニー:最終回
Screamfestで再会。イングヴァール氏は相変わらずのゾルバで、ジュリアス監督は女性的で優しい顔立ち。肌の色、骨格、並んでみてよくわかる人種の違い。

女優・裕木奈江さんが写真と文章で届ける、アイスランドはレイキャヴィクでの映画制作の裏側。連載最終回は、6月4日よりいよいよ日本でも公開となる『レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー』撮影の後日譚、そして世界で活躍するアクトレスとして、裕木さんのいまの心情を綴ってもらいました。

撮影終了!

『レイキャヴィク~』のクランクアップは、撮影が終わった俳優がひとりひとり現場から抜けていく、という感じだった。私が何人目だったのかもう覚えていないけれど、「じゃあまたね」と、まずもう会う機会の無い「またね」を言ってアイスランドから去った。
それにしてもみんなとてもよい人たちだった。ぽつんと一人働きにきたアジアの女優を、めんどうがらずにケアしてくださった。

撮影中、待ち時間に地元の役者さんとのやりとりで、「あそこの島見える?」「見えるよ」「あそこはヨーロッパなんだよ」というとみんな笑っている。「あーそうなんだ?」って言うと「Nae、それは違うよ、ここは笑うところなんだよ。だってアイスランドもヨーロッパなんだけど、ヨーロッパの人はみんなアイスランドをヨーロッパとして扱ってくれないっていうジョークなんだよ」と。こういう自虐ジョークはヨーロッパでもアメリカでもよく耳にするけれど、日本人の私には、わかりにくい。そんな要領を得ない私をディナーに招待してくださった地元の女優のHnnaさん、娘さんと一緒に郊外を案内してくださったDidiさん、急なスケジュール変更を手伝ったくれたBirnaさん、本当にありがとうございました。おかげさまで、良い滞在になりました!

そして月日は流れ、その後アイスランドではいろいろ起こった。起こってしまった。2008年の終わりには経済危機に陥り「今僕たちはトイレットペーパーのかわりにお札を使っているんだよ」とプロデューサーの一人が暴落した自国通貨を皮肉り、デモに参加した人は「みんな集まるんだけど、とにかく寒いんだ」と言っていた。それはそうだろう、北欧より更に北の島国の、日光の射さない冬なのだから。それなりの暴動も起こったけれど、もともと警官ですら銃を装備していないような国なので、やがてそれなりに静まってしまったそう。
メールで送られてきたデモの画像には、たき火を囲む人々が写っていた……。

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結構好きだった初期RWWMのポスター。センスいい。でもこの手は誰だろう。

Screamfestでの再会

2009年にはアフレコ(音声の収録)の依頼がありイギリスへ。監督不在でのレコーディングだったのでやりずらかった。監督と再会したのはハリウッドのチャイニーズシアターで行われたホラー映画の映画祭Screamfest。プロデューサーのイングヴァールも来ていた。このシアターは出演作がかかって欲しいLAの3つのシアターのうちの一つ。嬉しかった。因にもう一つは『インランド・エンパイア』と『硫黄島からの手紙』がかかったArklight Hollywood。最後の一つは何時もセレクションのツボがいい感じのVista Theatre。
イーストウッド監督の作品では『グラン・トリノ』はかかったけれど、『硫黄島からの手紙』は残念ながらかからなかった。ここの館長さんはよく上映中の映画にちなんだコスプレをして入り口でモギリをしてくれるので、それを観るのも愉しみの一つ。

そして2010年春、エイヤフィヤトラヨークトル火山が噴火した。火山灰が南側に飛んで行ったせいで、被害はアイスランドよりもヨーロッパでの航空ダイヤに深刻。そんなこんなの騒動がひととおり過ぎ去った頃、UPLINKさんから上映の声がかかる。それは私にとっては意外な展開。アイスランドのホラー映画を、一体どのような観客層が観たいと思うのか…… We'll see.

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劇中かけていた自前の眼鏡。撮影後アメリカに戻り、訪れたサンフランシスコのカフェに忘れ、すぐに取りに戻ったのにもう無かった。黒ぶち眼鏡がそんなに欲しかったのだろうか?流行る前だったのに。

ありがとうございます。でも……裕木奈江はハリウッド女優ではありません。

ところで、ここ数年、取材をしていただくと、上がってきた記事に、裕木奈江と言う芸名と「ハリウッド女優」という言葉が並んでいる。もちろんポジティブなイメージで、よりよく書いてくださったのはわかるし、ありがたい限りです。ですけれどもね、実はこれ、本人的にはけっこう居心地が悪いのです。だって、人が「ハリウッド女優」と目にしたり耳にした時に思うのは言うまでもなく「ハリウッド女優」=「ハリウッドスター」のイメージでしょう?そういう意味ではもちろん私は「ハリウッド女優」などではないですからね。それはニコール・キッドマンやアンジェリーナ・ジョリーのような、1作品で数十億のギャラを稼ぐ、そのために先鋭のスタッフと弁護士がチームを組んでいて、作品の中だけでなく、日常から何を着て、何を言うかを統制しているスターに当てた呼称だと思われるのですよ。

一方私はといえば、何を血迷ったか35にもなってからうまくも得意でもない英語を使いだし、蛾が自然と灯りに少しでも寄るように明るいほうへと向かっただけなのです。なのでこれからも恐らくそう華々しくもなく、しかし前向きに不可思議な活動を続けて行く予定でおりますので、宜しくお引き立てのほどを、、、。

連載、読んでくださってありがとうございました。劇場でお会いしましょう:)
奈江 拝

(写真・文:裕木奈江)

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■裕木奈江 Flickrページ

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『レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー』
6月4日(土)より銀座シネパトス新宿K's cinemaほか全国順次公開

初日舞台挨拶決定!

裕木奈江さん、そして緊急来日したプロデューサーのイングヴァール・ソルダソン、監督のジュリアス・ケンプが登壇いたします。
会場では裕木奈江さんのサイン付きパンフレットを各劇場100部限定で販売いたします。
銀座シネパトス
11:30の回上映後 13:30の回上映前 登壇
新宿K's cinema
20:00の回上映前 登壇

監督:ジュリアス・ケンプ
脚本:シオン・シガードソン(『ダンサー・イン・ザ・ダーク』サウンドトラック作詞家)
プロデューサー:イングヴァール・ソルダソン、ジュリアス・ケンプ
音楽:ヒルマー・ウーン・ヒルマソン
出演:ピーラ・ヴィターラ、裕木奈江、テレンス・アンダーソン、ミランダ・ヘネシー、ガンナー・ハンセン、他
2009年/アイスランド/90分/英語
配給:アップリンク
公式HP
公式twitter

▼『レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー』予告編



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