骰子の眼

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東京都 ------

2011-08-04 15:10


「僕は古臭いと感じるぐらいでいい」ニコ動から大胆にJ-POP回帰を宣言するプロデューサーdorikoとシンガー花たん

彼らやニコファーレを皮切りに、ニコニコ動画発信による90年代リバイバルがいよいよ本格的に始動か。
「僕は古臭いと感じるぐらいでいい」ニコ動から大胆にJ-POP回帰を宣言するプロデューサーdorikoとシンガー花たん

しのぎを削るニコニコ動画で活動する女性ボーカリストのなかでも、その豊かな表現力でひときわ高い人気を誇る花たんがメジャーからアルバムをリリース。『Flower Drops』は同じくニコニコ動画でヒット・プロデューサーとして活動を続けるdorikoが完全プロデュースを手がけた作品で、初音ミクをフィーチャーして320万再生を記録の後、花たんが歌い200万回再生を誇る代表曲「ロミオとシンデレラ」を収録。さらには、dorikoがこれまでニコニコ動画で発表してきた人気楽曲に加え、天野月子、齋藤真也、田村直美という豪華作家陣が描き下し楽曲を提供することで、完成度の高いアルバムに仕上がっている。ニコ動を飛び出し、ボーカリスト、プロデューサーとしてさらなる躍進が期待される二人の話を聞いた。

ゲストの作家さんには悔しいなと思いながらすごく刺激を受けた

──今回のアルバム『Flower Drops』はどんな思いで作ったんですか?

doriko:最初から言っていたのは、ニコニコ動画を聴いている人以外にもこんな曲聴いてもらえたら、という気持ちだったんです。

花たん:第一には、いつもニコニコで聴いてくれている人へのお礼としての気持ちもあるし、メジャーとして出すというと、ニコニコを見ていない人も聴いてくれる機会もでてくると思うので、いい曲、いい歌だと思ってもらえるようなアルバムを目指しました。

──花たんさんがこれまで影響を受けたり、憧れて女性シンガーについても、アルバム単位で好きなアーティストが多いですか。

花たん:高校の時から、一番影響を受けているのは浜崎あゆみさんなんですが、あの方も曲によって感情が豊かな歌い方ですよね。バラードも明るい曲もロックも入っている、自分もこういうアルバムを作れたらと思っていたんです。だから今回も、自分が歌い慣れているジャンルだけじゃなくて、いろんな人が買った人ごとにこの曲のジャンルいいなと、思ってもらえるアルバムが作りたかったんです。

doriko:アルバムは、もともとボーカロイドでニコニコ動画用に上げている曲を、花たんに歌ってもらった曲も入れつつ、新しい曲も入れました。さらに、天野月子、齋藤真也、田村直美という3人の作家の方に、僕と違う曲ができるんじゃないかと曲を依頼しました。プロデュースに関しては、なるべく全部自分でやりたいと思う面もあることはあるんですけれど、今回は、そもそもアルバムを作ろうという話になったのが、花たんと一緒になにかやれたらいいというのが発端で、俺がぜんぶプロデュースして歌ってもらうというのではなく、ふたりで相談しながら作っていければいいなという話があったので。ゲストを入れたいというのは彼女の意見でしたが、僕も好きな作家さんなので、悔しいなと思いながら(笑)すごく刺激を受けました。どっちが主導という感じではありませんでしたよ。

花たん:そうですね、dorikoさんと私で一緒に作ったアルバムですね。

──でも、これまでdorikoさんがボーカロイドを使って作っていた曲というのは、架空のシンガーをイメージしていたんですよね。

doriko:僕がボーカロイドの曲を作るとき、特別誰かが歌うことを前提にして作っているわけではないんです。特にこんな人が歌ったら合うかなということを考えて曲を作っているわけではないですね。たとえば「ロミオとシンデレラ」という曲が、花たんに歌って、僕らが知り合うきっかけになったんですけれど、それもほんとうに偶然の産物だったんです。

──花たんさんがこの「ロミオとシンデレラ」を自分で歌ってみたいと思ったいちばんの決め手は?

doriko:なんだろう、「モノクロアクト」(同じく初音ミクをフィーチャーしたdorikoによるヒット曲)という動画をだいぶ前にだされていたときから、dorikoさんのサウンドはもともと好きだったんです。なかでも「ロミオとシンデレラ」かわいいんだけれど、バンドサウンドですごいロックな曲ですよね。そのかっこよさのなかの歌詞のせつなさに惹かれて、どう表現したらいいか考えながら、あんまりがなる感じじゃだめだなと思いながら、歌いました。

doriko:僕もこの曲は若干新しい雰囲気を作りたいと発表した曲なんです。ニコ動でいろんな方に歌っていただいたなかで、これすごい!と思ったのが花たんだったんです。個人的には彼女のロックな歌声と声量に惹かれているところがあって、「モノクロアクト」もさらにいいと思いました。

──すると、dorikoさんは花たんのそうしたボーカルのバリエーションをアルバムでより引き出したかった?

doriko:そうですね、ポップな感じから、地声を張り上げる感じからバラードまでいろいろ歌ってもらえました。

花たん:いろんなジャンルを入れたいというコンセプトだったので、J-POP、ロック、バラード、エレクトロニカ、エスニックまで、「こういう曲がいい」とかむちゃぶりしました。

──dorikoさんとしてもサウンド・プロデュースのしがいがあったんじゃないですか。

doriko:ほんとに面白かったんです。たぶん自分ひとりで「じゃあ何か考えてください」と言われてもぜったい考えつかなかったと思う。

90年代のJ-POPを聴いて育った世代としてストレートなJ-POPが好き

──音作りの面では、どんな苦労がありましたか?

doriko:今回新曲は5曲なんですけれど、自分ががっつり最後までアレンジまでやったというのは1曲で、あとは仮編曲までしてアレンジャーさんにバトンタッチしているんです。そこで変わった曲もあるけれど、基本は変わっていない曲もあったり。

花たん:「笹舟」という曲はいちばん変わりました。二胡を使ったり、ミックスでだいぶ音の鳴りが変わりましたね。

doriko:基本的にはアレンジャーさんと話を詰めながら、こんなのにしたいと、作曲のほうでかなりつめていった曲が多いので、大きく変えるというより、ブラッシュアップしてくださいという感じでした。

──今回のアルバムは、90年代の小室哲哉さんのような、サウンドメイキングや作家の起用から歌詞にいたるまで自ら手がけてひとつの世界観を作ろうとするプロデュースワークでできていると感じました。

doriko:もともと、時間が許すのであれば、作詞作曲編曲からなにからなにまでぜんぶ自分でやりたいくらいなんです(笑)。

──ニコ動のときはビジュアルについても音の世界観にマッチした絵をあわせていたわけですしね。

doriko:先ほど小室さんのお話がでましたが、これは花たんと近いかもしれないんですが、僕らは90年代から2000年代前半に流行ったJ-POPを聴いて育った世代なので、ストレートなJ-POPが好きなのですが、最近そういう楽曲はシーンで減ってきている感じはあって。リスナーそれぞれいろんな音が好きでいいと思うんです。でも、こういう音って、古臭いと思う人もいるかもしれないんですけど、僕はそれぐらいでいいと思うんです。

──ヒット曲というものの捉え方も、当時と今では少し違うと思います。

doriko:いろんなリスナーがその曲に投影できる、ヒット曲としてのパワーがありますよね。

──だからいま、王道J-POPがニコ動からいまここに帰ってきたという感覚があります。

doriko:ぜんぶがぜんぶ90年代をやりたいわけではないんですけれど、やっぱりそういう感じは残していきたいという気持ちがあります。もちろん新しい感じの曲をやりたいという気持ちもあるので、バランスをとりながらやっていければいいですね。

(インタビュー・文:駒井憲嗣)



doriko プロフィール

発表されている10曲のVOCALOIDオリジナル楽曲全てがVOCALOID殿堂入りを果たしている実力派P。2007年11月25日、「パソコンが壊れたので買い換えるついでに」買ったという初音ミクで作った「みっくりすます」でプロデューサーデビュー。特に2009年4月6日投稿のバンドテイスト曲「ロミオとシンデレラ」は自身最大のヒット曲となり、「バラードの神の新境地」と評された。
doriko公式サイト
特設サイト

ユリカ/花たん プロフィール

疾走感と力強さ、高音のビブラートが美しく歌唱力に定評がある。「ロミオとシンデレラ 歌ってみた」でブレイク。『スーパーアニメリミックスSUPER BEST』CDに収録、ニコニコ系ライブイベントに多数参加など、ニコニコの歌ってみた新時代を代表する歌い手のひとり。




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